「マガジン」の次は、こちらのレビューです。画像左の方が「OFFICIAL PHOTOBOOK」でハードカバーの大判サイズなのは、これまでの羽生さんのオフィシャル本の形式を踏襲しています。
「フォトブック」とあるので大半はRE_PRAYツアーの写真で構成されていて、撮影は田中宣明さんと能登直さん。どのページのどの写真が良い!といったピックアップが必要ないほど、全編素晴らしいショットで埋め尽くされています。そして、巻末には羽生さんのインタが収録されていますが、テキストのボリュームもかなりのものです。市販の雑誌に収録されているインタと比べて幾分リラックスした雰囲気であること、そして、より「前向き」な印象を受けました。以下、いくつか取り上げておきます。
――『RE_PRAY』ツアー、4か所8公演、すべてを終えた今、どんなことを感じていますか。
「GIFT」のときは、「あー、終わったー」というかんじで満ち溢れていたのですけど、今回は、「せっかくここまで身体をつくったから、またつくっていこう」と、前に向かって進んでいきたい気持ちです。
こちらはインタ冒頭のやり取りなんですけど、あれ?そうなの?とやや拍子抜けでした。もちろん「良い意味・嬉しい意味」での拍子抜けです。だって、他のメディアに対しては、「RE_PRAYにはあらゆるアイデアを詰め込んだので、いまは空っぽ。(今後のアイスショーについては)白紙」といった応答をしていたと思うんですよ。「RE_PRAY再演」なんて話もチラっと見かけましたが、「またつくっていく」という「次の新しいショーへの意欲」を語ったのは、おそらく初めてな気がします。
もちろん、佐賀公演後のトレーニングが上手くいって、横浜・宮城で納得のいく演技ができたことがその意欲の根拠になっていることは想像に難くありません。このインタ自体は、宮城公演後、つまり4月10日以降に実施されているはずですが、主要スタッフ間で「反省会」からの「今後に向けてのブレスト」みたいな話し合いの場は設けられていることでしょう。てか、もし今年もIce Story 3rdを11月に開幕するとしたら、会場も押さえておかなきゃいけません。ちなみに、「RE_PRAY」ツアーの公式HPが開設されたのは、「2023年9月1日」でした。
羽生結弦というものを見る回りの目がどんどん変わっていくことと変えてしまっていること、そういうものを実感しながらずっとやっているので、頑張らざるを得ないのですよね。それはやっぱり大変でもあり、でも大変だからこそ報われた瞬間が楽しく幸せでもあり、そのツールが僕にとってはフィギュアスケートなのだということを噛みしめています。
・・・ただ正直言うと、行き詰まることもたくさんあって。昔のように年齢のせいにすることは全くなくなりましたけど……24歳くらいのときかな、すごく年齢のせいにしていて、「これはもうだめだ」と。
・・・でも、19歳のときと29歳になった今とを比べると、あれから10年も練習しているのだから下手になるわけがないじゃないか、と。ただ、イメージだけでトレーニングするのと、ちゃんとした科学的な根拠でやるものとでは、差が出てしまうというだけなのだと思います。だから、「ここからまだうまくなれるんだなあ」ということを、何となく感じています。だって『破滅への使者』、普通に6分間練習をやって普通に最初にやったら、絶対ノーミスできますもん!だって、サルコウとトウループだけですから!ループとか入っていないですし(笑)。
少し組み替えました。これはもう競技者時代の頃からも、私は羽生さんに対して、「少し休んでゆっくりして、旅行でもすればいいのに」とか「そこまで自分を犠牲にして命を削らなくてもいいのに」と感じることもあったんですけど、違うんですよね。羽生さんは「人生をよりよく生きるためにスケートを続けている」んだなと。やりたいことを我慢してスケートを仕方なく続けているのではまったくない。自分自身の中で表現したいことがあって、それをフィギュアスケートという「ツール」によって実現している。
「人生をよりよく生きる」のであれば、スケートで表現するストーリーも、自分の人生にとって意味のあるテーマである必要がある。だから、ゲームが好きだからゲームを扱ったのではなくて、人生における重要テーマをゲームをプレイしながら考えたことがあったから、それを活用したということなんですね。
日々命を削りながらこのようなメッセージを届けてくれると、単にそれを「消費」するだけじゃなくて、どのように自分の人生にフィードバックできるのか?をやはり考えてみたくなります。毎日を悔いなく生きる。ズルをしないですべてを一生懸命頑張る。もちろんそれはそれで尊いことではあるだけど、それを続けているといつか燃え尽きてしまって、動けなくなってしまう。
頑張るべき領域を限定して、エネルギーを投入する「場所」を間違えないこと。不必要なものは極力身体に入れないこと。無駄な争いは極力回避すること。自分が燃え尽きることなく力を発揮するための「地ならし」をせねばなぁ・・・なんてつらつらと考えてしまったのでした。
では、また明日!
Jun
コメント
>人生をよりよく生きるためにスケートを続けている
私も、この一点が強く響きました。
>「消費」するだけじゃなくて、どのように自分の人生にフィードバックできるのか?
そうなんですよね。それぞれの「推し」方があるでしょうが、私は、羽生さんの生き様、人間性に感銘を受けている。目にするインタや行動など、縁に触れる機会がある度に目を覚まします。が、続かないのが情けない。
逸れますが、ごく一部の「羽生ファン」らしき人たちが「誰か」への中傷を発信しているのだとか。対象が違えど、羽生アンチと同類の人々。
所詮、悪口や誹謗中傷に時間を費やす輩には、覚悟を持って立ち向かう高潔さには、生涯触れることも理解することもできないのでしょうね。
ごろ寢さま
人間なので、むかついたりイライラしたり、ネットを見て文句の一つも言いたくなるのは自然なことと思います。私だってそうです。
でも、実際にそれを公の場で発言したり書き込むという「行動」に出るかどうかは別の話で、世の中の多くの人たちはそのブレーキが効いているんですが、それをできない人が一定数いるんですね。これは羽生ファンとかフィギュアファンに限ったことではなく、将棋でも麻雀でも野球でも何でも、やっぱりいるんですよ。直接害を及ぼすようなことをされたならしっかり「証拠」を残すとして、そうではない類のネットの書き込みに対しては、やっぱりスルースキルって大事だなと思います。