

ABEMA将棋チャンネルでの放送は「こちら」。両者の対戦成績は、藤井聡太名人から見て「22勝8敗2千日手」です。
「藤井・永瀬」のタイトル戦はずいぶんと見てきました。時系列で並べてみます。
・第93期棋聖戦五番勝負(2022年)3勝1敗で藤井棋聖が防衛
・第71期王座戦五番勝負(2023年)3勝1敗で藤井七冠が奪取(*八冠達成)
・第72期王座戦五番勝負(2024年)3勝0敗で藤井王座が防衛
・第74期王将戦七番勝負(2025年)4勝1敗で藤井王将が防衛
藤井聡太さんが初めてのタイトルを獲得したのは第91期棋聖戦五番勝負(2020年)で、当時の渡辺明棋聖から3勝1敗でタイトル奪取を果たしました。そこから永瀬さんの棋聖挑戦まで丸2年かかっているので、待望の対決となったわけですけど、その後の4度のタイトル戦ではスコア的には一方的な結果となっています。
藤井さんと永瀬さんは「研究パートナー」として知られていて、藤井聡太四段・永瀬拓矢六段時代から定期的に練習対局を行ってきました。永瀬さんが「藤井聡太さんの棋風を一番知っている」というのは誰もが認めている所ですが、裏を返すと、「永瀬さんの棋風を藤井さんも熟知している」のも事実で、結局それがスコアに表れていると言えるかもしれません。
じゃあ、「他の棋士のタイトル挑戦が見たいか?」と言うと、そうとも言えなくなっています。実は藤井さんと番勝負で接戦になりそうなトップ棋士がどんどん減っています。2020年頃は、渡辺明九段、豊島将之九段と数多くのタイトル戦でぶつかりました。佐々木大地七段とは棋聖戦・王位戦のダブルタイトル戦がありました。羽生善治九段との王将戦、広瀬章人九段との竜王戦では藤井さんは二敗を喫したものの防衛。菅井竜也八段の叡王戦・王将戦での挑戦も退け、若手の佐々木勇気八段を竜王戦で、増田康宏八段も棋王戦で破りました。唯一失冠を経験した伊藤匠叡王とも、竜王戦・棋王戦では圧倒的な内容で勝っていました。
タイトル戦未登場の有望株と言えば、服部慎一郎七段か藤本渚六段ぐらいですが、たとえ戦績面で有望とは言っても、それはもう彼らが挑戦者になってからの話です。というわけで、内容面でも接戦の将棋になり、実際に挑戦権を獲得できている永瀬さんが、「対藤井戦で最も好勝負の可能性がある棋士」となります。現状、「永瀬一択状態」と言えるでしょう。
1月~2月に行われた王将戦七番勝負も、作戦選択の面では永瀬有利になった将棋もあったものの、最終盤で逆転される場面を何度も目撃しました。永瀬さんもそこは承知しているはず・・・。将棋というのはいきなり終盤力がつくというものでもないので、「接戦にならないような必殺の作戦でもって、逆転の隙を与えないような大量リードで勝ち切る」というのが理想ではあります。
それが藤井さん相手にできるのか?と言うと、いくら藤井さんとは言え「なすすべなく負けた将棋」というのは実際にあるんです。昨期の将棋で私が思いつくだけでも、佐々木勇気八段(佐々木先手)との竜王戦第二局の矢倉戦、同じく佐々木勇気八段(佐々木先手)との竜王戦第四局の角換わり戦(早繰り銀から腰掛け銀への組み換え)、服部慎一郎七段(服部先手)との朝日杯の矢倉戦、糸谷哲郎八段(糸谷後手)との叡王戦の横歩取り戦、以上の4局です。
藤井さんが「自分が完敗した将棋」の対策を準備していることは想定できるところですが、永瀬さんがそれを上回る研究を発見できるかどうか?藤井さんと言えども、コロっとやられた将棋もあるわけで、ぜひ永瀬さんにはそこを突いて頑張っていただきたいです。
では、また明日!
Jun
