Ice Jewels Vol.10(3)

Ice Jewels Vol.10(3)

「インタビュー 彼らの流儀」では、トレーシー、ブライアン、そして中野コーチが紹介されています。特に興味深かったのはトレーシーだったので、今日は彼女のインタを見ていきます。

トレーシーが、1988年のカルガリー五輪のアイスダンスで銅メダルを獲った後、91年にパートナーを病気で失ったことは私も知っていましたが、クリケットのコーチに就任したのは2006年ということで、そこまで15年の月日があります。この期間の彼女のキャリアについて、私はほとんど知りませんでした。

息子たちがアイスホッケーを習いたいと言いだして、私も一緒にリンクに行くことになって……。そこのコーチが、私がアイスダンサーだということを知っていたので、子どもたちにスケーティングを教えてほしいと言われ、それがきっかけで再びスケート靴をはくことになりました。

アイスダンスでは美しく滑らなくてはならないけれど、ホッケープレーヤーはスピードとパワーが全て。そこで私自身も、子どもたちに教えることで多くのものを学んでいったんです。そうしているうちに、もう一度滑ることの喜びがよみがえってきました。

息子たちには14歳くらいまでスケーティングを教えました。そのうちにカナダのスケート連盟がコーチのためのエッジワークセミナーを開いてほしいと依頼してきたんです。こうした経験を重ねていくうちに、私自身、指導の仕方を学んでいくことができました。

パートナーとの悲しい別れが無ければ、もう少し現役生活を長く続けて、しかも、引退後はプロスケーター→フィギュアスケート指導者、という「定番のセカンドキャリア」を順調に進んでいたかもしれません。しかし、お子さんのアイスホッケーのお手伝いから始まった、というのは意外なきっかけでした。ただ、彼女の「どんな人も受け入れて、包み込むような人柄」は、こうした人生経験から来るものなんだなと思います。

例えば、ブライアンとの比較で言うと、教え子が力を出しきれなくて不本意なスコアだったりすると、ブライアンって「あからさまに悲しげなしょんぼりモード」になります。一方、トレーシーは、よい結果だとニンマリ喜んで、残念な結果でもニコニコしながら「しょーがないわね」と、そんなに表情を変えない。おそらく「移籍組」のメドちゃんやジェイソンに対して、彼女のケアって相当に効いているんじゃないか?と想像します。で、羽生君に対しては、それをブリちゃんも担っているんじゃないか?と。この夏のトロントメディアデーでは、そろそろブリちゃんへのインタを敢行してもらいたいし、羽生君の彼に対する評もまた聞いてみたい所です。

私はコメンテーターもしていたので、大会に行くとアイスダンスだけではなくシングルの選手も公式練習から見るようにしていました。そこで気がついたのはスケーティングを見るだけで、次のジャンプが成功するかどうかわかるということ。スケーティングが下手でも、芸術的に見せることはできるんです。でもスケートのバランスがわずかでも狂って、私が「あ、まずい」と思うと、必ず次のジャンプで失敗する。こうした知識を使って、ブライアンと共に共同で教えるようになりました。特に私たちがクラブで行っているスケーティングの基礎レッスンは、私がアイスダンサーとしてトレーニングしてきたときに学んだものが基本になっています。

ハビや羽生君のような、美しいスケーティングからスピードを落とさずにクワドや3Aを跳び、そのままスケーティングへと移行する一連の流れ、シームレスで高さも幅も出るジャンプというのは、クリケットで培われたスケーティング技術が確実にベースになっているのだなと、改めて感じます。

羽生君やハビのクワドが陸上の走り幅跳びなら、ネイサンのクワドはバスケットボールのレイアップシュートのようなイメージとかぶります。前者と比べて、後者は、ゴール下までドリブルで切れ込んだ後、「頭上のゴールめがけて体が上に浮いているだけ」という感じなんですよね。

このような「スケーティングあってのジャンプ」という認識を、おそらくブライアンやブリちゃん含めたチーム内で共有しているというのは大きい。カリスマコーチのワンマンクラブではこうはいかないですね。

では、また明日!

Jun

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)

コメント

  1. 名無しの猫 より:

    記事のアイスジュエルズレビューとは関係ない内容ですみません。

    先日Jun様からいただいたコメントのお返事の、5/19 井上尚弥チャンピオン というの
    が頭にあったので、なんとなくニュースを気をつけていました。

    少し重心を低くするよう修正した というような記事を読みました。
    私がなんとなく格闘技を敬遠して、何も知らないうちに、凄いチャンピオンがいらしたの
    ですね。どんな方だろうと画像を調べて、青年実業家だと言われても違和感のない風貌の
    方だな、と思いました。
    ボクシングのことは何一つわかりませんが、強いだけでなく、戦略的な方なのかしら、と
    興味を持ちました。

    • Jun より:

      名無しの猫さま

      「青年実業家」と言うと、ゾゾの社長みたいのを言うのかな?と一瞬思ったんですが、あの社長の方がよっぽどボクサー風の顔をしているというのが何とも・・・(汗)。

      ここ最近の井上選手の試合は1Rか2Rで決着がついてしまって、彼自身は出血どころか被弾すらしないので、顔はキレイなままです。その部分で格闘技が苦手な方にも、自信を持ってオススメできる選手だと思います。

      ただ、強すぎて対戦相手がなかなか決まらないというのが何とも・・・。フィギュアスケートも試合は少ないですが、いまの井上選手は年間3~4試合組めれば十分というのが、本当にもったいないです。