On the Back of the Flyer

TOEICテストメモ、羽生結弦選手、日々のアレコレを綴ります。

タグ:高山真

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 2018年5月10日発売。税込み価格「1,720円」。Sportivaのバックナンバーについては「こちら」。

 久々の雑誌レビューのような気がします。じっくりゆっくり行きたいと思います。まず、前号「Sportiva 平昌オリンピック特集号 歓喜のメモリー」(3月9日発売)は、あくまでも「平昌五輪特集号」という体裁だったので、羽生君どころか「オール・フィギュアスケート」という誌面構成ですらなかったですから、期待外れ感は否めませんでした。

 そこで本号ですが、全編フィギュアスケートの記事で構成。羽生君関連の記事に限っても、全82ページのうち冒頭から55頁までを占めているので、かなり頑張ってくれたと思います。これは買いで良いと思います。

 (1)【特別寄稿】巻頭エッセイ 高山真

 表2(表紙の裏)に掲載。「たったこれだけなの?本当にこれだけ?」と、目次ページとこのページを、何往復かしてしまいました。

 高山さんの著書『羽生結弦は助走をしない』と比べれば、とても平易で分かりやすい内容に留められています。そんな中で、「上手く書くものだなぁ・・・」と感心したのは、平昌五輪のSEIMEIについての、次の描写。

  「フリーの前半の完璧なジャンプからあふれ出た美しさと、後半のこらえたジャンプに炸裂した意地。どこまでも精緻でありながら、その精緻さを突き破るような気合を感じた」

 最後の3Lzのことを言ってるわけですが、高山さんって、批評はしても悪口になるようなことは絶対に書かない方なので、見習いたいなぁ・・・と思います。

 世の中に、ぴょん落ちならぬ「Continues落ち」なる方がいるかどうか不明ですが、テレ朝チャンネル2での「CWW完全放送」も始まりましたし、あのショーで披露された羽生君の過去の名プロをより深く理解する上で、『羽生結弦は助走をしない』はとても良い本です。私も記事の中で何度かご紹介させていただきました。

 (2)【特別付録】 羽生結弦ピンナップ

 両面ピンナップです。いずれもCWWのショットで、表がツィゴイネの衣装、裏がフィナーレ時の白の衣装です。

 いい写真だなぁ・・・としみじみ思いつつ、「そういえばSportivaに、ポスターってついてたっけ?」と本棚を漁ってみると、実はかなり久々だということが分かりました。

 少なくとも私の所有しているSportivaで言いますと、「羽生結弦から始まる時代」(15年4月)、「羽生結弦 新たなる飛翔」(15年10月)、「羽生結弦 Over the Top その先へ」(15年12月)の3冊のみでした。

 それ以降のSportivaは買い逃していないはずなので、約2年半ぶりのピンナップ復活ということになりますか。本号限定かもしれませんが、「大人の事情」を忖度せずに、ゆづ推しを堂々と誌面で表現してくれるのは、嬉しい限りです。

 (3)Parade in SENDAI / Continues ~with Wings~

 凱旋パレードの写真が6ページ、CWWの写真が3ページ。CWWの写真が両面ポスターを含めると5ページという換算になり、もうちょっと欲しかった気もしますが、まぁ、愛蔵版ブックを待ちましょう。

 凱旋パレードの写真は、表紙からもお察しのように、もちろん能登直さん。凱旋カーに乗り込んだ「選ばれしカメラマンの一人」でしたから、車の上で羽生君を至近距離から捉えたショットが完全に主役です。

 そういえば、地上波番組の編集作業をする中でも気になっていた、凱旋カーに乗り込んでいた例の女性スタッフ。無線(?)のようなもので指示を出していた赤いベストの彼女も収まっています。とはいえ、彼女が何者なのかは、分からないままですが・・・。

 折山淑美さんのテキストが1ページありますが、彼はCWWだけでなく凱旋パレードも取材したようですね。両イベントの様子と羽生君のコメントがコンパクトにまとまっていて、非常に読みやすいです。


 自分も現地(123)で見たCWWの放送をこれからチェックしたいので、今日のレビューはこの辺りで・・・。

 その代わりに、オマケを一つ。何度か通ったことのある場所なんですが、ビックリしました。JR相模原駅近くの「鳥忠さがみの亭」というお店です。まだ国民栄誉賞は正式に決まったわけではないけど、このアバウトさがいいじゃないですか(笑)。このガラス越しに、大将と思しき方が串を焼いていました。夜、これを見かけていたら、ノリで一杯・・・となっていた所です。

 では、また明日!

 Jun

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yuzu1

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 高山さん推奨の旧ロミジュリは、もちろん2012年のニースワールド。こちらはフジの放送で、本田武史さんと西岡アナですね。フジで放送があったことについて、本書で言及されています。

  「この年、シニアの世界選手権に初めて出場した羽生。フジテレビが夜9時台から試合を中継していましたので、『この大会で初めて羽生結弦の演技を見た』という方もかなりいらっしゃるのでは、と思います

  「(第2章で)私は『表現には、“物語世界を演じ、その物語の登場人物になりきってしまうようなプログラム”と“音楽そのものになりきってしまうようなプログラム”のふたつがある』と書きました。この章で取り上げている、2009~2010年シーズンからの演技の中で、羽生が明確に『登場人物』を演じた初めてのものが、『ロミオ+ジュリエット』だと思います

 (1)4T(+2.43)

  「最初の2~3漕ぎで、前シーズンまでとは比較にならないほどのスピードが出ている。そのスピードの中で跳ぶ、4回転トウの大きさ、高さ。そして、着氷後にもまったく落ちないスピードと見事なバックアウトエッジのフロー」

 →→その2~3漕ぎのスケーティングに入る前、最初の動き出しからして速いですよね。気合いが入っているのか、コンディションが良いのか、素人目には何と言えませんが、動き出しの違いがまず印象的。これでジャンプをミスるわけがないという、自信に満ちたスタートです。

 (2)3A(+2.14)

  「時計回りのターンも、よりシャープに、そして軸が確かになっている。そこから、『右足を先に前に出し、両足のエッジをつけた状態にする。そこから、どちらの足も氷をとらえたまま、バランスを変えていきアウトサイドのイーグルへ』というムーヴを見せ、ただちにトリプルアクセルへ」

  「私は、この非常に個性的な入り方、エッジのさばき方でおこなうイーグルを見た時点で、『これは面白い!』とは思いましたが、そこからまさかトリプルアクセルにつなげてくるとは思いもしませんでした

  「この冒頭のふたつのジャンプで、私は『何かとんでもないことが起こりつつある』と、ますます画面に釘付けになったのです」

 →→イーグル自体は、たとえばネイサン、あるいは須本君もキレイに滑りますが、CWWのコーナーで無良君も苦労していたように、イーグルからダイレクトで3Aを跳べる選手は、その後、なかなか続いてきませんね。

 (3)3F(+1.20)

  「コネクティングステップから跳んだトリプルフリップが、きちんとバックインサイドエッジで踏み切られていた。私が思わずテレビに向かって拍手をした部分です(冒頭ふたつのジャンプのときは、呆然としてしまって拍手するのも忘れていました)。長年にわたって体にしみついた『踏み切り時のエッジのクセ』を、きちんとゼロにしてから、構築する。それは本当に難しいことのはずです。羽生結弦が『大技』だけに取り組んでいたわけではないことが強く伝わってきました

 →→フリーの3Fのエラーは本当に克服しましたよね。いま、ジュエルズのフォトブック巻末のプロトコル(15-16、16-17)を見てみても、フリップはアテンションすらつかなくなりました。

 (4)FCSSp4(+1.00)

  「トリプルフリップの着氷からただちにおこなう、フライングで入る足替えのシットスピン。第1章(52~53頁)の、2017~2018年シーズンの『SEIMEI』(ロステレ杯)では、トリプルアクセルの着氷からこの動きをしていることを書いていますが、こうして振り返ると、跳ぶジャンプの難度が確実に上がってきているのがわかります

 →→少し補足します。ロステレ杯では4Lzを含む5クワドと2本の3Aで、最後に単発の3Aを跳んだので、直後にこのスピンという流れになりました。平昌五輪では、ルッツ・ループ回避の4クワド構成なので、最終ジャンプは3Lzで、その後にスピンが来ています。

 (5)3A+3T(+1.57)

  「本人もまったく予想していなかっただろう箇所(CiStの終了後)で転倒したせいで、左ひざをかなり強く打ちつけたにもかかわらず、そこからわずかな助走だけで、左足で踏み切るトリプルアクセル、そしてすぐにトリプルトウのコンビネーション。ここで私はテレビに向かって叫んでしまいましたが、会場の観客も気持ちは同じだったようで、聞こえてきた歓声は地鳴りのようでもあり、悲鳴のようでもありました

 →→このロミジュリが「伝説」と呼ばれる理由に、この転倒が生んだ「ドラマ」があったと私は思っています。これと似たケースで真っ先に私の頭に浮かぶのは、奇しくも同じ「フランス」ですが、16年マルセイユGPFの「Let's Go Crazy」ですね。



 あの演技が最高のライブ感を生んでいたのは、冒頭の4Loで「おっとっと!」という着氷で羽生君が苦笑いをした後、「もう、どうにでもなれ!ついてこいよ!」と彼が煽って、あの曲が本来持っている荒々しさがマックスまで増幅されていました。

 「ミスもエネルギーに変えてしまう!」というのは、ニースのロミジュリから始まったのかな・・・という気がします。

 (6)ChSt~FCCoSp

  「体内のエネルギーの最後の一滴まで絞り出すかのような、コレオシークエンスの激しさとパッション。前シーズンよりもはるかに上半身を大きく使い、ドラマティックなものになっていました。そこからさらにトリプルサルコー。よく着氷しました!」

  「最後の足替えのコンビネーションスピンのときは、テレビから伝わる会場の歓声があまりに大きくて、音楽がよく聞こえない状態でした。フィギュアスケートはルールにのっとったスポーツです。よって、この本では私の目に見えた『事実』だけを語っていきたいと思います。なので、こういう主観的な表現は可能な限り控えめにしていますが、この演技は『観客を引きずり込む力』が尋常ではなかったと思いますし、この演技を見た方(あるいはこれから見る方)も同じ感想を持ってくださるのではないかと思います

 →→興味深いのは、ロミジュリがどうしてここまでエネルギーに満ちているか?について、高山さんは、「体の動きや感情の表出の面で制約の多いクラシック音楽、パガニーニやツィゴイネにすでに挑戦していたから」と分析。クラシックバレエよりも、自由なダンスの方が感情表現をしやすいように、フィギュアスケートも選曲による「制約」を受けやすいのだと。羽生君が、若い頃にクラシック音楽で「努力」を積んだことで、キャッチーで華やかな映画音楽のロミジュリで「爆発するようなパッション」を出せたということです。

 さて、CWWのロミジュリと比べてみるとどうか。これは、すでに断片的に書いてきましたが、「上半身の振りの大きさとメリハリ、音をつかむタイミングのドンピシャぶり」が、はっきり見て取れる成長であると、感じました。

 競技プロで言うと4Tを跳んだ直後からの、右こぶしを握って、ドンドンと打ち付けるような振り付け。かつて、水泳の北島康介選手が五輪で金メダルを獲って、水面を何度も打ち付けて喜びを爆発させたことがありましたが、あれを思い出すような、感情の表出。「上下分割動画」でも、よく分かると思います。

 ところで、羽生君の演技とは関係ないですが、上下分割動画の「前半」ではさほど気にならなかったものの、「後半」の動画を見ていると、CWWのカメラアングルがいろいろひどい・・・。

 来年以降は、会場が大きくなる可能性がありますが、カメラ台数を増やして、カメラマンおよびスイッチャーを、しっかり熟練のスタッフで固めてほしいと思います。せっかくの名演がこれではもったいない!

 では、また明日!

 Jun

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yuzu

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 CWWの初日に「ツィゴイネルワイゼン」の再演があったので、いいタイミングですし、高山真さんの著書を調べてみました。

 高山本の中で推奨されていたのが、2011年台北の四大陸選手権。YouTubeでは、Jスポの高画質動画が生きていて、解説は樋口豊さんと思われます。

 CWWの映像は、デイリーで「yuzuru hanyu」で検索をかけるとヒットします。


 また、ブログ読者のjadeさまから、過去の演技とCWWの演技を上下分割映像として作成した動画をご紹介いただきました。ありがとうございます。こちらもご参照ください。

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 羽生君がフリープログラムとしてツィゴイネを演じたのは、シニア1年目の10-11シーズン。15歳でシニアに上がって、シーズン中に16歳になりました。

 (1)4T(+2.00)

  「リラックスした上半身の動きとひざの柔軟性を使い、『力』や『勢い』ではなく『スピード』と『タイミング』で跳ぶ、素晴らしい質のジャンプ。4回転きっちり回りきり、着氷時に、まったく乱れのない素晴らしいフローを描く。すでに『熟練性』すら感じさせる出来栄えでした」

  「この1年前の、バンクーバーオリンピックの男子シングルでは、『4回転ジャンプを入れて挑戦するか。それともトリプルアクセルを最高難度の技にして、プログラム全体の質を目指すか』という議論が起こっていました。ジャンプの失敗は『大きな得点源をごっそり失う』ことを意味しますし、『トリプルアクセルと4回転ジャンプは、たった半回転しか違わないのに、その難しさの差は信じられないほど大きい』という実感も、ほとんどすべてのスケーターに共有されていました。そういった『4回転の壁』を、ジュニアから上がってきたばかりの16歳の選手が、軽々と超えてきたのです

 →→シニアのトレンドとは無関係に高難度ジャンプを追求するという意味で、今季の女子ジュニアのトゥルソワがかぶりますね。CWW初日の子どもからの質問コーナーで、羽生君はサルコウの跳び方を教えていました。ここで跳んでいるのは4Tですが、高山さんが指摘している「スピード」と「タイミング」という特徴は、ジャンプの種類関係なく、やはり「羽生結弦のジャンプ論」の柱になっていると思います。

 (2)3Fe(-0.50)

  「フリップの着氷の瞬間、両手を広げたのが『バランスをとるため』ではなく『音楽との同調性で、さらなるニュアンスを出すため』であることがはっきりわかります」

 →→それでもまだ、この「両手広げ」は多少の「遠慮」を感じます。翌シーズンのロミジュリではより大胆になり、さらに、CWWではドーン!という感じに。こういうメリハリは、3シーズン目のバラ1から特についた気がします。

 (3)1Lz+2T(0.00)

  「レイバックイナバウアーからの流れでトリプルルッツを跳ぶ。ルッツは1回転になりましたが、16歳のスケーターが、この果敢なエントランスにチャレンジすることそのものが素晴らしい

 (4)SlSt3(0.50)

  「ストレートラインステップは、音楽とのシンクロをかなり意識して作ったのがわかる仕上がりに。バイオリンの弾けるような弦の音と細かいエッジワークを合わせるあたりは、非常に小粋でした

 (5)3Lo~CCoSp2

  「ただし、さすがに終盤は疲れが表面に出てきました。その後のトリプルルッツ、トリプルループ、トリプルサルコーは、着氷がやや乱れ、スピンやコレオシークエンスは、音楽との同調に苦しんでいるのが見て取れました。コレオシークエンスは、『フォア・バック』のエッジの切り替えの少ない、わりとシンプルなステップの組み合わせで、右足で『フォア・バック』を切り替えていく部分では、明らかにエッジが走っていなかったり……という部分も見えました」

 CWWで使われていたのは、まず、冒頭から4Tの辺りまで。そこから中間部分を抜いて、チャチャチャチャ・チャチャチャーン!」の所は、フリープログラムでは、単発の3Lzを降りた箇所。そこからラストまでです。プログラムでは、3Lzの後に、3Loと3Sが入りますが、もちろん先日のショーでは跳んでいません。

 動画の中で、解説の樋口先生も、ジャンプは「素晴らしい!」と絶賛しているんですが、後半のコレオの部分は「少し簡単すぎるかも」と指摘していて、「でも、いろいろ要素をこなさなきゃいけないですしね」という感じでした。

 CWWはその「ジャンプ抜きバージョン」だからこそ、スケーティングのスピードと伸び、この違いがはっきり分かります。正直言うと、ツィゴイネのイメージって、いまと比べると、個人的には「動きのチマチマ感」が記憶に残っていたのです。

 でも、その振り付けでアピールする前の段階の、基礎のスケーティングがまるで別人なので、私自身、CWWでツィゴイネから受ける印象はまるで違ったものでした。
これはやっぱり、クリケットに行って、トレーシーに鍛えられた成果でしょうね。

 高山本では「旧ロミジュリ」も解説されているので、明日の記事でも、今日のような感じでCWWと比較しつつ、見ていこうと思います。

 では、また明日!

 Jun

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yuzu10

 昨日の記事で、キーガンのインタを紹介する中で、2009年のJGPトルン杯の羽生君の動画もチェックしました。

 ただ、さすがに9年前のJGPで画質も音質も厳しいものがあったので、このシーズンの世界ジュニア(2010年)の演技も後で見ていきたいと思います。

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 なぜ10年の世界ジュニアかというと、高山真さんが自著の中でこの試合の「パガニーニ」を解説しているからです。せっかくこのシーズンの羽生君の演技を「再訪」することになったので、高山さんの解説とともにさらに細かく見ていきたいなと。

 ちなみに、SPの「ミッション・インポッシブル」の方は画質がやや悪くて恐縮ですが、フリーの方はフジの放送で、実況・鈴木芳彦さん(すーさん)、解説・本田武史さんだと思われます。

 最近ウチのブログでホットな武史さんですけど、なんてったってバンクーバー五輪の翌月開催のジュニアの試合ですから特に関係各所に配慮する必要もなく、伸び伸びと解説されています。





 リザルトは「こちら」。先に軽くSPの方を見ておきます。プロトコルを見てみると、ショートの時点で羽生君は3位で、1位・ホックスタイン、2位・キーガンという順位だったんですね。

 このシーズンのSPで、羽生君は3Lzのセカンドには2Tをつけていたので、このショートで3Lz-3Tの構成の上位2人より3点ほど基礎点で差をつけられています。さらに、ステップ・スピンともに、レベル4を一つも取れていません。つい最近の話ですが、須本君や三宅君のプロトコルを見て、「レベルの取りこぼしが・・・」なーんて、私もブログで書いていましたけど、羽生君も世界ジュニアを制した時でさえ、そうだったんですね。

 そう考えると、トータルで隙のない演技をするようになったのは、やはりクリケット移籍が大きいのかもしれません。

 さて、フリーのパガニーニです。高山さんの解説(87~92頁)は、演技前の最初の立ち姿の所からチェックが入っています。解説のすべて取り上げるとキリがないので、あくまで私の独断で選んでみました。興味のある方は本書をぜひ入手してご一読ください。

 (1)3A

  「トリプルアクセルの高さと、着氷の安定感。そして着氷後の流れ(フロー)が素晴らしい。この完成度の高さには、本当に驚かされました。スピードのある助走から、『力』ではなく完全に『タイミング』で踏み切り、まったく回転不足のない状態で着氷。ひざの柔軟性を見事にいかしたフローゆえに、着氷した後のほうがスッとスピードが速くなる感じです

  「この本を執筆中の2017年の終わりになってこれを言うのは後出しにもほどがあるとは思うのですが、『15歳でこの着氷ができるなら、極めて近い将来、着氷前だけでなく着氷後にもトランジションを入れられるようになるかも』と感じたものです」

 →→昨日の記事でトルン杯の映像を貼って良かったと思いました。なぜなら、トルン杯のフリーの3Aは身体が沈み込むような着氷で、「ここから着氷姿勢が安定して、進化していったのだな」と私も感想をつけたぐらいでしたから。

 トルン杯での加点は0.86、この試合の加点は2.00でした。高山さんの解説には賛成なんですけど、この時期の羽生君は、今のように「どの試合のどの3Aも踏切から着氷まで完璧なクオリティ」とまではいかない。だからこそ、これを安定させ、さらにクリケットに行って「入りと出」の部分に工夫を凝らして、究極の3Aを創り上げたのだなぁと、感慨深いものがあります。彼ほどの才能の持ち主でも一朝一夕にはいきません。努力の天才でもあるのですね。

 (2)ツイズル

  「演技始まってすぐのツイズルで、15歳という年齢を考えたら非常になめらかに滑ることができることを確認

  「トリプルループの着氷の流れから、ダイレクトにサーキュラーステップシークエンスに入る。ジュニアながら、非常に野心的なプログラムだと思います」

 →→この3Loも、前半の3Lzも、いまの羽生君の4Loや4Lzへのプロトタイプ(試作品)を見ている感じがしませんか?まさにこのフォームのまま高さ・幅が増して、いまの形に結実していったのだと。

 そしておそらく高山さんは、冒頭でツイズルについて言及したので、重複を避けたのでしょうが、実はこのサーキュラーステップの部分でもツイズルが2度入っています。

 このような技の数々を見ていると、いかにいまのシニアのつなぎが「漕いでるだけ」で、単調なのかが分かります。

 (3)奈々美先生の貢献

  「バックグラウンドにクラシック音楽やバレエという要素を持っていない日本人。その日本人の、しかも少年が、この曲で滑る難しさを、私はまず思いました。また、思春期の年齢で、こういった曲の世界に入り込むことに照れがある男子も多いのです。もしかしたら、ミドルティーンの男子が『音楽を表現する』うえで、いちばん高い壁になるのは、これかもしれません」

  「そういった、さまざまな方面の難しさを取り払うために、コーチの果たす役割は大きい。本来ならば、羽生の歴代のコーチについて私があれこれ言ってはいけないのですが、この時期に羽生を育てていた阿部奈々美氏の手腕には感服せざるを得ません

  「阿部氏は、羽生結弦のプログラムの振り付けもおこなっていました。振り付けの現場を通して、ジャンプやスピン、ステップと同じくらいの重要な『何か』を、羽生結弦に染み込ませた人……。私は阿部氏を、そんな方だと思っています

 →→高山さんは、この「パガニーニ」の羽生君を見て、「大人になったとき、どんな曲であっても『自分のものにする』ことができる選手になるはず」と感じたといいます。

 私は、それに反論するつもりはないですが、昨日も言ったように、この09-10シーズンは、このパガニーニと、完全にロックの「ミッション・インポッシブル」を選んだことに、どうしてこの組み合わせに至ったのか?と不思議に思いました。

 羽生君のwikiのプログラム一覧を見ていくと、奈々美先生は、この「MIのテーマ」に限らず、U2とかドアーズとかジャスティン・ビーバーとか、海外のロックを積極的に採用しています。ちなみに羽生君は、先シーズンの09年2月の世界ジュニア(ブルガリア)に向かう機内で、奈々美先生からプレゼントしてもらったiPod(『王者のメソッド』28~29頁)で好きな音楽を聴いていたといいます。

 ならば、奈々美先生は、羽生君が日常的にどんな音楽を聴いているか絶対に把握してるよなぁ・・・という所から、「フィギュアスケートの王道曲・定番曲を押しつけない指導」というものも考えていたんじゃないかと。ただ、その多くがEX用だったのに対して、このMIはれっきとしたSP用ですから、その決め手は何だったのか。

 『蒼い炎』や『王者のメソッド』をめくってみても、この辺りの経緯は書かれていないので、個人的に興味があります。奈々美先生にいま取材に応じてもらうのは難しいでしょうから、誰か当時の状況を羽生君に聞いてほしいと思います。



 ちなみに、私自身、「MIのテーマ」というと、キアヌ・リーブスの映画はもちろん知っているんですが、曲自体は、このLimp Bizkitのカヴァーの方を先に聴いていたような記憶があります。学生の頃、幕張でライヴを見たこともありますが、あの会場で暴れていた迷惑な客も、いまはいい歳のおじさん・おばさんになってるんだろうなぁ・・・。

 では、また明日!

 Jun

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 女子のフリーの滑走時間が24日(土)の「2:30~6:25」と間に合わないので、一本別の記事を書くことにします。

 「別」とは言ってもワールドと無関係ではなく、高山真さんの分析をヒントにボーヤンを再評価してみようという主旨です。



 それにしても、昨日の4TのUR判定はひどかったですね。あれより回転が足りなくてもセーフの判定になったクワドなんて何十本も見てきとるわ!と言いたいです。

 たしかに、フェンスギリギリの着氷だったけど、ジャンプの回転自体は足りてるでしょ?という話なんです。これは恥ずべき、完全な誤審ですよ。こういうものも含めて、早急にAI導入を願います。どんなに良いカメラで録画したスロー映像があったとしても、最終決定を下すのが人間である以上、そこに個人の主観が入ってくるわけですから・・・。上の動画も、フジの魔の手で削除される可能性がありますが、英語コメも概ね同情的です。

 おそらく英語圏の方は忘れていると思いますが、私自身が、ボーヤンに対して「気の毒だな」と思った最初のジャッジは、2017年札幌冬季アジア大会でした。

 さて、高山さんはボーヤンをどう見ているのか?以下にご紹介します。

  「非常に高く、回転軸も確かで、着氷の流れも素晴らしい4回転ルッツがトレードマークになっている選手。また、前シーズンにあたる2016~2017年に、『大化け』をした感があります。私はこのシーズン、すべての男子選手の中で、いい意味でもっとも驚かされたのはボーヤン・ジンでした。その理由は、これに付きます。『ボーヤン・ジンが、演技を覚えた』

  「2016年の世界選手権のSPと、2017年の世界選手権のSPを見比べる機会があったら、ぜひチェックしていただきたいと思います。2016年の演技が、『音楽に合わせて体を動かしている』とするなら、2017年は、『曲の世界観に沿った振り付けをこなし、物語の登場人物を演じている』という感じ。曲が流れている時間のほとんどで、2016年の段階ではボーヤンの中に存在しなかった『スイッチ』を、ずっとオンにしたままで滑っているのが明確に見て取れたのです。2017年の『スパイダーマン』は、前シーズンのボーヤンとはまるで別人です」

 思ったよりも「普通の感想」で意外でした(笑)。16-17シーズンから「化けた」最大の理由は、私が指摘するまでもなく、昨季・今季のSP・フリーの4つのプログラムをローリー・ニコルが振付していることですよね。本書のボーヤンの解説部分にローリーの「ロ」の字も出てこないのは不思議です。

 そして、ローリーがプログラム用に編曲する場合、良く言えば大胆、悪く言えば唐突な作りになるのが、彼女の近作の特徴と思っています。同じくローリー振付のネイサンの今季フリーの「小さな村の小さなダンサー」も、「春の祭典」のおどろおどろしいパートがいきなり切り込んできますよね。

  「ただ、少し気になるのはフリーの曲です。コレオシークエンスで使われている『スター・ウォーズ』のカンティーナ・バンドの音楽(チャールストン風の軽快な音楽です)と、前後の重厚な音楽とのバランスが極端すぎるように感じてしまって……。前シーズンの『道』が非常に素晴らしいプログラムだったので、『この曲編集では、ボーヤンのよさをいかしきれないかも』と危惧する部分もあります。ただ、これもネイサン・チェンと同じく『いまはまだ「まとめ」に入る時期じゃない。本当のピークは北京オリンピック』と考えた末の、高いハードルかもしれません」



 あのコミカルパートに違和感を感じるのは、いたって普通の感覚です。ネットの実況板でも「ひでぇ、編曲」という書き込みを私は何度も見ました。だからこそ、高山さんほどの博識をお持ちの方がそう解釈することが新鮮でした。

 上記のように、ローリーのスタイルを考えれば、いきなりコミカルパートが入るのも不思議ではないし、私自身は、こういうパートこそが「スパイダーマン」や「道」で開花したボーヤンの新たな才能だと思っているので、むしろ大歓迎ですね。

 そもそも「惑星~スター・ウォーズ」のシリアスなプログラムは宮原知子ちゃんで見ているし、ジュンファン君もやってたし、そんな感じで曲かぶりがけっこうあるので、大胆な解釈があってもいいと思います。

 上に貼った1月の4CCで優勝した時と同等のフリー演技ができれば、つまり、ジャンプさえ決まれば、今回のワールド優勝に最も近いのは彼でしょう。コリヤダはそこまでクワドの本数は増やせないし、宇野・ネイサンの両選手は本調子からは程遠い。

 ショートではジャッジからの「思わぬ横やり」が入りましたが、ぜひ平常心で頑張ってもらいたいです。

 では、また明日!

 Jun

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