「マガジン」のレビューの続きです。今日は「記者座談会」からピックアップしてみます。
今回の座談会は、高木恵記者、小海途良幹カメラマン、吉田学史記者の御三方。吉田さんは数年前にヨーロッパに転勤となったことで久々の参加となりました。
高木「・・・宮城でそれ(Danny Boy)を見た小海途さんが『3本の指に入りますね』と言っていたんですよ。そうしたらテレビ局のプロデューサーの人が『小海途さんが3本の指に入るって言ってましたよ』って、羽生さん直々に言ったんですよ(笑)」
小海途「あの時は、プロデューサーの人と高木さんと3人で、あくまで内輪の話で言っていたんですが、まさか本人の耳に入るとは思いませんでした(笑)。訂正しますと、ものすごく好きなプログラムだったので、勢いで『僕の中で3本の指に入ります』と言ったんですが、『1本目がバラ1、もう1つが…』と、なかなか出てこなかったんです。で、『2本の指に入りますね』って訂正したんですが…」
――羽生さんはどういう顔をしていたんですか?
小海途「どういう顔もなにも、見れないですよ。実際の話、恥ずかしくて(笑)。しかも上から目線に聞こえたらどうしようと、かなり焦りました」
ここは面白かったのでやや詳しく引用しました。まぁ、その衝撃は分かりますよ。私自身は初日の金曜公演の情報を完全にシャットアウトとして、土曜日の公演をライブビューイングで観て、もちろん「Danny Boy」のことは一切知らなかったので、「こんなプログラムいつ準備していたの?」とビックリしましたから。羽生さんと言えば、ピアノ曲の名プロはたくさんありますけど、クラシックか、あるいは日本の楽曲が中心で、海外のモダンなピアノソロ曲っておそらく初めてだったと思うんです。まずそれに驚かされましたし、ガチっと筋肉質の身体で全身白の衣装を身にまとっていた効果もありましたが、繊細さと力強さが同居した演技に「間違いなく羽生結弦の新境地」を確信させる演目でした。情報量の多いRE_PRAYの各プロと比べて、行間・余白を味わう楽しさも併せ持っていって、とても新鮮でしたね。
吉田「・・・あとは、以前に彼自身も言っていた後進の指導ですね。日本人でもいいし、日本人でなくてもいいし、新たな指導者像をつくりあげてほしいなという感じはします。彼は振り付けにも興味があるでしょうし…」
個人的にはまったく賛同できない意見なんですが、吉田さんはおそらく、羽生さんのプロ転向後の動向を逐一チェックされていないはずで、そう考えると「標準的・一般的な意見」として、ライトなファンの方もこのような考えをお持ちなんだろうなと思います。でもね、もしかりにそれが実現したとしても、お弟子さんもその親御さんも、偉大な師匠とつねに比べられて大変ですよ。例えば、羽生善治九段は弟子を取っていないのですが、単に多忙ということもあるんでしょうが、「師匠は中学生でプロになっているのに、弟子は何やってんだ?」と常に言われるだろうし、まぁ、取らないでしょうね。おそらく藤井聡太さんも弟子は取らないはずです。
ところで、大谷翔平選手のようなアッパースイングを小さい子どもたちが真似しょうとするので、現場の指導者は困っているみたいですね。あのスイングは、スイングスピードが前提になってくるし、そのボールを打ち上げずにスタンドインさせるようなパワー、つまり屈強な体格も必要になってくる。そんな簡単に真似できたら、日本人の打者はみんなメジャーで活躍できてるわけで。
羽生さんの話に戻ると、彼は東北・宮城のスケート環境(スケートリンク)の維持のために、特にアイリンにはずっと寄付をしてきました。一度にあれもこれもできるわけが無いことは、聡明な彼は承知しているはずで、いまはプロスケーター業に全力投球でしょう。それでいいと思います。
では、また明日!
Jun