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 2018年1月25日発売。すべて読みました。まず、昨日の記事は「第四章」だけを読んで書いたものなんですが、他の章や、あるいは松岡修造さんとの「熱血対談」でも、羽生君については大いに語られているので、その意味でも、ゆづファンに本書はオススメです。

 
また、他の選手についての言及という点では、城田本が羽生君以前の選手だと、荒川さんまでという「少し昔の話」で構成されている一方、本書は、織田君自身、真央ちゃん、羽生君、そして、昨年末の全日本選手権で五輪代表争いをした男女シングル選手、さらに海外のメダル候補もカバーしています。

 内容的に「重複」している部分があまりないので、しょーもないsage雑誌を買うぐらいなら、ぜひ二冊揃えて、五輪までに読破してみてはいかがでしょうか。

 さて、今日も3点についてピックアップしてみました。

 (1)運動能力と「フィギュアスケートの能力」の違い

 織田君が、自身のパーソナルヒストリーを語る「第一章」の中で、専門的見地から、非常に興味深い記述があります(41~42頁)。

  「(高校に上がって)フィギュアスケーターとしては格段の上達を果たした僕ですが、相変わらず学校の体育は苦手なままでした。柔道の先生からは、『組み手をするのは危ないから』と言われ、僕よりガリッガリの子と『受け身って難しいよね~』と言いながら、ひたすら受け身の練習を繰り返すばかり……。水泳の授業でも、体脂肪が少ない僕は、水に浮かないで沈んでしまいます。さらに身体能力もないから前に進みません」

  「ただ、フィギュアスケートにおいて重要なのは、運動神経や身体能力以上に『競技適正』なんです。僕の周りのフィギュアスケーターでも、運動神経に優れ、フィギュア以外のスポーツも得意という人をいっぱい見てきました。が、必ずしも彼らがスケートで成功を収めるわけではありませんでした

  「フィギュアスケーターにとっては、運動能力よりも『氷を捉える感覚』あるいは『氷との相性』のほうが、ずっと大事なのです。この競技には、力を抜いてスーッと滑る力だったり、同じ場所で速く回れるような力だったりと、フィギュアに特化した能力が必要になってきます。どんなに速く走れても、どんなに高くジャンプができても、氷の上で4回転ジャンプが跳べるわけではありません」

  「氷を捉える才能、これは僕らが見ればすぐにわかります。ジャンプも運動能力のように見えますが、テイクオフ(離氷)する時にものすごいテクニックが必要になります。氷への優れたタッチでスピードに乗り、その勢いと遠心力で跳ばなければなりません。その感覚がなければ、運動神経があってもどうにもならないのが、フィギュアスケートというスポーツです。これは練習で培われるものではなくて、生まれ持った素質に他なりません

 つまり、人に教わる以前から、才能のある子には、氷上における「特殊な適正」が明確にあるということですね。

 私たちが、フィギュアスケーターの「適正」とか「才能」と聞くと、「何歳までに、何回転ジャンプを何種類跳べたか?」という話をイメージしがちですが、実は、この第一章では、織田君自身が「何歳でどこまで」という話は、ほとんど出てきません。実は、スケオタの方がジャンプに固執しすぎているのかもしれません。

  「さて、僕の氷のタッチを自己評価すると、平均以上だとは思います。ただ、スケーティングとかステップといった技術面で特にジュニア当時の僕は、他の選手よりも劣っていました。ジャンプは評価されるけど、芸術面に課題がある。高校生時代の僕を評するなら、そういうことになりますが、その壁を越えるのは当時の環境下では限界だと、母をはじめ周囲の大人たちは感じ始めていたのでした」

 ちなみに、この後、織田君はカナダのリー・バーケルコーチ(現クリケット在籍。デールマンのコーチ)に師事します。それまでジャンプは「ただ跳ぶ」だけだったのが、カナダでは、ジャンプの前後のスケーティングスピード、姿勢、ランディングから次の動作に移行する際の顔の位置など丁寧な指導を受け(47~48頁)、夏の短期キャンプの後でも、帰国すると「別人のようになった」と言われたそうです。
  
 (2)錦織圭と羽生結弦(修造・信成対談から)

 この修造さんと信成君の対談(79~100頁)は、話の大半が「羽生結弦論」で、お互いの「ゆづ論」をぶつけ合い、そしてすり合わせるという流れになっています。その「すり合わせ」の部分で、修造さんが、錦織圭選手を取り上げているのが、この対談の貴重な点だと思います。

 ・二人の天才

  修造「・・・織田さんのファンからのお叱りはいくらでも受けますが、織田さんと僕の一番の共通点は、『メンタルが弱い』ことだと思うんです(笑)」

  信成「わかります(笑)。僕は本当にメンタルが弱い。修造さんもメンタル弱いんですか?」

  修造「弱い!もうね、みんな本当に勘違いしている。僕が世界ランキングで46位になったとか、ウィンブルドンでベスト8とか」

  信成「だって、すごいじゃないですか!?」

  修造「でもね、同じ時代に錦織圭選手がいたら、松岡修造はどう?

  信成「それはもう、日本の二枚看板で…」

  修造「違うっ!『錦織圭と違って、松岡は背が高くて強いサーブも打てるのに、なんで負けるんだ』って、非難されますよ

  信成「・・・僕は本番までに緊張しすぎて、夜眠れなくなって、顔面蒼白になってダメになるパターンでしたけど、修造さんは?」

  修造「僕は頑張りすぎちゃうタイプ。テニスを始めたころから才能がないって言われていて、それを自分ですごくわかっていたから。・・・才能がある人といえば、錦織圭選手。一番の才能は大事な時に力が入らず、楽にできることなんです。力を抜いてできる

  信成「羽生結弦選手と同じですね。力を抜いて、メリハリをつけるのが上手なんです

  修造「そういう感覚を僕は持てなかったから、錦織圭という人に対しては、僕は教えられなかった。彼には『お前、本気出せ!』なんて言えない。出さない方がいいから(笑)。それに、必要な時には自然と出すわけですよ

  修造「・・・正直、羽生選手がいなかったら、辞めてなかった?」

  信成「羽生選手がいなかったら…辞めてなかったでしょうね(笑)。・・・羽生選手に勝てないから辞めたというわけではないですよ(笑)。もちろん彼には勝てないです。でも、勝てなくても努力して常に前を向くのがアスリートだと思ってたので。・・・今でも羽生選手と試合では戦いたいな、という思いはあります。絶対に負けますけどね

 購入意欲が減退することのないように、ここで切ります。なぜ今季「SEIMEI」を選んだか?とか、あるいは、羽生君の性格分析のような話題でも、二人は大いに盛り上がっていますよ。

 ・「脱・平等主義」へ

  信成「今のフィギュアの強化って、全員をうまくしようという方針なんです。そうではなくて、『この子だ!』と一人に絞って、その子を全力で全神経を注いで強化するのも一つの方法なんじゃないかと考えることもあります。それこそ、伊藤みどりさんがそうだったのかなと思うんです。今ほど世界で戦う日本人の選手はいなかったけれど、やっぱり彼女が日本の威信を背負って頑張ってくれたことで、今でも伊藤みどりさんを覚えている人がたくさんいらっしゃいます」

  修造「テニスだと、たとえば錦織選手はジュニアのころから僕が一生出会わないくらいの素質があった。だから彼が11歳の時に18歳が出るような国際大会に出させたわけですよ。普通ならありえないけど、絶対にうまくなることがわかっていたから、海外遠征にもどんどん出した。年齢も力も十分でないから、当然負けますよ。でも必ず強くなると信じた」

  信成「批判はなかったですか?」

  修造「みんなが賛成というわけにはいきませんでしたよ。みんな一緒に強くなれるならそれに越したことはないです。でも現実はそうじゃない。それに『これだ!』という選手が毎年出てくるともかぎらない。でも「これだ!」という選手が出てきた時に、『みんな平等』でやっていたら、伸びる子も伸びないですよ。だから、周りからどんなことを言われても構わない。圭が結果を出してくれたおかげで、今では協会の中で、やりたい強化の内容をさせていただいています。だから織田さんも『この子だ!』と思ったら、全部やってみたらどうですか?遠征にも出して、世界で一番いいコーチを付けようって

  信成「僕も『この子!』っていう一人を選ぶのは、ありだと思います」

 修造さんが最後に言ってる、「これだ!って子に、世界で一番いいコーチをつける」ってのは、すでに城田さんが羽生君に対してやってるじゃない!と、思いますね。

 私はテニスの協会の事情はよく分かりませんが、日本のスケ連の場合、羽生君がブライアンの薫陶を受けていきなり金メダルを獲ったことで、それを「面白くない」と感じる勢力が反発している、というのが現状ではないかと。そして、それが、最初に織田君が言った「全員をうまくしようという方針」なんじゃないの?と。

 もちろん、修造さんは日本のスケ連の事情も承知しているはずで、織田君もオフレコで「修造さん聞いてくださいよ。実は・・・」って話になっていることを期待します。

 ただ、織田君はバーケルコーチやジェフとも繋がりがあるわけだし、将来的に、織田君が教え子をクリケットに送り込むというのは、あるかもしれませんね。
 
 (3)浅田真央と羽生結弦(フィギュアスケートを追求する者たち)

  「(浅田さんと)同じように『フィギュアスケートを追求する者』として、羽生結弦選手もいますが、二人の間には、違いがあります」

  「羽生選手には『極めたい』に加えて『絶対に1位を取る』という決意があります。自分が精神的に好まないものであっても、点数が出て1位が取れるのであれば、意地でもそれを体得して自分のものにする強さがあります」

  「浅田さんは、もちろん結果を最優先していたと思いますが、究極的には競技として点数にこだわる以上に『自らの信念を貫き通す』ことにこだわる選手だったように思うのです。こっちの方が点数が高いと言われても、『トリプルアクセルに挑戦したい』という気持ちがあった。勝つ確率を高めるより、挑戦することを優先したのだと思います」

  「でも、それは弱点につながってしまう可能性もありました。実際にメディアでは『トリプルアクセルにこだわりすぎ』とか、『その他の3回転―3回転のコンビネーションとか、3回転ルッツとか、武器になるジャンプをもっと強化すべきじゃないか』と言われることもありました。トリプルアクセルを失敗した時にどうリカバリーするか――もちろん浅田さんはそこにも力を入れて練習していたと思いますが――アクセルを練習する時間を他の練習に費やしていれば、浅田さんの実力からしたら、もっと勝っていたかもしれません」(以上、185~186頁)

 バンクーバーの頃の日本国内の報道を、私も鮮明に覚えてはいませんけど、むしろ楽観論というか、「世界で他に誰も跳べない3Aが真央ちゃんにはあるのだから、金メダル確実!」という論調だったんじゃないかと。

 それを未だに引きずって、ヨナの採点をアレコレ言う陰謀論者がいますが、ヨナがバンクーバーで勝った理由、逆に彼女がソチでは勝てなかった理由について、私は少し違う見方をしています。(※参考までに「こちら」や「こちら」をどうぞ)

 以上、ブログに紹介すると、ずいぶんな量になりましたが、本当にこれでも一部です。昨年末の全日本・ロシア選手権の結果もフォローしてあるので、織田君も、年末年始、ギリギリまで原稿を執筆していたようです。

 小さな不満を2つだけ。一つは、ボーヤンについてまったく言及が無いこと。もちろん4CCが始まった頃、すでに本書は印刷されていたはずで仕方のない話ですが、あのボーヤンの神演技に対して、織田君ならば称賛していただろうなと思うのです。

 もう一つは、知子ちゃんについて。彼女がケガをする以前から大変な努力家だということは本書でも熱く語られています。・・・でも、ならば、なぜ、「努力の天才」の彼女が、ジャンプの高さ、回転等の不安を改善するための取り組みを「行なわなかった」のか?

 何度もブログで書いていますが、私は知子ちゃんが大好きなんです。でも、だからこそ、彼女の努力を称える専門家の言葉が、どうもストンと腑に落ちないんですよ。

 あまり考えたくはないですが、もし、ジャンプの課題を彼女自身は認識していたのに、「気にしなくていい。転倒しないことだけに注力して!」とコーチから言われていたのだとしたら・・・。

 では、また明日!

 Jun

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