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 2018年2月5日発売。定価「1728円」。宇都宮さんの書籍やエッセイについては「こちら」も参照。

 平昌五輪後の新刊雑誌ラッシュも小休止という感じなので、五輪前に購入して積んだままになっていた本書を開いてみました。

 今日は「第四章 羽生結弦のいる時代」について、ご紹介します。

 発売日が2月5日で、しかも今季の羽生君は、昨年11月のN杯での怪我の後、2月中旬の平昌五輪まで公の場に姿を見せていませんから、内容的には既知のものばかりです。しかも著者は、SportivaやSPURなどで精力的にフィギュアスケートのエッセイを発表していて、「どこかで読んだことあるなぁ・・・」という記述もけっこうな部分を占めていました。

 大まかな内容としては、羽生君のヒストリーを、4歳でフィギュアスケートをはじめた頃から現在まで駆け足で見ていくものですが、単なる歴史の記述ではなく、関係者への取材に特徴があります。

 その肝になっているのは、都築章一郎コーチです。日本のメディア相手に、羽生君について多くを語ってくれるのは彼しかいませんから、五輪前に出た本書の都築先生のインタに新しい情報なんてあるのかな?と思っていたら、私の知らなかったお話もいくつかありました。

 (1)震災直後の「相談」(169~171頁)

 以下、都築コーチの発言を引用します。

  「羽生は、仙台に強いこだわりを持っていました。それは、彼のプライドでもあったと思っています。大震災のあと、羽生は横浜へ来ました。ここ(神奈川・横浜銀行アイスアリーナ)で練習して、チャリティショーへ参加するという日々でした」

  「そうやって、スケートへの気持ちを取り戻していったのですが、ほんとうに徐々にという感じでした。ダメージは大きかった。傷ついていました。仙台は、彼の支えだったと思います。『絆』という言葉がありましたけれど、心の中で、深く絆を結んでいたのではないでしょうか。仙台を愛していて、絶対に離れたくないと言っていました」

  「ただ、ご両親は彼の将来について、いろいろと考えておいででした。仙台に残るか、新しい環境か、そういうことです。正式な相談をお受けしたのも、あの頃だったと思います

  「私が羽生のコーチだったのは、小学六年生までとなっているようですが、事実ではありません。週末に、彼が横浜に通うという形で継続していました。練習には、いつもお母様が同行されていました。ご両親は、いろんな環境を与えてやりたいという考えをお持ちでした。その選択肢のひとつが、私の存在であったかと思います」

  「これまで、誰にも話さずにいたのですが、仙台で練習できなくなった頃、ご両親からこういう話がありました。指導を、私と長久保先生に託したいという申し出です。『ふたりで協力して、育ててほしい』と言っていただいた

  「私もできれば、そうしたかった。日本のコーチは優秀です。長久保先生も、とてもいい。実力があります。ご両親も、良さを感じていらした。ただ、環境が許さなかった。日本に足りていないのは、いろんな要素を総合的に満たす環境です。教えられる自信があったとしても、子どものためにならないのなら送り出す。そういう覚悟は必要です。いい選手を作ろうと思うとき、プライドは邪魔になります。邪魔なだけです。どれほどつらくても、捨てなくちゃいけない」

  「ご両親とはよく話し合いましたし、信頼もしていただいたと思っています。提言は、今日の結弦の姿を見れば、方向性としては間違っていなかったのではないかと思います。少しですが、自負するものもあります」

 以上、都築先生の証言です。ここでいう提言とは、都築先生がなさった「(羽生君が)世界に羽ばたくための、次のステップへの提言」で、つまり海外移籍ということですね。

 ここで、城田さんの著書の内容を思い返すと、そこでは、彼女が、11年夏に羽生君のお母さんから練習環境の窮状を聞いて、「デトロイト、コロラドスプリングス、トロント」の「三つの行き先を提案した」と書かれていました。

 ここからは私の推測ですが、羽生君のお母さんも最初は都築先生に相談をして、まずは国内での練習拠点の移籍を考えたんじゃないかと。ただ、移籍がすぐに決まらないので、城田さんにも相談をした。そして、城田さんは、「ならば結弦は、私が何としてでも、海外に行かせる!」と、彼女がその剛腕で一気に話をまとめたんじゃないかと・・・。結果的にブライアンの所に行って大正解ですから、もはや誰も文句は言わないですよね。

 このような情報が明らかになる前は、「阿部奈々美先生の意思は?教え子を取り上げられて、かわいそう」という意見もあったようですが、なにより、羽生君のご両親が練習拠点の移籍を積極的に考えていたというのは、抑えておくべき事実だなと思います。

 (2)質こそが要求される四回転時代(191頁)

  「現在、世界のトップ選手は、複数の種類を四回転で跳ぶ。それが、当たり前になった。だが、ほんの数シーズン前までは、そうではなかった。四回転トーループだけで、勝負になった。二種類持てば、勝てた。コンポーネンツをまとめることで、高い得点に繋げることができた」

  「たとえば、カナダのパトリック・チャンのスケートは、とても美しい。ずっと見ていたいような滑りをする。あの時期まで、彼のコンポーネンツは最強だった。しかし、今はその差がつまってきている。コンポーネンツでは、ジャンプの差を補うのが難しくなっている。彼は二種類しか四回転を跳べないのだ

  「疾風怒濤の展開を見せる現在、二種類では苦しい。平昌では、おそらく勝負にならないだろう

 おそらくこの部分は昨年中に執筆されたもので、手直しせずにそのまま出版という形になったのでしょうね。

 結果的に4Sと4Tで羽生君が金メダル、同じくその2種類のハビも銅メダルを獲りました。来季のルール改正がどうなるか不明ですが、GOEの11段階制が導入されれば、若手選手も、基礎点の高い4Lzや4Fをがむしゃらに目指すのではなく、自分の得意なクワドを高いクオリティで跳ぶ方向性に落ち着くような気がします。

 Pさんに関して言えば、たとえ2種類であっても完璧に降りていたら、平昌五輪でもメダル争いに絡んでいたと思います。彼の問題は、クワドもそうですが、3Aの成功率も落ちていて、ジャンプの精彩を欠く場面が目に見えて多くなりました。PCSも(いろいろ意見はありますが)、地元カナダ開催のスケカナで宇野選手より低いスコアになったり、ジャンプも含めた総合力という部分でシビアに見られたのかもしれません。

 (3)欧米と日本のフィギュアスケート人気(194頁)

   「欧米のフィギュアスケート人気は、低迷している。たとえば、アメリカでは過去、三大スポーツ(フットボール、バスケットボール、野球)に次ぐ人気と言われていた時代があった。試合はもちろんゴールデンタイムに放送されたし、二万人規模のアリーナは観客で埋め尽くされていた

  「状況は、現在の日本に似ている。そっくりだ。つまり、フィギュアスケートは、国民的な競技だった。だが、現在は違う。録画放送が一般的だ。視聴率もよくない。むろん、会場は満席にならない。状況は、過去の日本に似ていた

 アメリカでそんなに大人気だった頃って、誰がいた頃?ジョニーとか?もっと前?と、私はいまいちイメージできないのですが、今回の平昌五輪の北米向けの競技時間の変更は、まさにその人気回復のために狙った策が完全に不発に終わった感がします。

 ところで、ザギちゃんの優勝が、後半ジャンプ固め打ちに対するルール変更や、ワグナーのツイなどによってケチがつけられていますが、ルール変更があってもロシア勢はその新ルールを綿密に研究・分析して、まだしばらくは勝ち続けるだろうと思います。

  ロシア女子の特にエテリ組の子たちは、それこそ羽生君のように、フィギュアスケートに命懸けで取り組んでいて、そこが決定的な差になっている!

 彼女たちの強さに秘密なんてなくて、答えはこのようにシンプルだと私は考えています。アメリカの女子も、グレイシー、カレン・チェン、マライア・ベル、あるいは今季もっとも期待されたテネルと、彼女たちもポテンシャルは十分なはずなのに勝ちきれないのは、いまの米国の指導現場は選手の自主性を尊重しすぎているのか、どうも演技がユルイんだよなぁという印象です。

 日本のフィギュアスケートも、欧米のように衰退してしまうのか?・・・いやいや、私はあまり悲観していません。

 なぜかと言うと、私は将棋も好きで見ているんですけど、藤井聡太君が登場する前の将棋界というのは、フリーソフトでさえプロ棋士よりも完全に強くなり、スマホカンニング疑惑もあったり、将棋連盟の幹部が総退陣する事態になっていました。どん底の危機的状態でした。

 あれを思えば、すでにフィギュアスケート界には、紀平梨花ちゃんがいるし、山本草太君や須本光希君もいる。もちろん、我らが羽生結弦も、クワドアクセル挑戦への道という、独自の進化を遂げてくれることでしょう。未来は明るいですよ!

 世界ジュニアも間もなく始まります。2022年の北京五輪の女子のメダル候補は、トゥルソワとコストルナヤが中心になると私は見ていますが、これから4年間、梨花ちゃんがどれだけ戦ってくれるか、楽しみですね。

 そういえば、某匿名掲示板で、

  「ハビもスペインに帰るんだし、紀平をオーサーの所に送りこめ!」

 という書き込みを見かけましたが。たしかに彼女はジェフのプログラムも滑っているし、いやぁ、まぁ、そりゃ分かるけどさぁ・・・。城田さんが一仕事してくれることを密かに期待してますが、濱田先生が出すわけがないし・・・。

 では、また明日!

 Jun

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