IMG_0500

IMG_0501



 2018年1月24日発売。税込み価格「1,620円」。いとうやまねさんの著書・エッセイについてのレビューは「こちら」で。

 本書の出版時期といえば、羽生君が平昌オリンピックに出場するかどうかさえ不透明という状況でした。だから当時の私は、「よし、読むぞ!」という気にはなれず、「いつか読もう」という感じでしたね。結果的に、五輪連覇を果たし、一連の素晴らしいイベントを経て、いまこの本と向きあえるというのは、本当にハッピーです。

 本書は、羽生君のプログラムの解説に限っても、パリ散、新ロミジュリ、バラ1、SEIMEI、レックレ、ホプレガ、スワンと、ソチ以降はほぼ完備されており、他のスケーターのプログラム解説もたくさん収録されているので、持っておいて損は無いと思います。

 で、パラパラとめくっていて、「おっ!」と思ったテキストが2本あって、ひとつはプルさんのニジンスキーの解説。もうひとつは、「The Final Time Traveler」についての短いコラムでした。ニジンスキーは明日見ていく予定ですので、今日はトラベラーの方をご紹介します。

 トラベラーについて基本情報を確認しておきます。なぜこの曲を14-15シーズンのEX用に使用したのか、実のところ私は、羽生君自身の考えをくわしく知らないのです。ウチにある書籍・雑誌をザッと見てみると、『メソッド』や『蒼い炎II』には記述が見当たらず、まず目を引いたのは、「Days Plus 2014 August」の中の、新潟FaOI(14年7月12・13日)のレポでした。そのショーで羽生君は、サラ・オレインさんによるこの曲の生歌をバックに滑っています。

 羽生君は、その年の夏のショーでは、6月の幕張FaOIで、郷ひろみさんとのコラボで「言えないよ」を披露。同月仙台でTOIを開催。別府のショーでは「ホワイトレジェンド」と「言えないよ」。DOIで、バラ1お披露目。前述の新潟FaOIは、時期的にその後になります。

 もともとこの楽曲は、2012年発売の「タイムトラベラーズ」というアドベンチャーゲームのエンディングテーマでした。その曲に歌詞をつけて、サラさんが歌うことになりました。ちなみに、本書の中で、「羽生本人が好きなゲームだという」と書かれています。

 本書のコラムのために、いとうさんは、わざわざこのゲームを約2日間ぶっ通しでプレーした上で、ゲーム・ディレクターのイシイ・ジロウ氏に取材。で、サラさんが歌うまでの裏話がけっこう込み入っているのです。

  「まず、イシイさんのシナリオをもとに、作曲家の坂本英城さんが曲をつくった。そこにイシイさんが(ゲームの主人公の)少女の視点で『散文詩』を書いた。それをサラさんに渡して『英訳』してもらった。さらにサラさんが『英語の歌詞』としてつくりこんだ。今度はその『英語の歌詞を和訳』してもらい、イシイさんが『日本語の歌詞』に改良した。この時点ですでに5工程である。ちょっとした伝言ゲームである。(この曲には)さまざまなバージョンがあり、英語もの、日本語もの、まじったもの、羽生選手が演じたロングバージョンなど。インストものはさらに多い

 このゲームにまつわる「背景」については、イシイさんの以下のツイートをご紹介しておけば、十分ですね。





 イシイさんが言及した14年ファイナルのEXを。この動画が画質では最強かもしれません。約3年半前の映像ですから、羽生君もハビも、さすがに今より顔つきが子どもっぽいですね。

 いとうさんはコラムの中で、羽生君のトラベラーでの滑りをこう評しています。

  「うつむきながら静寂のときを置くと、羽生はゆっくりとピアノの音に身を委ねる。その表情は穏やかだ。海の底を思わせる照明が、氷の白を青く染める。アイスブルーのドレープをまとい、飾り花と散りばめられたストーンが、滑りと同期して光を放つ」

  「力強いキャメルスピンにはじまる、羽生の多様で繊細な回転は“逆行する時の流れ”や時計の針を想起させる。(ゲームの)本編では、文字盤が左回転しながら不思議な光を放つ、近未来的な腕時計も登場する」

  「時を経て、エンディング曲を東日本大震災の被災者であるスケーターが演じることになった。そして、その振り付けを担当したのは、イシイと同じく阪神淡路の当事者である、宮本賢二だった。この演目には、あらゆる感情を包み込む、慈愛に満ちた表現を感じる。例えばだが、誰も知り得ない『時間軸』で3人は繋がっていたのかもしれない

 さすがプロのライターさんです。私が付け加えることはありません。

 ここ最近は、CWWで採用されたプログラムに私ものめりこんでいたんですが、羽生君の演技は、すべてのプログラムが手抜き無しの名演揃いです。また機会があれば、EXプロも皆さんと一緒に見ていきたいです。

 では、また明日!

 Jun

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村


フィギュアスケート ブログランキングへ