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 昨日の続きです。「プロローグ」(1~5頁)、第9章「平昌オリンピック」(159~205頁)、そして「エピローグ」(207~213頁)を読んでみました。

 第9章自体は、前半部分は団体戦のレポートなどが入っていて、羽生君は170頁から登場します。今日読んだ部分で描かれている羽生君は、バラ1・SEIMEIについてのレポートも含めて、フィギュアスケートの本らしい内容になっています。

 (1)予定外の通訳依頼

 さて、昨日の記事でご反響いただいた「通訳の問題」ですが、当初平昌五輪では、田村さんが通訳をする予定はまったく無かったという話です。

  「オリンピックでは様々な言語のプロの同時通訳が待機していて、記者会見は記者も選手もイヤフォンをつけてその通訳を聞きながら行われる。羽生の会見も、日英の同時通訳が入る予定だったので、私は安心していた

 ところが、江陵アイスアリーナのメディア担当者から連絡が・・・。

  「日英の通訳が、MPC(メインプレスセンター)に回らなくてはならなくなった。だからここには通訳がいないんだ。・・・やってくれるか?」

  「日本のスケート連盟にも、一応英語を話せる人はいるはず。さすがにこの会見は荷が重すぎます。何かあっても私では責任が取れません」

 でも、スケ連の広報担当者がマイクを持ってやってきて、羽生君も数分後にやってくる。やるしかない!と、覚悟を決めたそうです。

 本書にこのエピソードを収録するにあたって、おそらく、端折っている部分があると思いますが、このメディア担当者もまずは日本のスケ連に連絡を入れたはずで、どうせ日本の関係者はいつもの調子で、「田村さんでいいですよ!」なんて、二つ返事でオッケー出したんじゃないの?と思いたくなりますね。

 (2)ジャンプ再開時期についての「意外性」

 会見での羽生君の発言については、皆さますでに、雑誌や捕獲済の地上波番組の映像を通じて熟知されていると思いますので、省略します。ただ、一点だけご紹介しましょう。

  「・・・(羽生は)スマホのカレンダーを出して日にちを確認しはじめた。『跳びはじめたのが、1…2…3…トリプルアクセルが3週間前。4回転がそうすると2週間から2週間半前です』」

  「珍しいな、と違和感を感じた。羽生は普段、自分が言いたいこと、伝えたい言葉をきちんと準備して会見にやってくる。ジャンプの練習を再開した時期など、聞かれることは予想していただろうに。そう思ってから気がついた。これは、羽生にとってロシア杯以来4ヶ月ぶりの記者会見なのである。普段は紙媒体のための取材を受ける前にテレビインタビューなどを散々こなし、自分の中できちんと言葉をまとめてから会見に臨む」

  「懸命にスマホの画面を見ながら、日にちを数えている羽生を見ていたら、本当に復帰したてで、会見の準備をする余裕もなくここにやってきたのだ、と実感。ちょっと喉元にこみ上げてくるものがあった

 あの会見を見て、「準備をする余裕もなかったのだな」と感じた人は、世界を見渡しても田村さん一人じゃないでしょうか?さすが、多くの試合の会見で羽生君の通訳を「させられている」だけあって、羽生君について「見ているポイント」が違いますよね。あのマガジンでさえ、山口記者は現地で感じたことを全て文字化する方ですけど、そんな記述はありません。

 つまり、記者席側から手を上げて質問する立場と、質問を受ける立場(の通訳)として「こちら側」に座るのとでは、やはり見えている光景が違うし、違った視点で羽生君を見続けてきた、と言えますね。

 この後、本章では、羽生君の練習の様子、バラ1・SEIMEIのレポートが続くのですが、フィギュアスケート専門誌でよく見かけるような「分析調」ではありません。比較的読みやすい柔らかさです。

 例えば、SEIMEIの後半の4S-3Tを降りた時に「ああ、これは羽生の優勝だ、と思った」とか、いやいやいや、その後大変だったじゃないですか!と。バラ1の時は、冒頭の4Sを降りた瞬間に、「これは110点以上必ず出る!」と私は確信しましたけど、SEIMEIはスタミナの問題もあるし、テレビで観ていて最後まで気が抜けなかったですね。

 (3)ブライアンとの電話

 メダルセレモニーや会見の後、田村さんは現地でブライアンと電話で話をしています。ブライアンの発言をご紹介します。

  『今回はユヅにとって、楽なオリンピックではなかった。だからこそ特別だったんです。世界に彼が、どのようなアスリートなのか見せることができた。彼がどれほど強く、どれほど意志が強いのか、知らしめることができたのです』

  『回復には、誰の予想よりもさらに長い時間がかかりました。1日1日、1分1分が彼にとって必要な時間だった。ようやく痛みがひいて氷の上に戻ってきたとき、ユヅは本当に嬉しそうだった。すごくリラックスして、楽しんで滑っていたと思う。この大会には自分と、自分が積み重ねてきたトレーニングを信じて挑んだのだと思います』

  『(『きみのことを、とても誇りに思うよ』と告げたのは)・・・彼がオリンピックで金メダルを手にしたからではありません。彼が大きな障害を乗り越えて、素晴らしい演技を見せ目標を達成することができたからです

 オリンピックというのはある意味で残酷で、メダルを取れなかった選手はほとんど報道されないし、銅よりも銀、銀よりも金と、明らかにニュースの質・量ともに違ってきます。

 金メダルを取らなければ、「怪我を乗り越えて、素晴らしかった!」「勇気づけられた!」「元気をもらった!」というような見方を、一般ファンからはしてもらえません。その意味で、4回転の構成も含めて、勝負に徹したことの意義は計り知れないと思います。

 さて、正直言って、あまり期待せずに本書を読んでみた割に、田村さんは、羽生君との関わり方が一般のライターや記者とはかなり違うので、随所に面白いエピソードがありました。

 私たちには知ることのできない「羽生結弦の素顔」を、彼女が今後も発表してくれるためには、引き続きスケ連の関係者がゼニを惜しんで、田村さんに通訳を押しつける必要があります・・・。

 でも、それじゃダメですよね。プロの通訳を必ず帯同させる。フィギュアスケート大国の格ってそういうものじゃないですか?まぁ、それが実現するには、現会長に一秒でも早く消えていただく以外になさそうです。

 では、また明日!

 Jun

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