JGPスロベニア(男子SP)感想

JGPスロベニア(男子SP)感想

リザルトは「こちら」。フィギュアスケート速報さんは「こちら」で。6日(土)は記事を書く時間が取れないので、5日(金)に執筆しています。すでに男子は最終順位が確定していますが、ご容赦ください。途中までライストで見ていたので、滑走順に見ていきます。

今季からクリケットに加入したコンラッド君。第2戦オーストリア大会ではSPで首位ながらフリーで崩れて4位に終わりました。その試合は、1位プルキネン、2位が島田君でした。73.24で5位。ルッツの軸が完全に傾いていましたけど、よく転倒もなく3Tをしっかりつけられたものです。フリップのアテンションでスコアもやや伸びませんでした。大柄な選手なのでエレメンツの一つひとつをコントロールするのが大変そうで、傍から見ていて、パワーを持て余している感じがありますね。

島田君。73.48で4位。このツイートの通りでジャンプはやや不安定だったんですが、転倒までには至らず、しっかりまとめきれる所が、彼の成長の証ですね。技術・表現の面で、ランビ先生の指導の下、めざましい進化を遂げていますが、フィジカル面もかなり強化されているんだと思います。

Twitterを見ていると、急速にファンを増やしているようですね。私自身は、2015年頃までの見かけが完全に子どもだった時代の彼を知っているだけに、たくましい大人の男へと成長していくのを見て、なんというか親が子どもを見るような視点で眺めてしまいます。

カナダ大会優勝のグメンニク。彼の演技は、よい意味で女性っぽくって、つなぎや振付が女子のシングルスケーターのような感じで作られていて、それを難なくこなしている所が個性的だと感じます。

音楽は「ズンチャカ・チャコポコ」していますが、ジャンプの前後も細かい振付が入っていたり、技の数は豊富です。しかし、プロトコルを見て意外だったのは、ジャンプの加点が渋いということなんです。3Lz-3Tは勢いがなくて何とかセカンドをつけた感じでしたが、冒頭の3Aが+0.91というのがよくわからない。「タケノコも効果なくね?」ってぐらい、反映されているのかどうか。

でも、何だかんだで首位で、しかも彼はフリーも強い。カナダ大会のフリーでは150点台を出して、樋渡君と鍵山君をごぼう抜きして優勝したので、今大会も優勝候補の筆頭と言えると思います。

グメンニクで力尽きて寝落ちしたので、ここからはライストではなく、アップされた動画の感想です。ロシアのダニエリャン。69.30で6位。今年の世界ジュニアではイェロホフに次いで銀メダルを獲得。まだ14歳の選手です。なぜこの強豪が6戦目まで出てこないか不思議だったんですが、どうやら怪我をしていたようですね。

この若さにして、巧いなぁ・・・と感心して見てしまいますが、器用すぎてダイナミズムに欠けるというか、それがメリハリの無さに見えてしまうのか、思わずボーっと見てしまいます。島田君のように良い意味で「ハラハラドキドキさせられる感じ」があまりしません。もちろん、そんな超主観的な要素がスコアに反映されるわけがなくて、完全に好みの問題です。

ステップがレベル2だったのはやや意外。アイスカバレッジの問題でしょうか。フリップはアテンションではなくエラーがついていて、この減点が響きました。PCSも意外に伸びません。キスクラにブヤノワコーチがいましたが(てっきり、ソツコワちゃんに同行して埼玉にいるものだと!)、スコアを見て、「はぁ?」とビックリしていました。

イスラエルのゴロニツキー。初めて見る選手です。オーストリア大会で7位でしたが、74.66のSP3位と躍進。それもそのはず、冒頭の3Aが素晴らしいです!「うぉっ!」と思わず声が出ました。これは、GOE+2.63がついて当然のクオリティです。助走は短いし、スパっと決めて、すぐにスケーティングに移行。「なにこの人?」とビックリです。17歳にしては老け顔なのもありますが、ジュニアの3Aではありません。しかし、こんなに凄いジャンプでも、J2の「+5」もあれば、J9の「+1」もあるというバラバラさ。これは実に興味深いサンプルです。

ただ、3Lz-3Tは軸が傾いていてアテンションもつきました(+0.08)。単発の3Fもやっぱり軸が傾いて、それでも+1.29がつきましたが・・・。「クワドよりも3Aの方が苦手」という海外選手はシニアにもたくさんいますけど、「3Aは得意で他のトリプルは微妙」という選手は、ちょっと思い浮かびません。ショート番長とかフリー番長なんて言葉がありますが、この選手は「3A番長」なんでしょうか?フリーをノーミスできそうな雰囲気は無いですが、どうなることか。

カナダ大会2位の樋渡君。もちろん、ファイナル進出の可能性の高い実力者です。冒頭から全身を大きく使った振付が印象的。カナダ大会よりもダイナミックに見えます。こういう演技を見ると、身長やスタイルなんて関係ないよな・・・と思います。

全体的にシャープな動きで、ステップはレベル4の+1.17という高評価。それだけに、3Lz-3TのセカンドトウのUR&お手つきはもったいなかったです。このミスが無ければ、間違いなくSPの首位は彼でしたね。

土曜日の朝には最終順位が判明していますが、どうなっていることか・・・。島田君は2位以上でファイナル進出は(たぶん即)確定。3位だと第7戦の結果待ち&多少条件がつきます。でも、この強豪の中で、2位どころか、3位に入っても、えらいことですよ!

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. ごろ寝 より:

    こまめに感想を綴ってくださって、ありがとうございます。
    ほとんど見られないので、動画付きの記事は感謝しかありません。今更ながら、手間がかかりますよね?

    ほぼ同意です。私的には、ゴゴレフ君と共に、ダニエリャンくんも北京までの成長に期待大。島田くんは、フリーレッグの捌きが気になりませんか?もう少しスムーズに流れてもいい。樋渡君の振り付けも確かに良い。でも、やっぱりスタイル大事な気もします。短めの腕や脚の動きが雑なように見え、スピンの軸足のラインも残念。年齢もかなり上だったと思うのですが、これが彼の個性なのでしょうね。

    グメンニクの3AへのGOEの渋さ、同感です。
    JOを動画だけ流し見しました。ハビ以外、ジャンプ助走が長くないですか?助走の印象が残りました。それでも4や5が並ぶ。フィン杯のコリヤダの3Lz、3Aも4or5の評価、入りも出も単純なのに。入りや出の工夫は評価基準ではなくなったのでしょうか?
    助走が長くても、難しい前後が無くても、単体としてのジャンプへの評価としか思えない事例が多いと思うのですが。評価基準である幅と高さも比較の基準が「当人比」じゃないか?と考えてしまいます。

    これがジャッジ全般の新ルール解釈なら、敢えて難しくせず、GOEを積み上げた方が得策ですよね。B級や花試合だけで断定は無駄でしょうが、現時点では女子の構成の方が惹かれます。GPSが始まり、プロが出来上がってくれば変わるのでしょうか。

    • Jun より:

      ごろ寝さま

      「記事の手間」という点では、雑誌のレビューをしていた頃の方が作業時間はかかっていたと思います。リアルタイムで最新の演技をレビューできるのはやっぱり楽しいですよ。

      しかし、ごろ寝さんにこのコメントをいただいたのは2日前でしたが、「激甘採点」と言われたロンバルディア杯やフィンランディア杯があって、お祭り採点のJOがあって、そして極めつけの近畿選手権では、「ジャッジは親族を人質にでも取られているのか?」というぐらい不可解なPCSと、つくづく日本のフィギュアスケート業界もヤクザな世界だなと。

      まぁ、我々にとって、フィギュアスケートは単なる娯楽ですから、良い演技、素晴らしい演技、美しい演技だけを共有して、楽しむのみですね。

  2. sennin より:

    女子の結果も出ていて少々元気のない私です(笑)
    高志郎君は安心してみていられるようになりましたね!仰るようにフィジカル面強化しているのでしょうね?先日のインタ記事にスケートの練習は2.3時間、あとはダンスやトレーニングっていってたような。昨年の怪我は3Aの練習のしすぎだったとか、ランビさんが辛抱させたんですね。それが今の成長かと思うといい先生について良かったなあと思います。ジャンプもランビ指導らしいですけど大丈夫?スピンは先生のようになるにはまだまだですね。ランビさんから声をかけてもらったようですけどそんな事あるのですね?益々楽しみな選手ですね!

    グメンニク君はロシアの良さが随所にみれますね?日本人には足りない部分ですけど、凄い選手になりそうです。

    樋渡君は相変わらず体が柔らかい。滑りがシニアですもんね。来季に上がるんでしょうか?こんなこといってはあれですが日本でいう4頭身タイプですけどそれを感じさせないくらいの演技だと私は思ってます。URが残念でしたね!

    • Jun より:

      senninさま

      島田君の演技は、実はけっこうな頻度見返しています。演技の内容もいいし、曲もかっこいいし、そして容姿もいい。そうなると、すぐに4回転を要求する意見がありますが、かりに4回転を習得したとして、それを維持するのが大変だというのは、多くの選手の事例が証明しています。おそらく、ランビ先生はその辺りも視野に入れていて、習得する時期、試合で投入する時期を綿密に計算しているんだと思います。デニス君の構成を見れば、その指導方針はよくわかりますね。

      樋渡くんの体型は、最近の若い日本人よりもよっぽど日本人的な感じはしますが、日本でスケートをやっていたら、もっとジャンプ重視のスケーターとして育成されていたような気がします。てか、きっとジャンプがダメだと国際試合に派遣させてくれないでしょう。樋渡君は、身体の柔軟性を生かした様々な技が盛り込まれていて、「エンタメ」的にスケートを見せようという所が、プログラムから見受けられます。そこがまさに北米のスケートという感じですね。

  3. ととちゃん より:

    高志郎くんのアディオス、カッコいいですね。ファンが増えるのも分かります。
    私が初めて見たのは、野球プロだったような記憶が…。ニコニコと笑顔が印象的だった彼が、こんなに成長した背景には、外国暮らしや怪我の克服などがあるんでしょうね。

    グメンニク君、そう言えば女子っぽいかも。樋渡くんは演技が大きくて、引き込まれますね。外出中で、全ての選手を見切れていないのですが、いつも動画のアップ、ありがとうございます!

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      島田君の野球ユニ姿、私も覚えていますよ。友野君の「いぬのお巡りさん(の運命)」もそうでしたが、当時はスケーターとしての実力がまだ足りなかった「修行中の身」だったこともあり、佐藤操先生の奇抜なプログラムがちょっと浮いていた印象があります。

      でも、今や、島田君はランビ先生の影響を全身に受けて素晴らしい成長を遂げ、友野君はミーシャの振付も滑りこなす、男子若手の期待の星に成長。北京五輪の代表争いの中心に、間違いなく彼らも加わっているでしょうが、いったいどのように進化しているのか、今から楽しみです。