世界ジュニアでは、男子シングルの4回転バトルにエキサイトし、女子シングルにおいては、ザギトワをあと一歩まで追い詰めた日本女子チームに感激しました。

 ただ、女子に関していえば、どうやったらザギトワに勝てるのか?、来季シニアに真凜ちゃんや花織ちゃんが上がったとして、メドベにどこまで肉薄できるのか?、こういう部分がやはり気になります。

 エテリ組と同じように真凜も後半ジャンプとタノをやれ!、いや、3Aが必要だ!、なーんて話もネットでチラホラと目にしました。

 私は、改めて『300点伝説』を手にとってみました。2月頭に一度通読しましたが、この本の中で最も印象的だったのは、現行のジャッジングシステムに対するチーム・ブライアンの具体的な取り組みがはっきり明示されていた、第3章と第4章です。

 ブライアンが真凜ちゃんのコーチだったらどういうアドバイスをするのだろう?と想像しながら、読み直してみました。2月上旬に7本に分けてレビューをアップしましたので、そちらもご参照ください。→(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7

 第4章の中でGOEとPCSをどう上げるか?という対策が詳しく語られていて、そこは記事として取り上げました。ただ、現行の採点ルールが導入された当時(2004年)の話が、第3章(111~114頁)から始まっていて、ここから、ブライアンの考え方を読み解くことができます。以下、私のメモ替わり的な内容で引用が多くなりますが、ご容赦ください。

  ・いまの採点システムは、2004年から導入された"新採点方式"です。それまでの「6.0」満点制ではなく、加点方式になりました。この採点システムが導入された当初は、大勢のコーチや関係者が不平を漏らし、良い採点システムだとは思わないと言いました。でも私はこう考えました。「OK。誰が何と言おうと、これがいまのシステムになったのだ。それなら文句を言う時間を惜しんで研究するしかない。ジャッジは何を望んでいる?ジャッジはどんなセミナーを受けている?フィギュアスケートはいま、どんな方向に行っている?」・・・トップ選手を抱えている私のチームが協力的であれば、彼らも心を開いてくれます。 彼らだって、採点方式が新しくなり苦労しています。新しい採点に慣れるために、自分がジャッジに入っていない試合でも観戦したり、練習を見学したり、仕事が休みの日にビデオを見たりして、勘を養わねばなりません。

 ・いままでになかった「ジャンプの回転不足」や「ルッツとフリップのジャンプの正確さ」、演技構成点の「5つの項目」などを基準に採点するのですから、何に注目すれば正確に採点できるのか、試行錯誤しているのです。だから私はジャッジの力になろうとしました。

 ・「振付(Choreography)」(※現在の名称は「コンポジション(Composition)」)という項目もあります。この項目の解説を見ると、「プログラムの計画の仕方、プログラムのパターン」となっています。これだけでは、ジャッジも選手もコーチも、具体的に何が良い「振付」なのか共通見解を持てません。

 →→ちなみに日本スケ連のHPで「ISU通達」の日本語訳が読めます。「Communication 2014」(2016年6月27日更新)の「コンポジション」を見てみましたが、私にはその項目が何を意図しているのかまったく分かりません。

 ・しかし私はまず新採点方式のルール集をよく読んだうえで、ルールを決定したISUの技術委員から話を聞き、この項目の真意を理解しようとしました。すると滑っていく「方向」が大切だとわかりました。

 ・多くの選手は、ジャンプやスピンの助走が左回りですし、スケート場も左回りが普通ですから、ついつい演技でも左回りの方向が多くなります。左回りのカーブでステップや助走をしたほうが簡単ですし、ジャンプは成功しやすくなります。新しい採点方式を理解していないと、そうやって一方向ばかりのサークルを描きながら滑り、たまに止まって腰を振るなどして演技をし、再び左回りに滑りだします。これを「振付」だと思っているのです。もっとわかっていない選手は、演技中にもかかわらず、スピードスケート選手みたいに両足で直進の滑りをする時があります。あれを見ると、私は気が変になりそうです。「振付」どころか、フィギュアスケートの動きではありません。

  ・本当の「振付」とは、左回り・右回りの複雑な軌道の組み合わせのことです。ターンの方向も、滑る方向も、ステップの方向も、です。さらに、しゃがんだり跳ねたりして上下の空間も使います。こうやって上下左右に複雑なパターンを見出していくのが「振付」です。ですから私の選手が、複雑な軌道を組み合わせたプログラムを演じると、ジャッジが「ああ、これが振付だ」とわかり、高得点をつけるのです。

 ・ですから、4回転ルッツを見たたけで焦りはしません。この採点システムのなかで勝つためには、ジャンプだけに注目するのではなく、スケーティングの基礎、振付、ステップやターン、スピンのことを考えます。他のどんなチームもやっていない練習を、私たちは毎日繰り返してきたのです。もしかしたら他のチームの選手は今後、(ボーヤン・)ジンを見て焦り、4回転ルッツやフリップといった高得点の4回転ジャンプを新たに練習するかもしれません。しかし私たちにはその必要はないのです。むしろ、他の選手もコーチも、もっとこの採点方式を理解することが重要ではないかと思うぐらいです。

 →→「コンポジション」=「スケーティングの方向」という説明なんて、私はこの本を読むまで見たことも聞いたこともありませんでした。ただ、なぜISUの通達が曖昧な表現に留めているかを考えてみると、記述が具体的だと、各選手のスケーティングの軌道が同じものばかりになってしまうからでしょうね。だからブライアンは、直接関係者にヒアリングして、演技を見てもらうアプローチを取ったのでしょう。

 つぎに第4章の中でも、以前の記事では触れなかった部分を紹介したいと思います(170~173頁)。

 ・多くの若者が、ジャンプの成功の可否ばかり気にして、それで自己最高得点が出たとか出ないとか言っています。しかし自分の最高得点を伸ばしていこうと考えるなら、気にするべきはPCSです。これこそ、そのプログラムの評価そのものであり、スケーターの実力を反映する数字だからです。

 →→いやいや、若者だけじゃありません。日本ではテレビに出ているおじさんもおばさんもジャンプの話ばかりしてますね。

 ・正しい方向性でPCSにつながる演技をしている選手は少ないな、と感じています。よくある誤解は「演技力を磨いて、PCSを上げよう」と考え、陸上のダンスやバレエを習うパターンです。でもこれはポイントがズレているでしょう。・・・他のチームが気づいていないことなのですが、GOEの高い滑り、つまり「技術的に質の高い演技」がPCSに大きな意味を持ちます。

 ・その日の演技のすべてが高品質で行われれば、プログラム全体が高品質になり、結果としてPCSはさらに上がります。芸術的な演技、観客を感動させる演技とは、あくまでも質の高い「スケート」のことなのです。・・・GOEの加点と高いPCSは連動しています。この2つが高くなければ、4回転を何本跳んでも300点は超えません。

 →→ふと思い返すと、クリケットの選手が男女関係なく、バレエのレッスンを受けているという話を、私は聞いたことがありませんでした。ブライアンが言う「演技力」もそうですが、日本では相変わらず、「表現力」とか「芸術性」という言葉をオリンピアンのスケーターですらよく使っていますが、私は、決して彼らを責められないと思っています。だって、そういう指導を受けて成功を収めてきたわけで、 成功した人ほど自身の成功体験から逃れられないですから。実生活でも、私はそういう年長者を大勢見てきました。「名選手、名監督にあらず」というのはその一例ですが、そう考えると、ブライアンはやはり特殊な人だなと思います。

 さらにもう一か所取り上げてみましょう(175頁)。

 ・シーズンに入ると、曲かけの練習で選手は満足のいく演技をする日が増えていきます。特にユヅルやハビエルはジャンプをノーミスで滑る日があります。そんなとき、まずは拍手をします。そして「どうだ、俺はやったぞ」と言わんばかりのユヅルやハビエルを呼び寄せて、こう言ってハッパをかけます。

  「素晴らしいね。でもまだまだダメだ。まだ上達させるべきところがある。ジャンプをこんなフォームで跳んでたけれど、これじゃあGOEはプラス1くらいしかつかないよ。もっと明確に難しい入り方をして、もっと軽やかに跳ぶんだ。それに演技後半になるとスピンの終わり方がいい加減になっていた。プログラム全体として雑な印象になる。もっと全部の振付をていねいに扱うんだ」

 →→ただ跳ぶだけじゃない。難しい入りこそがGOE加点のテーマになる。例えば、他を寄せ付けない完成度を誇るのが、羽生君の3Aですよね。そして、クワドにおいてもイーグルサンドをはじめとして、さまざまな工夫をこらしている。

 ジャッジも人間ですから、何らかの先入観ってあるんじゃないかと。今季のように、「ハニュウは、今日は4Loを跳べるだろうか?・・・あ、跳べたな」と思って採点するのと、「ハニュウは(いまでいう3Aのように)4Loはまず失敗しないだろう。跳べて当たり前のジャンプ」と思って採点するのとでは、GOEのつけかた、そしてPCSも変わってくるような気がします。公式練習からジャッジは見に来てるっていいますもんね。

 ・・・と、ここまで書いて、さっとんのワールド棄権のニュースを知りました。まずは、来季に向けてしっかり治してもらいたいです。

 女子の代表は、舞依ちゃん、新葉ちゃん、理華ちゃんですか。舞依ちゃんは安定しているとはいえ、おそらく滑走順は早いでしょうから、SPのスコアは渋いかもしれません。そうなると、新葉ちゃんの踏ん張り次第という所でしょうか。

fb7f221d

 
 4CCから立ち直ってくれてるとは思うけど、頑張ってほしい!

 私にできることと言ったら、ウチに無駄にある雑誌をチェックして、「三選手緊急応援企画」でもやりますかね。いろいろアイデアを練りながら、今日は寝ることにします。

 では、また明日!

 Jun

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村


フィギュアスケート ブログランキングへ