ワールド(男子フリー)感想(2)

ワールド(男子フリー)感想(2)

今日は、男子フリーの最終グループを滑走順に振り返ります。リザルトは「こちら」。フィギュアスケート速報さんは「こちら」。フジのワールド特設サイトは「こちら」で。

ヴィンセント(7:29~)。フリーは186.99の3位。合計281.16の3位。この選手は、たとえ4回転の本数が多くとも「転倒やパンクが少ない」という強力な武器を持っています。しかし、回転不足を取られるかどうかで順位が大きく変動するというのを、今季は何度も見てきました。ショートでは、4T-3Tおよび3Aはセーフでしたが、4SにUR。

そしてこのフリーでは、単発の4Tと3連コンボの3FにURがつきましたが、私の肉眼では、フリーで跳んだ3本のクワド(4Lz-3T、4S、4T)と2本の3Aのうち、どれがURで、どれが足りているか、まったく分かりません。ギリギリを攻めているとも言えますし、改善されていないとも言える。今回の台乗りは見事でしたが、来季も苦労するような気がします。

宇野選手(15:36~)。フリーは178.92の4位。合計270.32の4位。ゆづファンの中には、日本スケ連の幹部連中の愚行について怒り心頭の方はいらっしゃると思いますが、もはやこの選手についてアレコレ言いたくなる方は、このワールドを終えてかなり減ったんじゃないかと思います。大会に際しての代表記者会見で、羽生君に質問が集中した時に、首をカクカクさせてニヤついた態度を見せていたのも、もはや遠い昔の出来事のようです。

冒頭2本のクワドが転倒扱いにならないのは、尻や太ももが氷上についていない(転倒扱いだったショートの4Fと比べると、そう解釈するしか無い!)という判断でしょうか。ただ、ヴィンセントの判定に明らかなように、今大会は全体的に回転不足の判定が甘めにも関わらず、このフリーでは2本しっかり取られているので、よっぽど酷いということなのでしょう。後半の4Tのコンボ抜けでは、身体は一瞬ピクっと反応していましたが、あの減点は痛すぎました。今シーズンを通して、彼は「かつて出来ていたことがどんどん出来なくなっている」というのが率直な感想です。

リッツォ(23:55~)。フリーは164.29の10位。合計257.66の7位。ショートのあの動きを見ていたら、フリーも相当なパフォーマンスを見せてくれるのでは?と期待していたんですが、冒頭の4Tで転倒とUR。3Aで着氷の乱れ(この詰まった着氷でもURを取られないのが、今大会の特徴ではないかと)、他にも3A-2Tのセカンドトウは足りない気もしますが、 でも演技自体は、しっかり立て直してましたね。ボディバランスの本当に良い選手なので、今後ロシア勢を脅かすようなヨーロッパを代表するシングルスケーターに成長すると私は見ています。

国別の代表にすぐ選ばれるかと思っていたら、まだイタリア男子はグラッスルしか発表されていないようですね。今季は、昨シーズン同様に出ずっぱりで疲労も気になりますが、ぜひ福岡にも来てもらいたいです。

羽生君(31:47~)。フリーは206.10の2位。合計300.97の2位。そういえば、蒲田さんのアナウンスって、「Yuzuru Hanyu」ならnyuに、「Shoma Uno」ならnoにアクセントをつけていて、日本選手だからわざと日本風の読み方で発声しているのかな?なんて気になっていました。

それはともかく、フジのYouTube垢のOrigin単体の動画、捕獲した地上波番組のチェックも含めると相当な回数を見てきていますけど、何度見ても手に汗をじわっとかくし、興奮が蘇りますね。このOriginのフジの生放送の演技を見た直後、スコアが出る前からテレビに向かって拍手をしていたんですが、平昌五輪のSP・フリーの時はどうだったか、実は記憶が無いんですよね。ソチは夜中だったから絶対やってないですけども。

完璧なノーミスの至高のフリーといえばヘルシンキホプレガ。世界にその名を知らしめた渾身のフリーといえばニースロミジュリ。適切な枕詞が思いつかないですけど、私の中では、この19年のさいたまワールドのOriginは、その2つに次ぐ名フリーだと思っています。

平昌五輪のSEIMEIは、羽生君が宮根さんとの対話で「ゾーン」の話をしていたからではないですが、個人的にはバラ1の方が衝撃的でしたし、15年のGPFのSEIMEIも、そもそも長野のN杯のSEIMEIが凄かったので、そこまでドラマティックな印象はなかったかなと。この辺りの議論は、機会を見つけてまたじっくりやってみたいなと思います。

ネイサン(41:50~)。フリーは216.02の1位。合計323.42で優勝。4Fと3連コンボの着氷はお世辞にも美しいとは言えないですが、冒頭の4Lzおよび4Tはきっちり降りて、苦手の3Aも1本に留めることで、なるべくミスを減らすように考えられた構成だなと。

PCSについては色々と言いたいこともありますが、羽生君が、SEIMEIやホプレガのような「完全戦闘モードのプログラム」をノーミスで演じきれば、間違いなく97~98点は出せると思うので、心配しなくていいんじゃないでしょうか。

ジェイソン(49:52~)。フリーは157.34の14位。合計254.15で9位。冒頭の4Sは転倒とDG。2本の3Aのうち、一本は着氷の乱れに留めましたが、後半はパンクしてしまって、いくら彼の高い技術と表現力をもってしてもスコアは伸びませんよね。

しかし、「ジャンプ偏重」と言われる現行ルールにおいて、今季に限ってもフリーで大きく順位を下げる屈辱を何度も味わいながら、それでも4Sや3Aの完全習得に向けてチャレンジし続けている。そのファイティング・スピリットは素晴らしいと思います。まだまだ道半ばですが、彼もこのフリーを笑顔で終えているのは、「まだまだやれる!」と思っている証拠でしょう。ぜひクリケットでのトレーニングを通じて、それを実現してほしいなと思います。

羽生君の「勝ち負け」が関係しているグループのレビューなので、一つ前のグループに比べると、なかなか平常心で論評できないのが辛い所です。このさいたまワールドは色々と言われましたけど、来年はカナダ開催ですから、「さいたまの方がマシだったじゃん!」なんてことにならないよう、特にジャッジングシステムが安定してくれることを願います。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. ととちゃん より:

    最終グループのまとめ、ありがとうございます。

    ヴィンス、回転不足との戦いの1年でしたが
    最後に表彰台を射止めて良かったですね。フリーの音楽は好きな曲なんですが スローなパートに長い助走が被るところが退屈で、来季はアップテンポな曲を見てみたいです。

    宇野選手のステップアウトは転倒扱いじゃないんですね。ふとソチの羽生選手のフリーを
    思い出しましたが、3Fが転倒になっていましたね。違う大会とはいえ、ちょっと?です。
    彼のピークは2017ワールドだったと個人的には思っています。

    ネイサン、4Lzは正直ボーヤンの方が綺麗かな、と。彼のジャンプには美しさを余り感じないのです。でも全ジャンプ成功はお見事でした。

    羽生選手のOriginは、怪我明け12点差という背景に加えて前日の公開練習での鬼気迫る様子も相まって、心を揺さぶられる名フリーに
    なったと思います。何度も繰り返し見ていますが、ジャンプの着氷は幾つか、羽生比で詰まったものがありました。それでも私にとってはヘルシンキ越えでした。実は、あの年のフリーに関しては四大陸をより多く視聴していて、個人的にファイターな部分が垣間見える内容の方が好きなのかも知れません。

    ともあれ 今後の羽生選手の挑戦にまだワクワク出来る幸せを感じています。足の状態と相談しながら、最適な方法で戦っていけたらと願います。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      ヘルシンキホプレガは、何から何まで完璧な「芸術作品」の域に達しているので、ハラハラ感が無いというのはあると思います。

      一方、ニースロミジュリや、さいたまOriginは、ミスがありながら、もがきにもがいて頑張ったある意味で人間くさい内容で、人生そのものなんですよね。そういう演技には私のような凡人でも感情移入できる部分もあって、「おれもがんばろう!」という勇気ももらえる。

      18-19シーズンに限ると、完璧な演技はロステレOtonal、熱くなる演技はさいたまOriginということで、これから何度も見ることになるだろうな・・・と思っています。

  2. Fakefur より:

    この最終グループの演技を見ると、私も心がざわつき、今でも平常心で整理できないです。

    羽生選手のフィニッシュの表情が、一瞬ですが、ヘルシンキ世選のH&Lと同じ、野獣の表情なのです。勝負云々より、成し遂げた演技のレベルと燃やし尽くした熱量は同じだと思います。

    どこかのインタビューで、NHKのアナザーストーリーズのデュック・バトン、プルさん、ハビエルの言葉に励まされたと読みました。番組の最後に濱田岳さんのナレが「3レジェンドはこんなこと言ってますが、さて羽生さん、どう答えますか?」と締めていましたが、これ以上ない最高の答えを出してくれたんじゃないでしょうか。

    • Jun より:

      Fakefurさま

      バトンさん、ハビ、プルさんの件は、会場で販売されていたプログラム(「日本代表選手よりファンの皆様へ」の部分)に記載があります。
      以下、羽生君の部分をご紹介します。

      「今年の世界選手権は初優勝した2014年3月以来となる日本開催で、会場も前回と同じ。世界選手権が行われる場所は毎年違いますが、日本開催ということに特別な感覚がありますし、だから優勝したいという気持ちもあります。今シーズンは負傷がありましたが、ここに来るまでの日々で支えになったのは、ハビエル選手、プルシェンコさん、バトンさんの言葉と、皆さんが期待して待ってくださっていることです。(欧州選手権での)ハビエル選手の演技には心を動かされましたし、僕も強くなりたいと改めて思いました。オリンピックがないシーズンでは、この大会が一番の目標です。皆さんの期待も背負って、全力で頑張ります!」

  3. マリィ より:

    こんばんは
    今回の世界選手権は一言で語りつくせないですね。
    今期が終わってしまったと思うと今から羽生くんロスで脱力です。
    記者会見の羽生くんいじめも脱力ですが世界の人は擁護してくれているのは嬉しいですね。
    仰るように今回のoriginは伝説の演技に加わると思います。
    平昌も300点超えのNHK杯も私的にはGPFも緊張していっ時も目を離せませんでしたが、今回も息を呑んで応援でしたね。
    このままジャンプ偏重が続くのは男子女子怪我のリスクが高まるのも嫌だし心打つ演技が減るのも嫌ですね。
    やっぱり優雅な滑りが見たいです。
    現地のレポで誰が滑りが滑らかだったり所作が良いのか勉強になりました。
    ありがとうございます。

    • Jun より:

      マリィさま

      「羽生叩き」に加担している連中は、基本的に「嫉妬」がその根っこにありますよね。橋本も伊東も、そして某先輩もそうでしょう。

      結局、いまの自分の仕事や人生にイイカゲンな気持ちで取り組んでいるから、他人が気になって、嫉妬する。いい歳した連中ばかりなのに、情けなくなりますね。

      コリヤダは本当に所作がキレイですよ。テレビや動画での私の彼に対する印象は、「きちんとまとまり過ぎていて、おとなしい」というものだったんですが、現地で見るとすごく動きがシャープです。本場の国のバレエの正式なトレーニングを子どもの頃からみっちり受けている人は違いますね。