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 Life最新号の続きです。バックナンバーのレビューは「こちら」。

 羽生君の記事をチェックした後に、真っ先に読み始めたのが、中野園子コーチのインタビューでした。三原舞依ちゃんと坂本花織ちゃんのお師匠さんで、五輪代表争いを演じたトップスケーターを同時期に二人育てた彼女は、いったいどんなコーチングをしているのか。どんなお人柄なのか。外見の雰囲気から、女性政治家とか校長先生のような、タフで厳格そうな印象ですが、プロフィール紹介とインタの冒頭部分にはこんな意外な一文がありました。

  「最近やっと、もしかしたら自分は強いのかなって思い始めました。今までは、結構打たれ弱いと思っていて。人見知りですし、子どもたちと一緒なら大丈夫なんですけど」

  「2000gくらいで生まれて身体が弱くて、学校では体操も掃除も免除されるくらいだったんです。小学校4年生頃から元気になっていったので、日光に当たらないスポーツならとスケートを始めました

 ははは・・・インタビュー用かな(笑)と思いつつ、しかし、このご時世なら、こんな「健康目的」というような理由でフィギュアスケートを始める子どもは皆無でしょう。怪我は多いしお金はもかかる。しかも、女子の場合は体型変化の問題もあるし、できるだけ早く始めないと戦えない。本人に相当な強い意思と覚悟があって、しかもはっきり才能が無いと、とてもじゃないけど親御さんも首をタテには振らないんじゃないでしょうか。

 さて、以下に、気になる部分をピックアップしてみました。

 (1)チームの規模と練習の形態

 ―― 仲のいい中野コーチとグレアムコーチ、そしてもう一人のコーチと合わせて3人で、現在は40人ほどの生徒たちを教えている。

  「他の先生のところとは違って、うちは塾だって言っているんです。マンツーマンの家庭教師じゃなくて、団体の塾。クラス分けはありますけど、練習は団体で行うことが多いので、幼稚園の子が大きなお姉ちゃんと並んでやっていますね。うちは、スケート以外でも、年上が年下の面倒を見るんです。年上へのタメ口も禁止ですし(陰ではわかりませんが)、合宿では小さい子のお風呂の面倒も見るし、朝も起こします」

  「こういう団体の練習をやっているところは、最近では少ないですね。リンクの事情から練習枠が1枠しか取れないことが多いので、団体で練習することになったんです。子どもたちには、自分の目で見て覚えなさい、って言っているんです。周りを見て覚えなさい、って。たくさんのことを教えすぎると、集中力を欠くことになりますから。(現役時代は、月2回のレッスン以外は基本的に自分で練習していたことから)自分の身になることって、自分で考えてやってきたものが多いかなと思っているので、選手が自分で頑張って進化していかないと、と考えています」

  「それと、月謝をあまり高くしたくないので。月によって貸切の回数も時間も違って、それぞれ計算するので金額は変わりますけれど、月に何回来ても月謝は変わらない。もちろんすごくお金をかけようと思ったら個人レッスンをいっぱい取ることもできるけど、最近は人数が多くて、放課後は、一人につき10分以上は難しいので。・・・そんなには払えない子でも、才能があれば練習できる環境なんです。だからみんな練習に来ちゃうので、今は、新しい生徒がなかなか取れません。・・・今のホームリンクはポートアイランドスポーツセンターなんですけれど、冬はポートアイランドと尼崎スポーツの森、夏は西宮に行っています。氷の上に立っている時間は日によって違いますけど、長い時間で6~7時間、短い時は2~3時間です」

 ここで一度切ります。五輪代表選手を育てるようなコーチでも、リンクのスケジュール管理とか月謝の計算とか、全部手仕事でやってるんでしょうね。子どもたちが学校に行っている時間帯に、このような事務作業を行っているのでしょうか。

 興味深いのは、マンツーマン指導をみっちり長時間やればいいというものではないという点。「自分の身になることは、自分で考えてやってきたものが多い」というのは金言ですね。

 私も、TOEIC対策の参考書や問題集を解いていて、「こんなの出ないでしょ」という部分がけっこうあって、自分の受験経験から「覚えるべき部分と手抜きする部分をアレンジ」することがあります。実は、参考書の中でいくらデカい文字で「ここは出る!」と書かれていても、所詮それは「他人が言ってること」だから、なかなか記憶に定着しないんです。自分で実際のテストで「痛い目」を見て、その経験を持ち帰って、しっかりミスの原因を自問自答しないと、私の場合は身につきませんね。

 (2)曲かけ練習時の「ミス止め」の意味

 ―― 三原、坂本両選手がブレイクしたのには、ミスのない演技をたびたび見せたことも大きかった。これは、中野チームの練習方法にヒントがある。自分の曲かけ練習の途中でミスしたら、そこで曲は打ち切られる「ミス止め」システムを採用しているのだ。

  「貸切の時間が少ないからですね。だから毎回すごい緊張感です。でもそんな中で、舞依と花織は、全日本に出だしてからわりとプログラムの最後まで曲をかけることが多いですね。でも小さい頃は、思い切っていくので、よく一番最初の難しいジャンプで派手に転んでいました。最後までかけられる子が、やっぱり上に上がっていきますね

  「最後までかけられる子とかけられない子との差は、できることをプログラムに入れているかどうかということです。できないのに見栄を張って入れている子もいるけど、そういう子はミスしてしまう。だから、練習でできるようになってからプログラムに入れればいいんです。練習でできないものは試合でもできないですから。そういうことも自分で考える。もちろんミス止めしない日もあるので、難しいものはそんな日に挑戦することもできますから。とはいっても、試合の時には音楽は止まらないですからね」

 このチームの練習方法で有名な「ミス止め」は、単にトレーニングに負荷をかけるための工夫ではなくて、「リンクの貸切が限られている」という、必要に迫られてのことだったんですね。

 ただ、貸切が限られていたり、マンツーマン指導が少ないことがマイナスではなく、それ以外の時間で「しっかり自分で考えさせる」ということに重点を置いている。

 ふと、羽生君のリハビリ期間の「徹底したイメトレ」が頭に浮かびますが、いつどんな怪我をするか分からないし、日頃からそのような「癖」をつけておくのは大切なんですね。

 大事な試合でノーミスするために必要なのは、とにかく長時間負荷をかけるような練習の量なのか、あるいは集中力と緊張感を鍛えるような練習の質なのか。今後そのようなトレーニング面の話題の中心になりそうなのもやはり移籍後のメドベですけど、これはホットなテーマの一つになりそうです。

 (3)舞依ちゃんと花織ちゃん

 ―― 結果として、坂本選手が五輪出場を決め、三原選手は行けないことになったが、コーチとしては複雑な気持ちになったりはしなかったのだろうか。

  「舞依は、四大陸出場をもらえて良かったです。何ももらえない子もいるんですよ。たまたま全部できたから今回花織は五輪をもらえた、舞依は去年は全部できたから世界選手権をもらえたけど、今年は失敗したからもらえなかった。ただそれだけだよね、ってことです。悔しかったら来年全部やればいいんですよ。という話は、試合後にしました。仲間が行ってすごく悔しいでしょうけど、それがまた成長につながります

  「(試合で教え子たちがリンクに向かう時)最後、伝えられることは一つしかないですから、何を言おうかと考えると大変ですね。最後に力が出るようにと思って、毎回違うことを言うようにはしています。とはいっても、その時に思ったことを言いますけどね。フィギュアスケートは、ある程度の練習は大事ですけど、最終的にはメンタルが左右しますから、一緒に滑っているよ、という気持ちをできるだけ与えたいと思っています

  「辞めた後も、スケートを続けていたことがちゃんと活きるようにはしたいので、礼儀とか人に対しての態度とかにはうるさいです。全員が五輪に行けるわけでもないですし、せっかくスポーツをやっているんだから、何か少しでも活きてくれればと。それから、怖いけど先生がいないとつまらないな!という存在でいたいなと思っています。練習中は私語厳禁で厳しいですけど、一緒にいて楽しくない人に習いたくはないと思いますから。ついて行きたい人についていくべきだと言っていますね。そんなこと言って、帰ったら誰もいなかったりしてね、ふふふ」



 舞依ちゃんや花織ちゃんを送り出す時、中野コーチはいつも背中越しに言葉だけをかけて、背中をポン!ですよね。実は、あのような送り出し方って、世界的に見てもこのチームだけじゃないかと。それはなぜなのか、今回の聞き手の長谷川仁美さんに突っ込んでほしかったですね。

 私の推測ですが、教え子の緊張した表情を見てしまうと、自分がかけようと思っていた言葉が土壇場でブレてしまうか、あるいは、逆に自分自身がいつもと違って緊張しているのが表情に出てしまっていたら、それが教え子にも伝わってしまっては、演技に悪影響を与えてしまう・・・、そんな配慮があるのかもしれません。たしか、ブライアンは、「どの試合でも同じ振る舞いをするように努力している」と語っていました。

 中野コーチの生い立ちの部分等は、省略しました。そちらも含めて読み応え十分の内容ですので、ぜひ書店で全文読んでもらえたらと思います。

 では、また明日!

 Jun

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