1年前があるから今がある。「KISS & CRY 2019 世界選手権 全力応援号」

1年前があるから今がある。「KISS & CRY 2019 世界選手権 全力応援号」

2019年3月8日発売。1,200円+税。

発売日から1週間が経過しており、すでに皆さん入手されているでしょうから、「どの写真が何枚」という記述は省略します。目次のいちばん下に「協力/公営財団法人 日本スケート連盟」というお墨付きを発見しました。

まず、山口真一さんの特別寄稿にはビックリしましたね。この柔軟な発想が、「棲み分け出版方式」導入以降の「キスクラ」の良い所で、老舗スケート雑誌ではまず叶わない大英断です。

一読して、まぁ彼の雑誌ではないわけですし、「マガジン」で目にしてきたコテコテの表現は鳴りを潜めていて、抑制的です。羽生君は、五輪連覇を果たしたとはいえ、昨年のロステレ杯での怪我以降、まだ公に元気な姿を見せてはいません。ワールドに100%出場できる確証は無いですから、山口さんは、ゆづファンの不安な気持ちを汲んでくれているんだと思います。

個人的にハッとさせられたのは、おそらく皆さんも同じでしょうが、ラストの部分ですね。

平昌冬季オリンピックのメダルセレモニーで、私は「ケガで滑れなかった頃の自分に対して言いたいことは」と質問し、羽生は「とにかく、スケートできたよ、って。それだけです」と言った。「勝ったよ」でも「メダルを獲ったよ」でもなく、「スケートできた」。羽生がいちばん求めていたのは、スケートそのものだったのだ。’19年3月、あの時と同じ質問を羽生にしてみたい。世界選手権で羽生の姿が氷の上にあったなら、その時点で彼は勝者だ。当たり前にスケートができる日常を失い、しかし再び氷の上に戻ってきた。スケートをする自分を取り戻した時点で、彼は勝利を収めたのだ。ならば、勝者を祝福しにいこう。1年前とは違う自分の目で、1年前とは違う羽生結弦の姿をしっかり焼き付けよう。

まぁ、関係のない人たちはいろいろ煽るわけですけど、そもそも現役を続けてくれていることが我々にとって奇跡ですし、このワールドも、氷の上に戻ってくれるだけでハッピーですよね。山口さんは、記者時代も、そして今もなお、その心は我々とともにあると感じたテキストでした。

もう一つ、都築先生のスペシャルインタビューについて。先生は、精力的に取材に応じてくださっていますが、羽生君の「セカンドキャリア」的な話題になると、取材のたびに表現が微妙に変わり、より具体的な内容になっている印象があります。ある意味でサービス精神旺盛で、ちょっとヒヤヒヤしてしまいます。

まだまだ日本には、海外に通用するようなしっかりした組織・環境がないので、結弦の力でそれを変えてほしいですね。環境がいかに大事かということを彼はすごく分かっている。結弦ならできると思いますし、彼がするということが重要なことだと考えます。すでに世界一ですが、ずっと“挑戦の心”を持っています。新しい時代の先頭には、結弦がいると思います。

この発言からは、彼がスケ連のトップになって、スピスケとの分離も含めて、さまざまな組織改革に乗り出し、悪しき文化を一掃してほしい・・・そんな願いが込められているようにも感じます。あくまでも私の想像です。でも、二人はそういう話を会うたびにしているのかもしれません。

フェンシングの太田雄貴さんはいま33歳ですが、日本フェンシング協会会長として、先頭に立って革新的な試みを行っています。羽生君にできないわけが無いですからね。まぁ、こればかりは本人次第ですし、まだプロスケーターとしてバリバリ活躍してほしいですが、彼の性格を考えると、いきなり「ドン!」と何かを発表しそうな気がしないでもないです。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. みつばち より:

    こんばんは
    いま、フジのプライムニュースをみてました。
    日本選手にたちふさがる壁、ネイサン・チェンという短い特集でした。
    無良さんが羽生選手はジャンプだけでなくパーフェクトパッケージで、と説明。
    最近無良さん、話が上手になりましたね。

    チケットリセールやトレードにも出してますけど、男子シングルはお茶の間アリーナになりそうです。楽しみです、そろそろ帰国ではないかしら。

    • Jun より:

      みつばちさま

      フジはワールドの放送権がありますし、私も重点的に各番組を張っております。

      しかし、まぁ、いつものことなんですが、試合前後にこのルーティンを行うゆづファンは、期間限定的に時事ネタに強くなるのが、もはや「職業病」ですよね。
      私も、薬物とアポ電とロースクールの知識が無駄に増えています。

  2. 名無しの猫 より:

    Junさんのレビューを読むと、もう一度本を手にとって読み返したくなります。

    キスクラ、表紙をめくった瞬間にワクッとしました。

    一時期よりも羽生くん充実の雑誌は減っているのかもしれませんが、
    最近のジュエルズ、スケーターズプラス、キスクラと、全部満足しています。

    以前の古い老舗本は、書棚にあるワールドやカッティングエッジなど、懐かしいな と思い
    ますが、羽生くん成分がスピードと量で攻めてくる雑誌を買うようになってから、
    すっかり遠のいてしまいました。
    老舗本の存在意義を否定するわけでは決してないのですけど。

    4月9日に通信が発売予定にはなってますし、一時期の怒涛の出版に比べれば落ち着いた
    かもですが、安心して買える雑誌が数種類あれば、私的には充分です。

    未確認情報ですが、スポルティーバも羽生くん表紙で出るらしいと、某ブログのコメント
    欄で見かけました。

    内容を吟味して、(私的に)良いと思ったものを購入していこうと思います。
    本に関しては、妥協はしませんが、節約はしません(笑)

    • Jun より:

      名無しの猫さま

      私も、雑誌・書籍はめっきり買わなくなりました。キスクラ、ジュエルズ、インロック。あとは高山本ぐらいですね。

      そんな中で、鈴木ふさ子さんがフィギュア本を出されていて、2月発売の著書『氷上のドリアン・グレイ』で「ミズノ・スポーツライター賞」の最優秀賞を受賞しています。

      かつて、「フィギュアスケートファン 平昌五輪徹底ガイド」の中で、鈴木さんは、プルさんとジュベールに直接取材して羽生君についてのコメントをもらっています。「Number PLUS 銀盤の革命者」のプルさんのインタも秀逸だったので、チャンスがあれば著書も読んでみたいなと思っています。

  3. sennin より:

    私も山口さんの記事の中で同じところでグ、グーと来て胸が一杯になりました。結弦くん
    を好きなのは原点がやはりここなんですよね、そりゃあ試合では金メダルとって欲しいし健康で挑めるように私なんか神頼みに神社に足運んでますが(笑)スケートが出来る氷に乗れることが幸せ、それが羽生結弦が大事に思っている事、金メダルは結果で世界のトップになっても天狗にならない、だってスケートが好きなんだもん!てところですよね。山口さんも同じ気持ちですね?ワールドで質問出来るといいですね。期待ちゃいます!
    今季試合を継続してくれたことに感謝してワールド応援します。アメリカ勢はもう日本に来ているみたいですね?

    都築先生はズーッとこれ言ってますね?私は、羽生結弦ですから日本に止まらずISU関係かと思っています。

    雑誌の方ですが、 写真はショーのせいかピンクが強すぎてあんまり気にいってないのですが、まさかポースターに温かくて涙を誘うものが挿入されているとは思いませんでした。何度も何度も読んでしまいました。誰の気持ちなんだろうと探りたくなってしまいましたが、有難いです。

    • Jun より:

      senninさま

      フェンシングの太田雄貴さんのwikiを調べてみると、2016年のリオ五輪後に引退した後、まず国際フェンシング連盟の理事に当選しているんですよね。その後、アジアの組織委員会の委員長を経て、日本フェンシング連盟の理事→会長。そして、昨年12月に国際フェンシング連盟の副会長にも就任、任期は2020年12月までです。もし羽生君にそのようなアイデアがあるなら、日本のフィギュア村の連中なんて無視して、太田さんのような人にお話を聞いた方がいいかもしれないですね。

      キスクラの、表紙裏のエールというかラブレターというか、素晴らしい内容ですね!一瞬、山口さんが書いたものかと思いましたが、実は「マガジン」のスピリットを「キスクラ」が継承している部分もあるんじゃないかと。都築コーチだけでなく、仙台の方々にもしっかり取材してますし、頑張ってくれていますね。

  4. ととちゃん より:

    都築先生のメッセージ、私も同じところに反応してしまいました。現状のスケート連盟にやはり何か不足を感じておられるのかな、と。「海外に通用する云々」という言葉を見ると、ロシアのサンボのような組織を念頭に置いての発言かも知れませんが。いずれにせよ、羽生選手に並々ならぬ期待を寄せておられることが分かりますね。

    また、世界選手権に向けてのコメントで、彼は正直に取り組んでいる云々というくだりに
    も色々感じてしまいました。羽生選手始め、誠実に取り組んでいる選手が報われる大会であって欲しいです。

    山口氏の寄稿は、期待以上でした。記者の方々の裏話も興味深かったです。ショートの結果から一気に金メダルを予想した訳ではなかったのですね。それが実際の演技では自分の仕事を忘れる程に釘付けになったこと、
    「宇宙」という表現に、心から同意しました。氏の世選の感想も楽しみです。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      都築先生は、けっこう踏み込んで語ってますよね。「環境」を「リンクの数」という意味で解釈するなら、京都にできて、関空にもできて、関東も辰巳水泳場をリンクにする話も出ていて、着実に整ってきている、と言えます。

      でも、「海外に通用するようなしっかりした組織・環境がない」と、「組織」がついているのがポイントです。リンクだけ作って偉そうにふんぞり返っている現会長の体制ではダメだってことですよね。

      ジャッジングシステムにAIが入るのと、現会長が退場するのとどっちが先か・・・。「日本がフィギュアスケートを変える!」と世界に宣言するためにも、後者が先であってほしいです。