「ジャンプの問題」についていろいろ雑談

「ジャンプの問題」についていろいろ雑談

高難度のジャンプが勝つ道具へ 『4回転時代』到来に日本女子が持つ、それぞれの覚悟」(THE ANSWER 2019.5.21)

この記事は、「昨日の」コロラド合宿の紀平さんの4Sについての言及は無いですが、私の見立てでは、新プロの曲かけですでにあのクオリティで着氷できているなら、シーズンインしてすぐに成功できると思います。少なくとも、ツルシンちゃんのさいたまでの4Sよりも余裕があるように見えました。

しかし、アリサの3Aをこの中で同列に語ってはダメでしょう。あの全米の3Aは回転がまったく足りてないし、ジュニアでまだ結果を出していない選手を、「順調に伸びていけば、当然メダルを争う有力候補になるだろう」って、それはあまりにも言い過ぎ。そもそもジュニア時代の活躍で将来を嘱望された選手が、そのままシニアで活躍できる保証もありません。ザギちゃんが平昌で金を獲れたのも、メドちゃんの怪我に助けられた部分が大きいですから。

日本女子ということだと、紀平さんと坂本さんはともかく、宮原さんはあれだけの努力を続けていてもジャンプが目に見えて高くなることもなく、やはり「ジャンプの高さ」や「高難度ジャンプの成功」というものは、生まれ持った才能に依る所も大きいのだなと、昨シーズンは特に痛感させられました。

フィギュアスケートだけを見ていると、「なんでこの選手のジャンプは低いの?」という批判的な目で見てしまいがちです。私自身がそういう発言をブログでしてきたので、自戒を込めて反省しています。

そこで、ボクシングの記事を最近何本か読んでいて、井上尚弥選手のあの倒しっぷりを専門家はどう評価しているのか?という点で、面白い記事が2本ありました。

【浜田剛史の目】尚弥の完勝劇 判断力&対応力 速さと強さの両立」(スポニチ 2019.5.20)

ロドリゲスも高い技術を持っていたが、今の井上はパワーとうまさを兼ね備え、相手はどちらかで上回らないと勝つのは難しい。特に井上のパンチ力は160キロの速球を投げられる投手と同様、天性のものを感じる。筋力をつけ、打ち方を工夫することでパンチ力はある程度のレベルまでいくが、通常はパワーがつけばスピードは落ちるもの。しかし、井上は元々の武器であるパンチのスピードを落とさず、階級アップに従ってパワーもつけてきた。分かりやすくいえば、短距離を走る筋肉と、長距離用の筋肉を両方持っているような状態だ。

『井上尚弥はすべてが理想形』敗れた元世界王者が語る怪物の実像 怪物に敗れた男たち(2)」(現代ビジネス 2019.1.19)

「今までたくさんの世界王者とやってきたけど、スピードは一番。パンチも一番。パワー、ディフェンス、フットワーク、リズムもいい。全部がバーンと抜けている。普通はパンチが上手い人はディフェンスが悪かったり、どこか欠けている部分がある。みんな井上君みたいな動きがしたい。僕だってそうしたい。でも、できないから今のようなスタイルになっている。だからボクサーの理想なんですよ」。

ボクサーは誰もが最初は井上のようなスタイルを目指す。ところが、短所に気づき、長所で補う。もしくは長所をさらに伸ばして武器とする。そうやって独自のスタイルを築いていく。しかし、河野いわく、井上は全てが長所だという。

ボクシングの場合、対人競技なので、パンチ力が無いから世界チャンピオンになれないこともありません。12ラウンドをフルに戦って、ポイントを取って逃げ切ることを「勝ちパターン」にしてきた名チャンピオンもたくさんいました。しかし、そういうボクサーも、年齢とともに、スタミナ面での不安、相手のパンチをかわす上での動体視力の低下、反応スピードも落ちて、相手の攻撃を被弾して王座陥落→引退となるのです。

フィギュアスケートはと言うと、男女含めて、現状、高難度ジャンプへの実績が劣る中、世界のトップで戦えているのはジェイソンのみで、やはり「ジャンプが跳べないと勝負にならない」という「狭いスポーツ」になっています。ただ、「狭いスポーツ」だからこそ、採点のアレコレによって、正しい技術を持っていない選手もそれなりにメダル争いに食い込めている「不可解な状況」になっていますね。

で、ふと思ったのは、AIを全面導入して、人間の思惑が極力入らないような採点方式が実施されたらどうなるか・・・。羽生君のような正しい技術を持ったスケーターが無双するのは間違いなく、一方で、ジャンプが苦手な選手はもちろん、得意なフリして実際は回転もエッジも怪しい選手に対しても、スコアがまったく入らなくなります。すると、今まで以上に、ジャンプが跳べない選手は「勝負にならない」という状況になるかもしれません。

だからといって、デタラメな選手に高得点を上乗せできる現行のルールはまったくもって支持できないですが、「ジャンプ偏重」の流れが加速するという意味で、AI全面導入もいろいろと問題が出てくるのかもな・・・と。私が生きている間に起こりそうもないことを、いろいろと考えたここ数日なのでした。

さあ、羽生君の帰国は水曜と、私は予想しています。楽しみですね。幕張組の読者の皆様、熱いコメントを楽しみにしていますよ!

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. みつばち より:

    更新ありがとうございます

    私はスケオタというほどのレベルではなくてエッジの方向もわかってないようなものですが、さすがに前列1番の席が当たったりすると見えます。

    今のは回転不足かな、飛び上がる前にすでに上体がねじれとるやん、とか・・・
    スピードが足りないのかな、フリーレッグかすって氷削ってるやんか・・・
    (関西人ではありません)

    点数陰謀論に与するのはいかん、と思っておりましたが昨年の男子全日本で考え変わりました。
    その前のカーニバルオンアイスでもバタバタしておられまして、うむむ・・まあショーだから・・・でももう少しジャンプは頑張られたらよいのに、という人が復帰して2位。

    そうか、盛ろうとおもえばいくらでも盛れちゃうのね、と。他方面でも漏れた話でドン引きです。残念さんだわ。それなりに功績はあるのに。

    クリケが「勝利するプログラム」を作るのは今更言うまでもないでしょうから、羽生さんの健康状態だけだと思います。

    • Jun より:

      みつばちさま

      ナショナルの開催時期が12月~1月なので、各国高得点を出すのはワールド(あるいは五輪)に向けて、他国に対するプレッシャーという意味もあるのかな、という気もします(日本は他の事情もありそうですが)。

      まぁ、ワールドや五輪、ファイナルぐらいはある程度しっかりした採点をしていただきたいものです。

  2. ごろ寝 より:

    生まれ持った才能、ひょっとしてISUのジャンプルールの「改悪」はこの差をカバーして「ショー」を成り立たせるためでしょうか。
    判定基準を厳格にすれば挑戦意欲を削ぐですって?正しく技術を磨こうとする選手の意欲はどうでもよいということですか?

    URでも80%,GOEも-2~3が-1~2になるとか。宮原さんには有利、もっと有利になる男子選手もいますね。「ISUにとっては試合は「テレビショー」。放映権が入れば良い」と代理店の方から聞いてはいます。もう競技の向上ではなく、チキンレースで盛り上げれば良いということですね。日本はお客様、アメリカにとっても有利。

    日本スケ連もUSMも隠しもしませんね。
    「氷艶」の企業割り当て権が家人の会社に百枚単位で回ってきています。むろん無料で。橋本会長以下国会議員が居れば、国営くじがスポンサーに付き、赤字を懸念する必要もない。
    どこかに光が見えないと、フィギュアがヘドロにしか見えなくなりそうです。

    • Jun より:

      ごろ寝さま

      結局、「スターは作れる」という発想と同様に、「盛り上がる試合は作れる」と考えているフシがあります。昭和のプロレス興行の感覚に近い。

      根本的におかしいですよね。余計な演出など無くても、素晴らしい演技を見られれば、会場のファンも視聴者も正当に評価するし、スターもそんな戦いから生まれるのです。
      日本のフィギュアスケート業界で言えば、スポーツマンシップという言葉からもっとも遠い感覚の方々が偉そうにふんぞり返っていて、ジャッジも言いなりなのが、悲劇を通り越して喜劇と言うしか無いです。

  3. ととちゃん より:

    ルールの変更があったようですね。
    仮にAIを導入出来ても、今回の様にそもそもの基準となるルールで URの基礎点を上げるといった措置を取るなら、結局何も変わらないではないか、と思わされました。

    長い助走を取り、プレロテやURを伴わないとジャンプを跳べない選手が大多数だから、そちらに合わせたのか、と推測しましたが、出来る選手が1人でもいる以上、そこを目指すのがスポーツなのではないでしょうか。

    ISUは、もう競技力の向上の先にあるスポーツとしての醍醐味を追求する姿勢を手放したのでしょうか。まるで、1番遅い子に合わせて全員でゴールする運動会のようですね。

    そのなかでも、きっと自分を貫く羽生選手の
    演技だけが、男子フィギュアでの唯一の楽しみになりそうです。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      このスポーツもいよいよ末期状態だなと思います。羽生君が引退したら、私もスケートとの関わり方はアイスショー専門でいいかなと思いはじめていますね。

      こんなひどいルールとひどいジャッジの元で、スコアがあーだこーだ言うのが不毛に思えてきて仕方ないですよね。ウチのブログも、羽生君引退後にどうするべきか、いろいろ考えさせられますよ。

  4. sennin より:

    生まれ持った才能ですか?なるほどですね。私はボクシングと言えば具志堅用高さんしかわかりません。この頃ボクシングは怖くてみれないですが、井上選手は本当に凄いようですね。ボクシングの才能全てをもってるってことですね?以前サッカーの松木さんが結弦君をみていて体のでき具合を認めてました。そして羽生選手は他のスポーツをやってもトップをいくようなコメントありましたが…。といってる間にルール変更の情報が次々と、私にはもうわかりません。アメリカ主導の気がしてならないんですよね。

    結弦君がいつの間にか帰ってきてるんですね!金曜日には姿が見れるんですね行かれる方は(笑)。情報が楽しみです!

    • Jun より:

      senninさま

      いま、井上選手の父であり専属トレーナーの真吾さんの著書を読んでいます。6歳から井上選手がボクシングを始めたきっかけは、塗装業を経営していた真吾さんが趣味で始めたボクシングの練習の様子を尚弥少年が見て、「僕もやりたい」という感じだったとか。以後も、親から「世界チャンピオンを目指せ!」というノリでプッシュしたことは一度もないそうです。いわゆる「親子鷹」とは全く違いますね。

      羽生君も、お姉さんがスケートをやっていたことがきっかけでしたが、いずれも親と子の関係、がスポ根的な「親の命令は絶対!」という感じじゃないのが興味深いです。環境も大事ですけど、本人の自主性ってやはり大事ですね。