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 今日も、ジュエルズ最新号のレビューです。バックナンバーは「こちら」で。

 本号の発売は11月30日で、GPファイナルを見据えた誌面になっているんですが、ここまでトップスケーターたちが立て続けに欠場することになろうとは・・・。

 平昌五輪直前で「大事をとって」ということもあるのでしょうが、ソチ前の福岡のファイナルはここまで欠場者はいなかったはずですし、このスポーツが過酷化していることを痛感します。

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 さて、メドちゃんの欠場が残念ですが、今日はエテリコーチのインタを見ていきます。

 内容的には、今回のインタビュアー、タチアナ・フラーデ氏が執筆した、WFSのシーズンガイドの「最強女子シングル・ロシアの現在 トップスケーター・ファクトリー」と関連している部分もあります。そちらを紹介した「記事」もご参照ください。

 ―― ロシアには女子シングルをはじめ、強い選手がたくさんいますね。選手の育て方に変化があったのでしょうか。そしてなぜ、こんなに多くの選手が育っているのでしょう。

  「・・・フィギュアスケートを続ける男子はほんの数人。数が少ないから甘やかされているところもあるでしょうね。女子では許されないことが、男子では許されています。女子は本当に厳しい闘いが繰り広げられています」

  「・・・ジャンプを全種類跳ぶことができても、ロシア・カップシリーズに出場することすらできません。もっと下の世代であれば、もう少し試合に出るチャンスはありますが、13、14歳になると本当に強い選手でなければ、出場できる試合がありません。シーズンを通してひとつも試合に出場できない選手は、モチベーションも下がってしまいます

 →→ 日本の女子も、例えば、先日の全日本ジュニアを見ていると、「この年齢でまだジュニア?」という選手を見かけましたが、シニアに上がっても、GPシリーズにアサインされるのが大変ですからね。シニアに上がっても出られる試合がないから、ジュニアに留まることを選択せざるをえない。

 ロシアの場合はより過酷で、13、14歳の段階ですでに、国内の試合でさえ、優秀な選手でないと出場できないというわけですね。

 この間のスケアメで、サハノヴィッチという、「引退するつもりだったけど、プルさんの勧めで続けることにした」という17歳のスケーターがいましたが、彼女のように世界ジュニアで2度台乗りしていても、あっという間に下の世代に抜かれてしまうケースもあります。

 ―― トレーニング方法で何が変わったのでしょうか?以前よりも若いうちにジャンプを跳ぶようになっているのですか?

  「そうですね。以前よりも早い段階でジャンプを跳ぶようになっています。シングルスケーティングが進化しているので、われわれも考え方を変えようとしています。男子では、1シーズンの間に進化がものすごいスピードで進みました。ただ、なぜかこの『進化』はロシアを完全に迂回してしまいました。他の国が進化している間、ロシアは明らかに違う道をたどっていたのです。なぜそのようなことになったのか、われわれもきちんと理解はできていませんが、女子でもこの『進化』がロシアを迂回するのではないかという不安があります。ですから、他国に後れをとらないようについて行こうとしています」

 →→ ミーシンも、JGPでのインタで、ロシアは政府の支援も凄いという話をしていました。いわゆる、オリンピックで金メダルを獲ると、家が建つとか、車がもらえるとか、そういう類の話です。

 ただ、「おカネがいっぱいもらえるから」という部分だけを見ると、なぜ同じロシアなのに、女子は強くて、男子はイマイチなのか。男子の競技人口も少ないのか。エテリの言う「男子の進化はロシアを迂回した」という現象が見えにくいんですよね。

 ―― ロシアでは何歳からジャンプの練習をはじめるのですか?

  「恐怖心があまりない時期から始める必要があります。アスリートにとって一番危険なことは恐怖心じゃないでしょうか。恐怖心が大きなケガを招くことがあるからです」

  「・・・女性ホルモンが発達する前に、思春期を迎える前に始める必要があります。思春期前の女子が持つ男性ホルモンは、男子よりも多いか同等だそうです。男女の差が出始めるのは、女子が女子らしくなり、現状維持で満足し始め、4回転など考えもしなくなる頃です」

  「一方、男子は、より勇敢になるはずなのですが、なぜかロシアでは違うようです。10歳、11歳で少しずつ3回転ジャンプに取り組むようにして、そこから立ち止まることなくジャンプの習得を続けるべきだと思います。最初はオフアイスでの練習やハーネスを使った練習がいいかもしれません。最近の男子の『進化』はわれわれにとっていまだにトラウマですね

 →→ 正直言うと、エテリが男子の状況にここまで関心を持っていることが意外でした。これだけ女子選手の指導で世界的な実績を上げているのだから、男子の指導には興味が無いか、あるいは、そもそも女子を見るだけで物理的に手一杯だと思っていましたね。

 たしかに、エテリのチームには、クヴィテラシヴィリというジョージア(グルジア)の22歳の男子スケーターがいますが、成績的にはいまいちパッとしません。

 もしかすると、彼女は、ブライアンを意識しているのかもしれません。彼は、キム・ヨナをバンクーバーで勝たせて、羽生君をソチで勝たせた。平昌でも、もちろん羽生君は優勝候補の筆頭です。

 ただ、ブライアンやクリケットに関していうと、世界中からスケーターを受け入れていて、基本的にロシア人のみのエテリのチームとは状況が違います。

 女子の指導という点では、エテリの方が圧倒的に実績は上。現在クリケットで、女子シングルの有力選手は、デールマンとツルシンちゃんぐらい。しかも、デールマンはブライアンやトレーシーというよりバーケルの弟子という感じで、実質、女子のシニアで頑張っている弟子はツルシンちゃんのみですからね。

 男子を見ても、羽生君の下の世代は、いまゴゴレフ君が話題ですが、ジュンファン君も苦労しているし、エテリの所に比べたら、そんなにポコジャカと弟子が育っているわけじゃない。大変ですよね。

 いずれにせよ、「男子のオリンピック金メダリストを育てる」という部分は、エテリの中でも将来のテーマ、密かな野望なのかもしれません。「数年後にはトップ争いに加わりたい」と、別の部分で語っているので、少なくとも私は、彼女の発言からそう読み解きました。

 ―― 女子もこれから3回転半、4回転の時代に向かっていると思いますか?

  「思います。でも3回転半ジャンプのように、跳ぶ選手が一気に増えるとは思いません。跳ぶために適した腰や肩の幅、脚の長さや胴体のサイズを持ち合わせている選手は、女子では20人中1人しかいないでしょう。体格、そして回転などの身体能力の組み合わせが大事です」

  「現在、5、6人の女子選手を指導していますが、必要な資質を持ち合わせている選手は、わずか2人だけ。それ以外の選手にこれ以上の回転数を求めると、ケガにつながってしまいます。回転不足のせいで、骨折も起こり得る危険なジャンプです。ですから、教え子全員にやらせるものではありません

 →→ 引用はしなかったですが、彼女の弟子でクワドを跳んでいるトゥルソワやシェルバコワの話も出てくるんですが、「教え子全員にやらせてるわけではない」というのは少々意外でした。

 今季、JGPの女子シングルは、私は、シニア以上にマジメに見ていたぐらいなんですが、エテリの弟子もかなりタイプが違います。ファイナル前に直前特集記事を書くつもりですが、たしかに、私の大好きなコストルナヤは3Aやクワドどころか、タケノコすらやりそうな雰囲気のないスケーターです。一方で、全タケノコのパネンコワがいて、上述のトゥルソワもいる。もう一人、タラカノワという、ワイルドなスケーターもいて、4人がまったく違う。

 似ているといえば、後半にジャンプを固めることと、振付をしているグレイヘンガウスの選曲が暗いってだけですね。でも、コスちゃんはSPもフリーも暗くはないか・・・。想像以上に、弟子の特性を見て、育成する方向性を緻密に考えているようです。

 最後に、ひとつ印象的な部分がありました。

  「選手の中には、どんなに練習を積んでも、試合になるとどう見ても悲しそうな顔をしている選手がいます。幸せな表情をしていないんです。そういう選手を見ると気の毒に思いますね」

  「私はフィギュアスケートは人生を表現していると思っています。フィギュアスケートは祝祭(セレブレーション)であってほしいんです。試合も同じです。試合に対する不安があれば、それが表に出てしまいます。努力してきたこと、準備してきたことを披露したいという意欲が欠けてしまうと、それが周囲に伝わり、自分自身の足を引っ張ることになります。そういう選手がミスをするととても気まずいですし、かわいそうですね」

 「セレブレーション」といえば、Let's Go Crazyに対する解釈がそうだと、ジェフが語っていましたね(マガジン 16-17プレシーズン 29頁)。

 なんというか、エテリのチームは、優秀なスケーターを次々と輩出する、ベールに包まれた「謎の組織」という印象だったんですが、彼女なりの悩みがあり、弟子を型にハメているわけではなく、猛練習の目的がポジティブであったり、いろいろと新鮮な驚きがありました。

 メドちゃんは残念ながら来れませんが、それでも女子はジュニア・シニア合わせて5人、さらに男子ジュニアも1人弟子を連れて名古屋にやってくるので、ファイナルは注目ですね。

 では、また明日!

 Jun

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