
荒川和久著『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(2023年、ぱる出版)を読了しました。
何か商売をされている方とか、消費者行動の調査等がお仕事に関係している方は知っていて損の無い情報が盛り沢山です。本書の「はじめに」と「目次」はアマゾンの「サンプル」で読めますので、興味のある方はご一読ください。個人的には、マーケティングに直接関係しない部分、特に「ネットに揺さぶられる感情」に関する議論が興味深かったです。
ネットの普及でもっとも変化した環境とは、接触する情報量の増大だろう。新聞やテレビなどのマスメディアだけではなく、今やスマホが各人の「掌メディア」となっている。そうした情報過多の時代に人間が適応するためには、「感情」の力が重要になる。・・・感情に基づいて行動するのは太古の昔から人間はそうだが、現代はその感情の振れ幅が大きく、短時間の間にめまぐるしく動く。そして「好き」だけでは動かない。むしろ「嫌い」なものをあえて探してまで「自分の嫌いの感情の元を叩く」ことで安心する行動をしている。行動は意志では行っていない。感情によって実施した行動を脳は理屈付けして「正しい行動だった」と自己弁護しているに過ぎない。安心を求めるために、グルメサイトの星をチェックしたり、SNSの優勢意見に寄せていこうとするのもそういうことだ。(5頁)
インターネットが普及し、スマホを持つようになり、SNSのTLから情報が流れ込んでくる時代になって、「好き」「嫌い」「快」「不快」「喜び」「怒り」などの感情が常時揺さぶられる状態に我々が晒されていて、自分で「お気持ち」を表明するだけでなく、「安心」を得るために自分と似た意見をRPやいいねしたりする。でも、その「真っ当な正論」を発したポスト主が言及したり、リプライをつけているのが、「悪質」系のポストだったりするので、否応なく「嫌い」で「不快」なポストも目に入ってくる。結局、「不安」は解消されず、延々と関連ポストに脳内が侵食されることになる。例の「無断転載」の件なんて、まさにその典型だなと感じました。
・・・道を歩いていると、独り言のようにずっと「この野郎、バカ野郎、ボケが、カスが」と言い続けているおじさんがいる。テレビを見ながらずっと画面に文句を言う高齢者もいる。このように、悪口などを口に出していると、どういうことが起きるか。人間の脳は口に出された言語を自分の耳で聞いた時に、それは自分が言われた言葉だと勘違いする。そのため、罵詈雑言を発していると、脳は自分が罵倒されてると感じ、より一層ネガティブな感情になっていくのだ。(153頁)
ここでは声に出された悪口が一例として挙げられていますが、自分にとって「不快」なものを目にするだけでも、それに通じるダメージが脳内で蓄積される感があります。そういう「副作用」を自覚しながらネットと付き合わないと、ますます心が疲弊するなぁと感じました。
ちなみに、ポジティブな感情になるためには、「今日もかわいいね!」「大好きだよ!」などと日常的に声に出せることが大事で、お子さんやパートナー、あるいはペットにそのような声かけをすると、「自分が褒められているのと一緒」になるんだそうです。
じゃあ、独身でペットも飼えない人はどうすんの?と言うと、だから、「推し活」というものがあるんですね。さすがに、羽生君や藤井君に「大好き!」「かわいいよ!」なんてブログで言ったことは無いですが(笑)、「好きなもの」を持って、その好きな感情を意識的・日常的に発するというのはとても良いことなんだなと思います。
私の場合、メタルを聴いて、「よくこんなメロディ思いつくわ!」「ヴォーカルはただガナってるだけなのにだんだんクセになる!」「10分我慢して聴いていたら名盤だと分かった!」とか、これも「好き!」という感情表現の一つですから、自分の「心の平穏」「心の健康」のためにも、これは続けるべきことなんだな!と思いましたね。
では、また明日!
Jun
