IMG_0136

IMG_0137

FullSizeRender

IMG_0186



 田村さんの『挑戦者たち』については、すでに二本レビューを書いているので、そちらの方もぜひどうぞ(「1」「2」)。

 なぜこの本をまたご紹介するかというと、「Continuesも、もう間もなくだし、そういえば、この本には、都築コーチの章があったな・・・。読んでおくか」と、開いてみたのです。すると、この章の内容は、都築コーチのパーソナルストーリーではなく、「都築コーチの見る羽生結弦像」でした。

 田村さんが都築コーチを取材したのは、昨年8月17日。羽生君が横浜銀行アイスアリーナでレッスンイベントを行った翌日でした。

 (1)佐野さんへの指導経験が基礎に

  「佐野が誕生していなかったら、羽生(という選手)は生まれていなかったかもしれない。佐野によって、新しいものが誕生した。ある意味で羽生の存在は先輩たちが残してくれた結果が力になっていると思います」

 以前、宇都宮直子さんのSportiva連載の佐野さんについてのテキストをご紹介したことがありますが、都築コーチが佐野さんを指導していた1970年代は、全てが試行錯誤だったといいます。

  「当時の合宿は山梨だったのですが、羽生(の環境)に比べれば何もないところ。その中でしゃにむにやってきた。教える技術も、日本には手本が何もなくて、そんな中で無駄のある練習の仕方をさせました。当時の佐野は1日8時間も氷の上で練習をしていた

  「それに比べると、羽生の練習量はその3分の1。私には佐野の経験があったので、短期間で吸収させることができたんです

 佐野さんに3回転を教えてきたことが、羽生君を指導をする上での大きな基本になったそうです。

  「特に羽生の正確性を持った3アクセルは、彼が小さいときに2アクセルからやったことが基本になった。まあ、一応私が教えたような気がします」

  「羽生が世界に出ることができた武器は、あのすばらしい流れのある3アクセルだった。あれを武器にして、強豪を相手に勝ってきました。それが4回転の基礎になったんです」

  (2)羽生君の技術習得の特長

   「羽生の場合は最初から覚えがものすごく早い、という生徒ではなかった。でもできあがったときは、どんどん並行してほかのものもマスターしていった」

  「羽生は4回転をやるようになってから、あっと言う間に2種類か3種類の4回転ができるようになった。早いですね。その高いレベルに挑戦できるような精神的、肉体的なバランスをとっていくのが課題になると思います」

  「羽生は小さいときから、イメージというものを大事にするスケーターでした。何かを習得するときにはまずイメージ作りをしてから練習をすると、確率の高い仕上がりになるんです」

  「目から入ってくるものを感覚的にとらえて、それを自分の動きに取り入れるような能力を持っているんです」

 子供の頃に羽生君がよく見ていたのが、プルシェンコのビデオ。そして、現役時代のプルシェンコは、驚くほどミスが少ない選手だったそうです。羽生君は繰り返しそのイメージを焼き付けることで、羽生君の中にあったもともとの能力が覚醒していったと、本書では書かれています。

 そして、このイメージトレーニングというのは、平昌五輪を「ぶっつけ本番」で、ベストパフォーマンスを披露する原動力になったのだと、私は思います。当時、プロスケーターや医療関係者は、本番のどれぐらい前に氷上練習を始めて、どれぐらいの時期からどんなジャンプを跳べていないと間に合わない、そんな持論を展開していましたよね。あとは、フィジカルトレーニングやスタミナの話等々です。

 ただ、彼らの口から「イメージトレーニング」という言葉を聞いた記憶が、私にはほとんどありません。リンクの上でやることが練習。バレエレッスンを受けることが練習。ジョギングやエアロバイクのような有酸素運動が練習。しかし、これらを行うにはしかるべき環境が必要です。

 もしかすると、日本のフィギュアスケーターにとって、リンク不足というハンデに風穴を開けるのが、徹底したイメージトレーニングにあるのかもしれませんね。リンクを貸し切って何時間もダラダラと練習できる環境があっても、汚いジャンプをコケてばかりの選手もいれば、一方で、羽生君のような氷上練習を制限された中でも、本番できっちり決められる人もいる。

 リンクはカネがかかる。でも、イメージトレーニングはタダです。羽生君は一刻も早くこのイメージトレーニングの方法を体系化して、しかるべき時期に、ぜひ指導の現場で役立ててほしいですね。オーバートレーニングによる怪我も防げます。良いことずくめではないかと。

 (3)羽生君を王座に導いたもの

  「彼はかなり精神的に強くて、負けず嫌い。負けるということが嫌いな人間です。環境づくりをしてあげれば、必ずできるようになるので、コーチからするとものすごく安心するんです」

  「彼は自分というものを、かなりしっかり持っている。それだけある意味ではコーチから見るとわがままに見えるかもしれないけれど、私から見ると、それは彼が持っている能力。モチベーションがものすごく高いんです。ジャンプにしても、表現にしてもかなりのモチベーションから創り上げてくる。それは素晴らしいものだと思う

 いわゆる、都築コーチが佐野さんに課したトレーニングというのはスポ根的な指導方法なんですが(宇都宮さんの本にその辺りは詳しいです)、イメトレの重要性をこのように語ってくださっていたり、だからこそ、まもなく80歳にして指導現場に立っている理由のような気がします。

 「結弦が怪我がちなのは鍛え方が足りない」なんて絶対に言いません。むしろ取材時の昨年8月、こう心配していました。

  「羽生は(精神的な)強さを持っていると思うんですが、彼の場合は体がダメージを受けるときがあるので、それがぶつからなければ。いつも大会のたびに何かが起きてるから、それがなければいいなと思っています

 恐れていたことが現実になったわけですが、それももう過去の話です。本書の都築コーチの章はわずか20ページほどなんですが、面白い話が随所にありました。もしかすると、Continuesでの佐野さんとのフリートークでは、この辺りのさらなる裏話も出てくるかもしれません。楽しみですね!

 では、また明日!

 Jun

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村


フィギュアスケート ブログランキングへ