2017-05-29-07-33-35

2017-05-29-07-33-55

2017-05-29-07-33-43



 読めば読むほど、語りたい所がたくさん出てくる、Quadrupleの続きです(1)(2)。

 今日は、「神崎範之さんに聞く フィギュアスケートジャッジングの基礎知識」(122~125頁)から。現役引退後、サントリーの研究員を務めながら、テクニカルスペシャリスト・ジャッジとしてフィギュアスケートにも携わっておられます。KENJIの部屋にも出演していましたね。

judge

yuzu

 例えば、私たちがプロトコルを見る際、Panel of Judgesというページも開いて、どの国籍のどのジャッジが採点しているのかもチェックしますが、「世界最高得点のゆづのホプレガの後半のジャンプに、GOEを「1」ばっかつけとるこのカナダ人、頭おかしいんちゃうか?」みたいな思いを、させられているわけです。

 今回は、「このPanel of Judgesって、何をしてるの?」というのが具体的に語られています。

 まず、テクニカルコントローラー、テクニカルスペシャリスト、アシスタントテクニカルスペシャリストの3人を「テクニカルパネル(技術役員)」といい、さらにデータオペレーターとリプレイオペレーターを合わせた5人で、ジャンプの認定やスピン・ステップのレベル判定等を行います。まず、この5人でその作業を済ませてしまうわけです。

 の後に、9人のジャッジがGOEやPCSの判定を行います。9人のジャッジとレフェリーを合わせて「ジャッジパネル(審判団)」と呼びます(試合によっては、レフェリーがジャッジNo.1を兼任することもある)。

 さて、ホプレガの恨みを腹に溜めつつ(※このインタビューの中で神崎さんが特定の演技のプロトコルを示しているわけではないです)、まずGOE判定について、神崎さんはこう説明しています。

  「GOEの判定は主観的な側面もあり、同じエレメンツであっても、ジャッジの見方によって、プラスにもマイナスにもなることもあります。セミナーなどで、そのあたりの共通認識は徹底されますが、判定が分かれていたり逸脱している場合は、試合後のラウンドテーブルディスカッションで、どういう意図をもってつけたのかが議題として挙げられ、ある程度統一するように見解を合わせることもあります。ただ、基本的にジャッジにはある程度個々の裁量が与えられているので、『素晴らしい』という印象が強く残ればそのような採点をします。美しさの感性はそれぞれにあるので、それらを平均化して点数を出しているという状況ですね」

 →→ボクシングの村田諒太選手を「負け」にしたジャッジは6ヵ月の資格停止処分になりましたが、フィギュアスケートにもそういう罰則があるのかどうか、ぜひ聞いてみたいですね・・・。ただ、3人のジャッジだけで勝ち負け(あるいは引き分け)が決まってしまうボクシングと異なり、9人のジャッジのスコアの最高点と最低点はカットされますし、上記の通り、エレメンツの認定自体は(GOEとPCSの判定には直接関与しない)テクニカルパネルが行っているわけで、ボクシングに比べれば、よく考えられている(責任の所在が明確ではないとも言える)システムだとは思います。

 つぎに、PCSですが、PCSの各項目の説明よりも、次の2点が興味深かったので、引用してみます。

 ――・・・読者の方から多く寄せられた質問のひとつが、「技術点と演技構成点はある程度連動してくるものなのでしょうか」というものでした。これについてはいかがですか。

  「技術点と演技構成点は別々に見ているので、連動しているということはありません。もちろん、技術力の高い選手は、難しいジャンプが跳べて、さらにスケーティングやパフォーマンスもしっかり表現できるということが多いので、結果的に連動してしかりだとは思います。またトップ選手は、少しジャンプを失敗しても演技自体はある水準でできるという力があるので、そういう意味では各選手に『これくらいの点数が演技構成点では出せる』というポテンシャルは備わっているということは言えるかもしれません。ですが、ジャッジが技術点を見て、『演技構成点はこれくらい』というように点数をつけることはありません

 ――シーズンを通して選手が実績を積んでくると、『この選手はこのくらい出る』というような共通認識に基づく部分もあるのでしょうか?

  「いえ、それはプレジャッジングになってしまうので、やってはいけないことです。あくまでも、その競技会で見たままの点数をつけることがジャッジには求められています

 →→『300点伝説』でブライアンは「GOEの高い演技をするから、PCSの評価も高くなる」と説明していました。

 ただ、このブライアンの考え方は神崎さんの説明と必ずしも矛盾しません。神崎さんは、あくまでも、「GOEのスコアを見てから、PCSを後付け採点しているわけではない」と言っていて、「結果的に連動している」可能性を排除していませんからね。

 神崎さんの説明も併せて考えると、16年のボストンワールドの女子シングルのフリーで、アンダーローテが2つもあったワグナーのPCSの方が、ノーミスのメドベよりも高かった、というのも「あり得ない話ではない」というのは納得できますね。

 PCSも「実績」から評価するのではなく、その競技会の演技自体を見て採点するというのも、ちょうどここ最近、『チーム・ブライアン』の再読記事で見た事例です。12年のパリ散のPCSに関して、GP初戦のスケアメとGP2戦目のNHK杯はともにノーミスだったにも関わらず、43.36→42.29と下がっていました(トータルは95.32→95.07)。NHK杯の開催地が、羽生君にとってのホーム中のホームの仙台だったにも関わらずです。

 まぁ、人間が採点するものである以上は、神崎さんの説明が全ての演技に一様に当てはまるわけではなく、私たちもたくさん試合を見ていって、様々な「例外的ケース」を学んでいく必要がありますね。

 最後にもう2つだけ。日野龍樹君が中京大学卒業を機に、4月から練習拠点を大阪に移すことになりました。ホームリンクは臨海スポーツセンターで、コーチは大西勝敬先生です。町田樹さんのお師匠さんですね。「先生の熱意が尋常ではなく、『この選手を見たい』という情熱を感じたので、『この先生に懸けてみよう』と思って、お願いすることにしました」(67頁)とのこと。私も陰ながら応援したいと思います。

 そして、無良崇人君。男子シングルの五輪代表「第三の男」の座を争う有力選手ですが、並々ならぬ意気込みを語っていますね。ゆづの話も少し出てきました(63頁)。

 ――今季、他の選手の4回転を見て参考になるなと思ったことはありますか?

  「サルコウがだいぶ良くなってきているのは、(羽生)結弦の動きを見ているからかなと思っています。身体の使い方とか跳ぶときのイメージの理想は彼の感覚なんです。でも股関節の柔らかさは、彼と僕では違う。それをどういうふうにしていくのがいいのか。パワフルなジャンプは加点がつきにくいイメージがあるし、今回の世界選手権でも、トップ選手のジャンプはプラス3やプラス2がつく、ほぼ完璧なものでした。見ている人が、『加点をつけたい』と思うジャンプを作っていかないといけない。『跳ばなきゃいけない』ではなく『いかにきれいに跳ぶか』。そういう時代になっている。もう、トウループとサルコウくらいは、跳ぶのはあたりまえで、どれだけ加点をつけられるかの勝負になっていますよね」

 ファン目線で言うと、羽生君はサルコウに本当に苦労していた印象があり、来季トウループが柱になりそうな気配を歓迎しているぐらいなんですが、同じ競技者としては参考になる部分があるようですね。

 クワドは「物量作戦」で行くのか、クオリティで勝負するのか。五輪を見据えて、国内のスケーターたちもどう撃って出るのか、目が離せませんね。

 では、また明日!

 Jun

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村


フィギュアスケート ブログランキングへ