読書雑談(顔に取り憑かれた脳)など

読書雑談(顔に取り憑かれた脳)など

「無いところに道を作ることを人は”偉業”という」

「元々五百年誰も成し得なかったことをやろうとしている。道など無くて当然ではないか」

「これまでもこれからも”あきらめる”という言葉は俺の中には無い!」

「キングダム」73巻で、秦皇帝の嬴政が部下で総司令官の昌平君にこう檄を飛ばしました。

趙の大将軍・李牧の策によって「連敗」し、30万の死者という大損害を出した秦。昌平君は「もはや中華統一のための戦略がありません」「斬首にしてください」と嬴政に言います。しかし、嬴政は「責任を感じているなら、戦略で返せ。”道”を作れ!」と激励するんですね。

「無いところに道を作る」と言えば、羽生結弦さんが私は真っ先に浮かびました。五輪連覇の方はいずれ誰かが成し遂げる可能性がありますが、プロ転向後の活動、特にワンマンショーで全公演ソールドアウトにし、世界規模でライブ配信までしている今この時こそ、「道無き所に道を作る」という表現がピタリとハマる気がします。

「キングダム」の単行本は現在75巻まで来ましたが、秦はまだ一国も打倒していない状況なので、道はまだまだ遠いですけどね・・・。

アマゾンを巡回していて、ついポチってしまったのが、中野珠実著『顔に取り憑かれた脳』(講談社現代新書、2023年)という一冊。

著者は、美容整形業界の方ではなく、東大大学院で博士号を取得後、現在、大阪大学教授として脳科学・神経科学を専門とされているガチの研究者です。巻末の参考文献は、英文の学術論文が大半でした。

本書では、「自分の写真を加工で盛りまくると、止まらなくなる。でも、他人の加工写真を見ると『やりすぎじゃね?』と感じてしまうのはなぜ?」という何気ない疑問に対して、学術的知見を元に説明するというもの。

で、「画像の加工と脳内での反応」についての様々な実験結果が、第三章で示されています。一般向けに書かれている本ではあるんですが、なかなかハードな内容なので、「はじめに」を読んだ後に、いきなり「第三章」に飛んでみるのがいい感じです。

結局、どういうことかと言うと、「自分の顔」と「他人の顔」とでは、写真を見せられた時に脳内の「別の場所」が反応していて、それが「自分の顔の加工は特別扱い」という現象に繋がっています。そもそも、自分の顔を認識する際の「特殊」な脳内反応は、ネット環境が整備されるはるか前、それこそ「卒業アルバムや集合写真から自分の顔をすぐに見つけられる」という実験結果からも指摘されていたようです。

で、その結果を元に、「SNSの弊害」等の議論も最終盤でなされています。まぁ、自撮り画像をSNSにアップするのって女性が大半で、私含めた世の男性は画像の加工以前に自分の顔なんて好きじゃないことの方が普通じゃね?なんて思ったりします。本書は、性別差については議論されていないはずで、そこはちょっと不満ではあるんですが、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

では、また明日!

Jun


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