結局、全部読みました。「Number PLUS 銀盤の不死鳥」(2)

結局、全部読みました。「Number PLUS 銀盤の不死鳥」(2)

昨日の続きです。すべての記事を読みましたよ。当初そこまでやらなくても、記事として紹介できるものがあるかな?と思っていたんですが、想像以上に、女子の記事が薄かった・・・。女子の記事で、唯一、「ほう?」と思ったのは、「坂本さんのトリプルアクセルのエピソード」ですね。

(3A)成功へのかすかな感触は手にしている。それは2016年のことだ。全日本選手権の時期、練習で一度降りたことがある。「ダブルアクセルの練習のときから、『あ、浮くな』って感じていて、行けるかもと思ってやったら跳べました。あの感覚が戻ってきたら、いけるかな」。坂本は、いたずらっぽい笑みを浮かべると言葉を続けた。「でも降りたとき、中野先生がムービーを撮るために携帯をいじっていて見てなかったのが、めっちゃショックで。『もう1回やって』と先生に言われたけれど、そんなに簡単に跳べるもんじゃない、とちょっと泣きそうになりました(笑)。見ていた人が少なかったので、知る人も少ないんですけど、降りたんです」。

オチで笑いを取るのが、坂本さんらしいですね。16年の全日本ということは、ジュニア最終年の時ですか。確かに、彼女のジャンプを見ていると、クワドよりは3Aかな・・・という気もします。実戦投入できるかどうかは別にして、成功した感覚を大切に、チャレンジしてほしいですね。

インタビューとして充実していたのは、ネイサンの記事ですね。さいたまワールド後に行われた田村明子さんによる独占インタ。大学生活とスケートとの両立という部分の詳細が実によく分かりました。少し長めに引用します。

午前の授業を受けた後、イェール大学キャンパス内にあるアイスホッケーチーム用のリンクで、特別な許可をもらって、短い時間ながら単独のレッスンを行う。その後、大学から車で30分ほどの距離にあるトレーニングリンク、チャンピオンズスケーティングセンターに自分で車を運転して行くのだという。トレーニングは基本的には自主トレで、西海岸のカリフォルニアにいるラファエル・アルトゥニアンコーチとはフェイスタイムなどでこまめに連絡を取り合う。遠距離恋愛、ならぬ遠距離師弟関係だ。「一人でトレーニングすることでもっとも難しいのは、気が付かないうちに何か技術的なことが微妙に狂っていても、それを即座に指摘してくれるラファエルがいないこと。そんなときは、リンクの人に映像を撮影してもらってラファエルに送るんです」。それでも、コネチカットで新しいコーチを探すことは考えなかったという。「ぼくが現役生活を続ける限り、おそらくラファエルとの師弟関係を解消することはないと思います」とチェンははっきり答えた。

また、個人的に、ネイサンが「クレバーだなぁ」と感心したのが、以下の発言ですね。

「(ワールドの)タイトルの価値そのものは、自分にとって昨年と変わっていません。でも今シーズンやってきたことと両立させてこの演技ができたことで、自分が選んできた道は間違っていなかったという安心感を得ることができました。イェール大学に入学したことが、ぼくをより強いスケーターにしてくれた、という訳ではありません。でもぼく自身がどれほどスケートを愛しているのか、再認識する助けにはなったと思う。それから、以前よりスケートに費やす時間が限られているため、効率的にトレーニングをするなど、集中力がより増したと思います」。

いま「成功」しているのだから、「すべてがプラスになっている」という所にまとめそうですが、彼はそうは言わない。謙虚です。「優秀な人すべてが名門大学に行けるわけじゃない」というアメリカ的な事情や、あるいは「自分が両立できている状況はとてもラッキーで恵まれている」という感謝の気持ちも日々感じながら、このような生活を送っているのかもしれませんね。私自身は、文面からそのような印象を受けました。

そして、彼の素晴らしい所は、リスペクトの精神ですよね。

ユヅルがこのスポーツにもたらしたものは計り知れない。(ここでぼくが優勝したからといって)彼は二度のオリンピックチャンピオンで、その偉業を取り上げることは誰にもできません。自分はあまりこういう言い方をすることはないけれど、ユヅルはぼくが心から尊敬している選手。彼と同じ試合に出られることは、すごく幸せなことです。ここで同じ表彰台に立つことができて、本当に光栄に思っています」。

採点については色々言いたいこともありますが、彼自身には何ら否は無いわけで、そして、19歳だけどしっかりしていますよ。羽生君が本気になるのも分かります。

ところで、本誌の中盤のかなりのスペースを占めている高橋選手の特集ですが、特に刺激的でも挑発的でもなく、穏やかな内容でした。氷艶を頑張るということと、国際大会に出場する気は(今の所は)無いということです。

ただ、本田さんの「高橋選手への次のシーズンに向けてのエール」が面白かったですね。

「まだまだ行けますよ。ブライアン・オーサーは、40歳までトリプルアクセルを跳んでいましたし、僕も38歳になった今でも練習で跳べています。もし、世界で戦う、勝負しようということになったら、4回転ジャンプが2種類、3種類必要となるけれど、そのときはそのときじゃないですか。何よりも、やりたいことをやるって、なかなかできることじゃない。本人にも、滑ることができなくなるまでやりたいという気持ちが見えます。とことん、やり続けてほしいですね」。

まさかのブライアンのネタと、サラリと自分の自慢話を入れているのはご愛嬌として、高橋選手のチャレンジについて具体的な可能性を言及せずに、「そのときはそのときじゃないですか」って、あなたテキトーすぎでしょ!と。

まぁ、そういう人たちに囲まれて、本人がいま楽しくて充実しているのなら、それでいいんじゃないでしょうか。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. みつばち より:

    更新ありがとうございます。

    ネイサン君の挑戦、どこまで続くのでしょう。
    国別の時の選手紹介でも「名門イェール大学に入学、スケートとの両立を頑張る選手」みたいな感じ(日本人はこういうの好き)でしたが、オリンピックメダルをめざすってそんなに簡単にできるもんじゃないでしょう。たとえ天才でも。ようするに「通信教育」状態なわけですよね?
    まあ彼自身がはっきりオリンピックメダリストになりたいと言ったわけじゃないから・・・しかし世選王者ならその先は・・北京ですよね、このままいくと。

    セミリタイア選手についてはもう、ね。かつては応援してたんですけど。
    甲子園球児だってこんな生ぬるいこと言わないわ。(私は甲子園強豪校の卒業生なのでわりと知ってるんです)即、退部。

    うーんでもこういう選手たちが許される競技って・・・羽生さんは別格としても、日本選手奮起せよ!と、一人で興奮してしまってすいません。

    • Jun より:

      みつばちさま

      この田村さんの記事の中で、ネイサンは高校時代の後半はオンラインスクールで単位を取ったと書いてあるんですが、イェールでは寮生活で、週25時間授業に出ているとあります。いわゆる、我々が想像する「普通の大学生」をやってますね。ただ、北京五輪のために休学する可能性も示唆しているようで、でも他方で、五輪を目指すと明言してはいないので、まだ不明ですね。

      某先輩については、まぁ、それだけ日本のフィギュアスケートは歴史が浅くて人材不足ということですよね。そんな彼を「過去の人」にしたのが羽生君ですが、いかんせん彼一人という状態なので、国内の各勢力から嫌がらせを受けている。質・量ともにもっと優秀なスケーターが育ってくれることを祈ります。

  2. ととちゃん より:

    坂本さん、ジャンプ高いから3Aもいけるかも知れませんね。今後トップを目指すにはマスターするに越したことはないでしょうが、中野コーチはバランス良く指導される気がします。

    ネイサン、クレバーなだけでなく、とにかくタフですね。このタフさが、世選後 母国との間を行き来しつつも国別でしっかり結果を取る強さの源なのでしょう。もはや名実共に羽生選手のライバル。来季、戦々恐々で観ることになりそうです。

    一方で国内限定の方…本田さんは身内に甘いですね。やりたいことをやれるのは、お膳立てがあってこそ。先もない1人の人間にかける、そこまでの準備と熱意を、若い他選手に向けてあげて欲しいです。来季も自虐のようなタイトルの ゴースト何とかをするようですが…もう見たくないのが本音です。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      本田さんも、長光コーチへの義理があって「お手伝い」しているんだろうけど、日本の天才ジャンパーの系譜にいるスケーターですから、そんなことしている場合じゃないだろと。

      その経験と知識を有望な若手のために役立ててほしいんですけどね。コーチの移動に「制限」があるところも、この国の指導現場が停滞している理由の一つかもしれません。