「フィギュアスケート・マガジン 2019-2020 Vol.6 四大陸選手権特集号」(2)

「フィギュアスケート・マガジン 2019-2020 Vol.6 四大陸選手権特集号」(2)

正直、これまでの報道からでは、プログラム変更の理由(特にOtonal→バラ1)がいまいち私の中でしっくり来なかったのですが、完全収録を読んで、かなり深い部分まで理解できたような気がします。

・・・メダリスト・オン・アイスの「SEIMEI」を滑った時に、なんか、カバー曲とオリジナル曲じゃないですけど、それぐらいの違いを、なんかすごく感じて。・・・もう、それでもメダリスト・オン・アイスの時に力を借りた時に、あの時の精神状態だったからこそかもしれないんですけど(笑)、ものすごく「自分でいられるな」って思って。それで…うん…もう少しだけ、この子たちの力を借りていいかなって思いました。はい。

これは、2月5日の最初の公式練習後の「囲み会見」で、前半5分の日本人記者向けでの発言(74頁)。「カバー」と「オリジナル」の違いというのはしっくり来ました。これは実にわかりやすい!

ふと思ったのは、昨年のFaOIで羽生さんとToshIさんが一対一でコラボしたのは、いずれもToshIさんのオリジナル曲の「マスカレイド」と「CRYSTAL MEMORIES」でした。オープニングはカバー曲の「真夏の夜の夢」や「残酷な天使テーゼ」で、もちろんクオリティも高かったですけど、やっぱり、ToshIさんも羽生さんのリクエストに応えて極限のパフォーマンスを披露してくれたのは、自分のオリジナルだからこそと、(本人はどう思っているか分かりませんが)「後付け解釈」ですけど、そう思います。

そして、バラ1の「111.82」の演技の後、バックヤードでの囲み会見(76頁)でも、重要な発言をしています。

――練習の時はサルコーがうまく跳べないケースが多かったですが、どうしてだと。そして、それに対してどのような対応を。

もう、なんかやっぱり、本番になったら、たぶん昔と、「跳べる」フォーム?…が、たぶん一緒に記憶されてるんだろうなっていうふうに思って。まあ、とにかくあの…まあ曲自体とプログラムを信じて跳んだっていうのが一番大きいですかね。

「曲とプログラムを信じて跳んだ」というのは、なるほど!とこれまた、ストンと腑に落ちました。「慣れ親しんだプログラム」とか「何シーズンも滑ったプログラム」という言い方を専門家はよくしていて、これは、スケート未経験者の私には、実はまったく分からない説明ではありました。

しかも、3Aやクワドのような高難度ジャンプなら、「曲なし」の方が、「曲かけ」時よりも、常識的に考えたら成功率が上がるはずです。でも、今回、羽生さんのバラ1での4Sはまったく逆のケース。「曲を感じることができれば、4Sの成功の記憶が蘇る。だから、曲とプログラムを信じた!」のだと。なるほどね・・・。

一方で、Otonalの時の苦労もかなり率直にぶっちゃけてくれていますね(76頁)。

最近ずっと、なんかジャンプ跳ぶ前に、これをやって、こうやって、こうやって跳ぶ…みたいなイメージをすごくつくりながら跳んでたんですけれども、今回はホントに最初っから最後までもう…なんか、もう気持ちのままにというか、ホントにスケートが行きたい方向にすべて載せられたなっていう感覚が一番強いですね。

・・・やっぱりジャンプだとか、ステップだとかスピンだとかに、「何回回って…」とか「ここ注意して」っていうのが全然なかったので、自分の中では。もう何の雑音もなく滑りきれて。で、最後までその、ひとつの…ひとつの…なんだろう…気持ちの流れみたいなものを最後の音が終わって、自分が手ぇ下ろすまでつなげられたっていうのが、一番心地よかったなっていう気持ちでいます。

全日本でのOtonalも十分に素晴らしい演技だと思ったのですが、羽生さん自身の精神状態は「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と「忙しい状態」だったのでしょうね。それが、バラ1だと、たとえジャンプ構成が同じであっても「無心」でこなすことができる。そりゃ、ぜんぜん違うはずです。

ただ、こうも語っています(76頁)。

――静けさも、激しさもあって。

やっぱり、その…「オトナル」をやったからこその、なんか…表現の仕方っていうか、「深み」っていうのも、やっぱり増えたと思っていますし、何よりやっぱり、曲をすごく感じることをしながらも…あの…すごくクオリティの高いジャンプを跳べたっていうのは、なんかやっぱり、このプログラムならではなのかなっていう感じもしています。

ライストで演技を見た時も、「前よりも動きにメリハリ出てない?」と直感的に感じたのですが、やはり、Otonalのエッセンスも生かされいるのでしょうね。改めて、「こんなに素晴らしいバラ1を披露してくれてありがとう!」と、心から感謝の気持ちでいっぱいです。

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. ととちゃん より:

    私も オトナルは充分羽生選手のものになっていて、戦えるプロだと思っていました。でも
    振り返れば オータムで披露した元祖オトナルが、本当に曲と動きがマッチした構成だったのでしょうね。勝つために構成を変更せざるを得なかったこと自体、辛かったのでしょうし、結果として、確認しながら演技を進めることになったのでしょう。

    ただ、そういう経験をちゃんと生かせるのが羽生選手ですよね。世選でも、これぞ羽生結弦という演技が見られることを楽しみにしています。

    ところで、これ程のプロのあと、次のシーズンは一体どんな曲を選ぶのでしょう。曲を選び、自分のものにする充分な時間があることを願っています。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      OriginをSEIMEIに変更するだけなら、分かるんですが、Otonalまでも・・・とはビックリしました。

      プルさんやマートンさんに配慮して・・・ということなのか?と私は思うのですが、羽生さん本人は、もし実際にそうだとしても、語ることはないでしょう。

      前もどこかで書きましたけど、競技用プロは、べつに新作じゃなくてもいいかな?という気がしています。その分、FaOIのコラボは頑張ってもらいたいかな、とは思いますが。