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 第3章については昨日の記事で少し触れたので、それ以外の部分を軽くご紹介します。

 第1章「平昌五輪の代表を決める激闘のプロセス」は、一言でいうと、「うまくまとめたもんだなぁ・・・」と感心しました。

 五輪シーズンとはどういうものか。シーズン中の主要大会の仕組みを解説するとともに、スケーターがどのような狙いを持って過ごしているのかを、中野さんご自身の体験を巧みにハメこみながら説明しているので、飽きさせない内容になっています。フィギュアスケート専門のライターがこういう解説記事を書いても、実体験に基づかないので、私だったらダレてしまうでしょう。

 例えば、中野さんはプログラムの選曲を自分から提案したことはないそうで、佐藤久美子さんやマリーナ・ズエワにお任せしていたと言います。それでも、どうしても「曲に乗り切れず、演技に入り込めない」ことはあったようで、「シーズンが始まる1ヵ月前に急遽、曲を替えて、プログラムを作り直した」こともあったとか(51~52頁)。

 「急遽曲を替えた」といえば、本田真凜ちゃんですが、いままさに彼女がSPをお願いしているマリーナについて、中野さんはこう語っています。

  「私の振り付けをしてくれたズエワ先生は、柔軟な考えを持っていたので、『ジャンプを跳べないと意味がない』と、現実的に演技がどう完成していくかを重要視してくれました。ですので、ジャンプが跳びやすいように振り付けの一部を変更することも受け入れてくれました。ジャンプに入る前のステップを少し変えるだけで、ジャンプがスムーズに跳べることもあります。ズエワ先生の考えで、随分と助けられました」(60頁)

 こういう人柄ならば、真凜ちゃん陣営の急なお願いも快諾してくれそうですね。良プログラムを期待できそうです。

 他には、衣装について、ああ、やっぱりか・・・と思ったのが、このくだりです。

  「クラシックバレエにピッタリくる白の衣装は、氷のリンクが白いフィギュアスケートでは同化してしまい、存在感を際立たせることが難しいのです。・・・羽生選手も(2016/17)シーズン序盤は白を基調とした衣装で滑っていましたが、NHK杯からは薄い紫が基調となる衣装へチェンジしました。白は膨張色でもあるので、体のラインを少しでも細く見せたい女性スケーターにとっては難しい配色です。私自身、白い衣装にあこがれはあったのですが、現役時代にはほとんど着る機会がありませんでした」(64頁)

 女性スケーターで白い衣装というと、三原舞依ちゃんの「タイスの瞑想曲」がまず浮かびましたが、あれはEXですもんね。

 ちなみに、本書でも「青が演技のいい勝利カラー」という点に触れられていますが、中野さん自身のラッキーカラーは赤だったようで、赤やオレンジを多く使ったそうです。

 第2章「試合に臨むための心意気」では、大学進学とともに新横浜の佐藤信夫コーチに師事し、ここでは、佐藤先生のお人柄や指導方針についての記述が印象的です。

 ほかに、「どの滑走順がベストか?」という話題で、中野さん自身は「あくまでも私の感想」と但し書きをしたうえで、「2番がベスト」と主張していますね。

 1番滑走の場合、6分間練習自体の内容を省略しなければならず、不安を抱えたまま演技に入ることもあったようです。フリーで3番滑走だと、6連から15分は待つことになり、シューズの紐を締めっぱなしだと足が痛くなるし、でも緩めてしまって6分間練習の感触が変わったらどうしよう?、と悩ましいようです。

 4番滑走だとスニーカーに履き替えて、陸上でウォームアップ。5番だと一度休んでから、陸上のウォームアップ。最終滑走だと、6連での氷の感触のことは忘れてしまうとか。

 したがって、2番滑走だと、6連で思う存分滑れると同時に、氷の感触が残ったまま演技に入れるので、「ベストである」と。ここまで丁寧に一つひとつ理由を挙げられると、説得力があります。

 羽生君自身が「2番は苦手」と語っていたことは、SEIMEI振り返りでも触れましたが、他の滑走順についても、後半の滑走順だとライバルの状況を見て構成を替えられることもできるし、それぞれメリット・デメリットはあるようです。

 第4章「私が見たスケーターたちの素顔」では、上に貼った目次にもあるように、真央ちゃん、美姫ちゃん、大ちゃん、あっこさん、小塚君とのエピソードが語られています。

 ここでのスタンスは、「自分が直接経験したこと」をどこまでも正直に、素直に回想するという感じです。私もまったく知らなかった逸話が随所に出てきますが、特に美姫ちゃんとの交流については、二人のキャラの違いから意外な組み合わせでした。間違いなく、この章に、彼女の「色」が一番出ていますし、5人のレジェンドの中でも、特に好きなスケーターがいるならば、ここは必読です。

 最後に、本書の「おわりに」の部分で、ズシンときた記述がありました(252頁)。

  「本書の中でも紹介させていただいた同世代のスケーターは、私にとってかけがえのない大切な仲間です。だけど、彼らや彼女たちと私の違いは、私だけが五輪に出場することがかなわなかったことです

  「両親を五輪の舞台へ連れていくことが夢でもありました。悔しさから素直になれず、両親に『こんな風になるなら生まれたくなかった』と言い放ち、困らせてしまったこともありました」

 特に第3章での冷静な筆致からは想像もつかないエピソードに、よくこれを書いてくれたなぁ・・・と感激しました。

 これは私の憶測を込めて言いますが、中野さんは、フジテレビの社員とはいえフィギュアスケートの仕事をやっているわけでもなく、もちろんフィギュアスケートの解説業やライター業のようなこともしていないからこそ、「大人の事情でこうコメントせざるをえない」なんてこともなく、発言を捻じ曲げられることもありません。だから、本書はのびのびした内容に仕上がったのかなと思います。

 この本を読んだだけでも、中野さんの頭脳明晰さは即座に分かるし、すぐにでもトップクラスの解説やコメントができそうな気もする反面、そうなるときっと「嫌な圧力」がかかってくるんですよね・・・あぁ、いやだいやだ。

 いい本です。私は大好きな本ですね。これから折を見て、彼女の現役時代の演技を、YouTubeでいろいろと漁ってみようかなと思います。

 では、また明日!

 Jun

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