これを一つのきっかけに!「AERA 2018年 7/23号」

これを一つのきっかけに!「AERA 2018年 7/23号」

2018年7月14日発売。税込み価格「390円」。

スケオタにはお馴染みの後藤太輔記者による「羽生結弦がくれたもの」と題した記事です(35~38頁)。

まず、この記事を読んだ私の率直な感想はと言うと、

「後藤さん、このテーマで、羽生君に新書を書いてもらってください!」

ということです。実用書・一般教養書のような形で、新橋のリーマンから、主婦から、受験生まで、勉強・仕事術から、人生設計に至るまで、示唆に富むメッセージ満載の良書ができると思うんですよね。

本書の目次には「国民栄誉賞受賞会見で繰り返した『みなさま』の意味」「短い練習時間で効率的に成果を出す」「『長時間労働』『滅私奉公』とは対極の新世代」という文言が並んでいます。個人的には、やはり「練習スタイル」の部分が印象に残りました。

けがや病気を避けるために、羽生は練習時間を短くした。週に4日か、多くても5日。氷上練習は2時間程度だ。日本の他の選手が、週6日や7日、1日に4時間前後も滑るのと比べると短い。その分を「研究」で補った。成功するジャンプに共通する体の動きなどを「最大公約数」と呼び、ノートに書き留めてきた。「どこがだめだったのか、どこが良くて跳べたのか。そこをどんどん突き詰めて、自分の理論を確立させる。絶対見つけなきゃいけないポイントみたいなものが見つかってくる」と羽生は語った。

・・・日本のスポーツは、長時間練習を美徳としてきた。スポーツの世界だけではない。何か一つのことに長い時間を費やすことを、日本人は尊ぶ。長時間の努力が良い結果をもたらすことは、もちろんあるが、負の側面も語られる。日本の長時間労働は、悪い面の一つだろう。社会が、滅私奉公できる人材を求め、部活のようなスポーツも、そんな社会が求める人材を生産していた側面がある。

ほんの数日前、ランビさんの「女子に短期的に技術を詰め込むやり方を危惧している」という発言や、中野先生のチームでの「曲かけ時のミス止めルール」など、若いスケーターたちの身体に負担を強いる練習を、しかも長時間やらせればいいってもんじゃないという、「新たな動向」をご紹介しました。もちろん、クリケット移籍後の羽生君の「練習時間の短さ」にも触れました。

さらに、陸上競技の為末大さんの「ルールや秩序(つまり上司の命令)に従順な子どもを大量生産するためにスポーツ(部活動)が利用されてきた」という発言も取り上げました。「日本の大企業ほど体育会系出身者を好む」っていう話です。まさに今回の後藤太輔記者の問題関心とバシっとハマっていて驚いています(笑)。

「大新聞の記者なんて、まさにその長時間労働と滅私奉公を強制される職種の最たるものでは?」とツッコミたくもなりますが、でも、それは彼自身が「新しい倫理観」の持ち主で、同業者に向けても主張しているのだと、受け止めることにしましょう。

そして、今回、後藤記者はもうひとつ重要な指摘をしています。

平昌五輪前は、右足首を捻挫して約2カ月間休み、本番までの練習期間は1カ月ちょっとというなかで金メダル。一定期間、休んだとしても、短い期間で休養前の感覚を取り戻せるのは、短い練習時間でいいパフォーマンスをするための取り組みをしてきたからだろう。

つまり、「長時間の猛練習は、ケガのリスクが増えるだけでなく、それだけを頼りにしていると、ケガからの復帰にも時間がかかる」とも言えますね。

ただ、「Ice Jewels Vol.08」のインタを改めて読んでみると、羽生君は、単に練習時間を短くして、イメトレや研究に時間を費やしたから平昌五輪で勝てたとは語ってはいません。むしろ、この調整方法は、「バラ1」と「SEIMEI」だったから、プログラムが身体に馴染んでいたし、曲の聞き込みも違っていたので、上手くいったという話です。

もう一つ、ジュエルズでは、「(ロステレ杯の時期のように)身体の調子が良すぎると、自分の実力ギリギリを追い求めてしまう」という話もありました。練習で調子が良くて、実際の試合で高難度ジャンプを何本も組み込んでも、それをプレッシャーのかかる本番で成功できるかはメンタルも関わってくる。身体と精神のバランスの大切さも語っていました。

この辺りはコーチのアドバイスが決定的に重要で、このような話を羽生君がしていることが、彼が指導者というものを徐々にイメージしている証なのかなと。調子が良すぎる選手にどうブレーキをかけるか。ケガ明けの選手をどう導いていくか等々。

もちろん、羽生結弦という天才的なスケーターだから、短い練習時間で結果を出せたと言えます。でも、五輪を目指すようなスケーターでなくとも、いや、広くテスト勉強から日々の仕事術に至るまで、示唆に富むアイデアが詰まっているなと思います。私も、TOEIC受験の際には、羽生君やブライアンの考え方は大いに参考にさせてもらっているので。

冒頭の「新書案」の話は、わりとマジなお願いです。書き下ろしではなく、語りおろしでも新書は作れますし、スカイプでも何でも、彼がトロントにいる期間であっても、ナンボでもやり取りはできるはずなんですけどね。ベストセラーになれば、それをまた復興のために役立てることもできます。

後藤さん、あなたならできますよ。お願いします!

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. マリィ より:

    こんにちは
    遅ればせながら、ブログ再開ありがとうございます。
    突然なくなりやっと探して見つけました。
    ツイッターはやらないので理由はよくわかりませんが、また会えて嬉しいです。
    色々大変だったご様子でお疲れ様でした。
    私もなんか書いちゃいけないコメとかしてしまったんじゃなかろうかと思ったり。

    そろそろ平昌五輪以降の本が欲しいなと思っていたので助かります。
    junさんのブログを参考にしてから購入を考えようと思っていました。
    この記事は日本全体で考えて欲しいですね。
    過労死のない日本にして欲しいです。
    我が家も将来の社会人を育てているのですから。
    コーチが頼りないですが(笑)
    自分で体験しなくてはなかなか学べないし、それを指導するのは大変だなって、育児の中で思います。
    現在進行形で奮闘中です。
    羽生くんに日々の元気だけでなく生きて行くヒントも学ばなければ、と思います。

    • Jun より:

      マリィさま

      「書いちゃいけないコメ」なんてとんでもない!私のミスが招いたことなので、まったく気にされる必要はありませんよ。

      羽生君のとくにここ最近の発言には、実用性の高いテクニックも大いに詰まっていて、やはりブライアンの薫陶を受けているからこそ、彼自身もそういうマインドになっているのだと思います。

      ただ、我々ゆづファンがいくらその素晴らしさを主張しても、「どうせファンが言ってもなぁ・・・」と理解してもらえない部分もあります。ぜひ、一般教養書や実用書のような形式で、出版化してもらいたいものです。

  2. おの より:

    AERAは、Webの記事が酷かったので、すっかり信用無くしてますね
    どうして同じ会社なのにこうも違うのか?
    社内での会話は無いのでしょうか

    後藤さんはちゃんと羽生くんを見ていてくれました。
    私も偏見をもたず本屋に行って確認したいと思います。
    Junさまのブログは、ちゃんと読んで書いてらっしゃるので、とても参考になります
    暑い日が続きますが、ご自愛下さい。
    と、書いてる自分は全然ダメなんですが…(笑)

    ではでは、また(^^)

    • Jun より:

      おのさま

      朝日新聞も大きな会社ですから、そりゃやっぱり、いろんな立場の意見の持ち主が共存しているんだと思います。真っ先に思い浮かぶのは、平昌五輪の直前、あの中京大学の湯浅教授に取材したデタラメな記事が朝日に掲載されたことがありました。フィギュアのことをまったく知らない科学部の記者が書いたものだったはずです。

      暑いですね!私自身、クーラーは苦手だったんですけど、今年は健康第一を考えて、しっかりクーラーを使っています。おのさまも、くれぐれもお気をつけくださいませ。