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 2018年5月1日発売。税込み価格「1,728円」。

 アマゾンのレビューでは、「幼児向け」などと酷評されていますが、その方々はこの本の価値をまるで分かっていません。もちろん、私も書店で本書を手に取ってみて、「字、デカっ!」「漢字にルビが振ってある!」と内容については半信半疑でした。

 ところが、本書を読んでいて感心したのは、その簡潔かつ明快な文章。そして、フィギュアスケーター羽生結弦という部分だけでなく、羽生君の人間的な魅力についても、いっさいの偏見なく、しかしファン目線に陥ることもなく、リスペクトに溢れた筆致で綴っています。

 「子ども向け」と思って読んでみると、情報はギッシリ盛り込まれていて、侮れません。

 例えば、第一章の「66年ぶりの連覇」では、平昌五輪での演技内容だけでなく、空港到着時のフィーバーの様子からフォロー。故障したN杯後のリハビリ中に、「調整法を学ぶために、運動力学、生理学、心理学を研究した」点など、競技面以外の羽生君にもしっかり光を当てています。

 著者はフィギュアスケートの専門家ではないので、時折紹介されるマメ知識的な情報も興味深い。ディック・バトンさんに触れた後、例えば、「冬季競技で五輪三連覇」を果たした選手も紹介しています。冬のオリンピックの第一回大会は1924年のシャモニー大会(フランス)なんですが、それ以前は、冬の競技が夏季オリンピックで行われていたのです。つまり、夏1回・冬2回の3大会連続で優勝したということです。

 第二章「羽生結弦 誕生」では、1994年当時の日本の時代状況にも触れています。94年生まれのアスリートについては、大谷選手や萩野選手などがよく言われますが、この年は、横綱貴乃花が6場所のうち4場所で優勝していたり、向井千秋さんがスペースシャトルで宇宙に行き、大江健三郎さんのノーベル文学賞受賞などがありました。

 第三章「ジュニアからシニアへ」では、ちょうど震災の状況が記述されています。ただ、「困難にめげずに頑張った」という話でお茶を濁さずに、「被災地のために自分が頑張っているのではない。むしろ自分が、被災地で頑張る人たちから元気をもらって、支えられている。しっかり演技することがその恩返しになる」という、当時スケートを続けるべきか悩んでいた時の、羽生君の「心境の変化」をしっかり押さえています。

 ゆづファンなら知っていることばかりですが、彼のことをよく知らない人に、このような話を説明するのは簡単ではありません。この著者は、もともとは中日新聞東京本社(東京中日スポーツ)の記者で、夏季五輪(ソウル、バルセロナ、アトランタ)、冬季五輪(アルベールビル)を取材した経歴の持ち主。年齢は1950年生まれと、私の親の世代です。

 その年代の方の割に(と言っては失礼ですが)、羽生君に関するさまざまな文献を読み込み、羽生君のみならず、都築先生や奈々美先生の発言もしっかり押さえて、執筆する上でキャッチしておくべき情報の選別が非常に優れていると思います。この経歴に、正直「ちゅうにちぃ?」って感じたのですが、東京で仕事をしていた方なので中京方面の偏見が無く、フィギュアスケート村と「どっぷり」ということもなく、だから視点がフェアなのでしょう。

 ゆづヒストリー本で、すばやく読めて記述も正確という本は、なかなか無かった気がします。『メソッド』は野口さんが話をこねくり回しすぎてるし、『蒼い炎II』は半分インタビュー集で、羽生君の神経質な所も垣間見られて、けっして初心者向けではない。『夢を生きる』ではもっとヘヴィなやり取りもあるし・・・。

 そうそう、日本語を勉強中の外国人のゆづファンにもプレゼントしたい一冊。自分もこういう柔らかい口調で、文章を綴りたいものだなぁ・・・という自戒も込めて、ブログのクオリティアップを心がけたいと思います。

 では、また明日!

 Jun

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