「フィギュアスケート・カルチュラルブック 2019-2020」(2)

「フィギュアスケート・カルチュラルブック 2019-2020」(2)

覚悟はしていたとはいえ、19-20シーズンが突如終わってしまいました。まだSOI(横浜&八戸)の中止は正式にアナウンスされていないとはいえ、ほぼ間違いなくダメでしょう。・・・というわけで、あとは、ひたすら雑誌・書籍を読み漁るのみですね。

まぁ、急ぐ必要もないので、引き続きカルチュラル・ブックを見ていきます。今日は、伊藤聡美さんへの取材記事をご紹介します。

表紙が4CCのSEIMEIなので、当然ながらこの新しい衣装の「製作秘話」が気になっていることでしょう。

(1)年が明けてから突然の連絡

「プログラムを戻す」という連絡は、2020年になってからとのこと。「四大陸選手権から、フリーのプログラムを『SEIMEI』に戻すので、改めて衣装を製作してほしい」というお願いだったそうです。

『SEIMEI』の衣装は、作るのがとても大変なんです。今まで作った衣装の中でもパーツ数がとても多い。あの難しい衣装を、大会までの日程を考えてみると、ひと月もないくらいで作らないといけない。ともかく完成させなきゃ、と思いました。もうとにかく、それで必死でしたね」

やはり、衣装の依頼は年が明けてから。4CC「から」ということは、SEIMEIを滑るのは4CCのみの一試合限定ではなく、少なくともワールドも含めた最低2戦は滑るつもりだったであろうことが、想像されます。

「パーツ数が多いので作るのが大変」というのは興味深い。伊藤さんが作る羽生さんの衣装は、OtonalやOriginも細かな装飾が駆使されていて大変な労作だと思いますが、SEIMEIの衣装は構造が複雑なのでしょうね。

(2)色のリクエスト

「(リクエストは)襟の部分は黄緑をメインにボルドーとゴールドも入れること、装飾は前回と同じようなイメージで、ということくらいでした」

ただし、黄緑といっても、いろいろな種類があるため、いくつか写真で送って、色を決めてもらったそうです。私の印象では、あの明るい黄緑は、これまでのバージョンとはまた一味違った「軽さ」があって、イメチェンとしては成功だったように思います。

(3)4CC開幕へ

羽生さんは、予備として平昌オリンピックのときの『SEIMEI』の衣装も持って韓国に行っていたと思います。どちらを着るのか、事前に分からなかったので、黄緑の衣装だったときは、安心感というか、よかった、と思いました」

羽生さんは、人一倍義理堅く、気遣いの人ですからね。伊藤さんのご苦労を分かっていたはずで、彼に限って「着ない」という選択肢は無かっただろうと思います。この部分を読んで、「なぜ不安だったの?」と私なんかは疑問に感じたのですが、他のスケーターはそうではない、ということなのかもしれません。私の想像です。

『SEIMEI』の衣装を作る際の様々な工夫や、羽生さんとの意見交換等については、ここでは紹介しません。ぜひ本書を手にとってお読みください。

さて、先日ご紹介したマッシさんの特別寄稿も、最後の部分はハッとさせるものでしたが、今回の伊藤さんへの取材記事も、実にうまくまとめたなぁ・・・と、編集者の手腕に唸らされました。

羽生さんの衣装については、いろいろ作りたい構想があります。浮かんでいます。羽生さんでないと着ることのできない衣装があると思うんです。氷の上に立ったときの存在感、それだけで衣装のイメージが出てくる、作りたいとなる、それが羽生さんですね。これだけイメージを広げられる選手は……現状、男子ではいないですね。やっぱり、特別だと思います」

「作りたい衣装のイメージですか?具体的に考えている衣装デザインもあります。いつか集大成を迎えるときは、色合いも含めて、こんな衣装を、というアイデアが実はあるんです。実現したら良いですね」

あのクールな語り口の伊藤さんが、こんなに熱っぽく語っているのは、ちょっとした驚きです。そう考えると、北京五輪のシーズンで新プロをやってほしいという気持ちもあるのですが・・・。さて、どうなるか、楽しみですね。

羽生さんの呼吸が弾んでいるようなので、スケーティングの全体練習の直後に、「さあ、4人でメッセージを届けよう!」となったのでしょうか。

タイミングといい、メッセージの内容といい、いつも羽生さんは的確。彼自身が自分のSNSのアカウントを持つ必要はないね!と改めて感じました。

では、また明日!

Jun


にほんブログ村

スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)

コメント

  1. ととちゃん より:

    集大成の衣装を作りたいと、製作者の意欲を掻き立てる存在って、そうはいないと思います。有名な画家が羽生選手を描いた絵が話題になりましたが、芸術に携わる人のインスピレーションのようなものを刺激し、熱くする何かを備えているのでしょうね。その衣装を是非見てみたいです。

    また、曲の何を表しているのかさっぱり分からない最近の男子フィギュアの衣装には疑問を持っていたので、伊藤さんのこれに対する意見にも深く頷きました。(実際、GPFフリーでネイサンを見たとき 驚愕しましたので)

    クリケット便り、姿を見、声を聴けて本当に嬉しかったです。刻一刻と状況が変わっているようで、皆が集まれた最後のチャンスだったでしょうか。スポーツ施設の当面の閉鎖が決まったカナダで、クリケットはどうなのか
    心配ですが、どうか健康で過ごしていて欲しいと願っています。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      スピスケ風味の男子の衣装については、伊藤さんは、他の雑誌でも言及していましたね。

      ただ、伊藤さんは伊藤さんの道を歩めばそれでいいと思います。世界中の女子スケーターから仕事が殺到しているはずで、それも、オフシーズンだけ製作に集中すればいいのではなく、今回のSEIMEIのような突発的な依頼も来たりする。しかも、それを着てくれるとは限らない・・・。肉体的にも精神的にも疲弊する仕事だろうなと想像します。しっかり、休んでもらいたいですね。