「惑星ハニューにようこそ」の「黒い山羊」(11.13)というエントリーで非常に興味深い指摘があったので、つらつらと語りたいと思います。
マッシさんをはじめとしたイタリアでの羽生選手に関する「声」を翻訳してくださっている、管理人のNympheaさんによる『プロローグ』横浜公演評を読んでいて、私自身「フィギュア村の常識は、世間の非常識」ということを、まざまざと再認識させられました。
私は以前から日本のアイスショーは時間ばかりが長く、内容が冗長過ぎると思っていました。アイスショーによっては新シーズンに向けて新プログラムを試行する場になっており、未完成の転倒だらけのプログラムを見せられたり、あるいは明らかに練習不足の元選手による難度を下げたゆる~い演技が続くと、正直退屈で、お目当ての選手の出番まで果てしなく長く感じます。
シーズン前に競技プロを人前で滑る機会を選手達に与える必要性があるのは理解出来ますが、それで高いチケット代を取るのはどうかと思うのです。例えば、音楽界では国際コンクールで入賞するなどの成績を収めてようやくお金を取ってコンサートやリサイタルを開ける、いわゆるプロの演奏家になれます(オペラやオーケストラの場合にはオーディションに受からなければなりません)。そしてそこから定期的にリサイタルを開いても採算が取れるようになるかどうかは、その演奏家にお客を魅了し続ける実力や創意工夫があるかどうかにかかっており、非常に厳しい世界なのです。おそらく、バレエなどの舞台芸術の世界も同じではないかと思います。日本のアイスショーにも羽生君を初め、プロ意識の高い素晴らしいパフォーマーは出演していますが、そこにアイスショーをシーズン前の慣らし運転の場と捉えている選手やプロ意識の低い練習不足の元選手の演技を混ぜることは、言ってみれば有名ピアニストのコンサートに学生による発表会レベルの演奏を混ぜるようなもので、音楽の世界では絶対にあり得ないことです。その意味で、日本のアイスショーのお客は舐められているのではないかと思う訳です。
私自身、その「常識」に毒されている一人で、『プロローグ』のライブビューを見た後に、ついツイートしてしまったのが、「これを当たり前と思っちゃいけない」という一言でした。まぁ、FaOIのあの長さを思えば、『プロローグ』はスパっと始まってスパっと終わった感があり、しかもライブビューの場合は、映画のような宣伝がほとんど無いので、すぐに始まりましたからね。一般的な映画よりもはるかに短く感じました。帰宅後、録画したCSを見返しても、やっぱりあっという間な感じがあり、おそらく編集作業もFaOIよりはるかにラクに終わっちゃうことでしょう。
べつに「長いことが悪い」と言いたいんじゃなくて、盛り沢山のコース料理でも「この揚げ物、明らかにいらないでしょ?」と感じる人もいれば、「たくさん食べられてお腹もいっぱいで満足!」と感じる人もいるように、感想は色々あっていいと思います。ただ、今回の『プロローグ』で、羽生選手は「誰も体験したことの無いもの」を提示してくれたので、これから他のアイスショーは大変だろうなぁ・・・と。義理堅い羽生選手のことなので、FaOIは来年以降も出るんだとは思いますが。
しかし、『プロローグ』の認知度は、あの素晴らしい内容には到底見合っていないと思うんですよ。横浜で2公演、八戸で3公演、有料CSで生放送、ライブビュー開催。従来のアイスショーを思えば、本当に手厚い努力がなされていますが、やっぱり「地上波」でやってくれないとねぇ・・・。でも、準備期間が半年足らずであれだけのものができたのだから、スタートとしては上々です。試行錯誤の部分もたくさんあって、羽生選手も大変だったかと思いますが、これからもっともっと大きくなると思うので、引き続き応援していきたいですね。
では、また明日!
Jun