マガジンもマガジンだった!「フィギュアスケートマガジン 2018-2019シーズンレビュー」(1)

マガジンもマガジンだった!「フィギュアスケートマガジン 2018-2019シーズンレビュー」(1)

2019年6月27日発売。定価「1,290円」。「2018-2019シーズンレビュー」というサブタイトルで、しかも山口さんはすでにBB社を去った身ですから、いくら何でもバックナンバー並みのゆづ濃度は無理だろ?と想像していたんですが、完全に斜め上を行く特濃具合でしたね。「マイレピ・ロス」を忘れさせてくれるような充実ぶりではないでしょうか?

今日は、待望の高木恵・後藤太輔・吉田学史、3記者による「座談会」を見ていきます。すでに後藤記者はフィギュア取材の現場を離れていることもあって、「オリジナルメンバーの3人としては、今回が最後の座談会となる」とあります。しかし、羽生君がメラメラモードで新シーズンに向けて準備をしており、山口さんがBB社を離れても今回のような形での出版が叶ったのだから、今後「新メンバーを加えての座談会」の可能性は多いにありそうですね。さて、気になった部分を3点ピックアップしてみました。

(1)オータム・クラシックでの変化

吉田 あの日(オータム)は、最初にペン記者の囲み(会見)で、その時はまだ感情を抑えていたんです。ところが、去り際にあるライターがぼそっと何か言ったんですよ。その人の言葉は聞き取れなかったんですが、それに対して羽生選手が「勝たなきゃ意味ないんで!」と。

高木 顔は笑っているんだけど、どこかに「怒り」を含んでいましたね。悔しくて、悔しくてたまらないのに…。

後藤 でも、顔は笑っている、みたいな?

吉田 そう!でも羽生選手らしい、いい表情でした。

後藤 羽生選手はそうですよね。笑顔から悔しさがにじみ出てくる…。

高木 そう、まさにそんな感じでした。

吉田 ギラついていましたよ。

高木 囲みの時にひたすら、「ほんっとに練習します。ちゃんと練習します」と、ずっと言っていましたよね。

高木 オータムからヘルシンキにかけての進化が、このシーズンの羽生選手のすべてといっていいと思います。オータムが終わってメラメラきている羽生選手を見て、私もうれしくなりましたから。

吉田 取材している記者の多くも、きっとそう思っていたと思います。あの羽生結弦がこのままのわけがないって。そうしたら、一番最初の試合でいきなり来た!人と戦って、自分とも戦う、それが羽生選手だと思うので、それが戻ってきたことは、私もうれしかったです。

後藤 あくまで私の見方ですが、試合で負けたり、納得いかない演技だった日のほうが羽生選手の言葉は魅力的なんです。彼は勝った後もえらぶらないし、謙遜して話しますが、満足いかない結果や内容の時は、本心を言葉にしてくれる。負けた後はしゃべりたくないという選手がいる中で、羽生選手は納得のいかない演技の時こそ、興味深い言葉を口にするんですよ。

吉田さんが明かしてくれたエピソードはたいへん興味深いですね。そして、ぼそっと何かを言って羽生君にスイッチを入れてくれたライターさん、ありがとう!

後藤さんも、長年取材をされていて、よく分かっていらっしゃると思いました。もちろん、これが団体競技だとしたら、「負けた後に本心を言葉にする」というのは問題ですが、フィギュアスケートが個人競技でしかも対人競技でないからこそ、それが許される。「敗因こそすぐに詳しく分析し、それを言葉にする」という行為を繰り返してきたことが、羽生君自身の成長を後押ししたんだと思います。

(2)パトリック・チャンからネイサン・チェンへ

吉田 年下で脅威を感じさせる選手は、もしかしたらネイサン選手が初めてかもしれませんね。

高木 ああ、そうかもしれません。

吉田 羽生選手に確認したわけではないですが、「どうやったらこの選手に勝てるんだろう」と本気で思わせる年下の選手はネイサン選手が初めてだと思います。そもそも羽生選手が「人」を目標とするのは、パトリック・チャンさん以来でしょう。

後藤 少年時代にはいたかもしれませんが、シニアになってからは、チャンさん以来かもしれないですね。

吉田 原点に戻ったからこそ、2位ながら羽生選手の表情があそこまで明るかったのかもしれないですね。

ここで、ネイサンの名前しか挙がらないところが、さすがマガジン!と思いましたが、実際にそうでしょう。しかも、これは後述のクワドの種類を増やす話にも関係してきますが、PCSやGOEがジャッジのさじ加減でどうにでもなるという現状を見て、「TES(技術点)の暴力で殴りつけるような戦い方に自分も参入しないと、ネイサンには勝てない」と思ったはずです。

(3)全部のジャンプと北京五輪

高木 (羽生選手の19-20シーズンの目標は)簡単にいうと、4Aを決めてネイサン選手に勝つ。それに尽きると思います。

吉田 それが理想でしょうね。

後藤 羽生選手の性格からいって、両方できないと気が済まないでしょうからね。

吉田 ネイサン選手に勝つのと、4Aと、どっちかを選べと言われたら、「ネイサンに勝つ」ということになるのかなあ。

高木 世界選手権の囲みの最後に、プログラムに入れる4回転ジャンプの種類の話になって、「えっ、全部ってこと?」と聞いたら、羽生選手が笑顔で「アクセル跳んでフリップ跳ばないわけにはいかないでしょ」って、すごくうれしそうに言っていたんです。ああ、やる気なんだな、と。

吉田 可能性のある順番としてはルッツ、フリップ、アクセルになるのかな。ただ、羽生選手の技術をもってしても、この3つのジャンプを今季、完璧にやるのは至難の業といえるかもしれません。 それにチャレンジしている間に、北京オリンピックが来る可能性も、なくはないのかなと。

後藤 実際、北京オリンピックまでやる感じなんですか?

吉田 う~ん、2019-2020シーズン次第ではないですか?

後藤 羽生選手としては、五輪のプレシーズンまでやってみて、そこで北京を目指すかどうか判断するんでしょうか。

吉田 確かに(4回転)ルッツ、フリップ、アクセルと考えた場合、2年計画でもおかしくはないですよね。

なるほどねぇ・・・と思わず唸ってしまいました。さいたまワールドでネイサンに負けた後、すぐに、「ルッツもフリップもアクセルも」という話をしていましたけど、それを1シーズンですべてプログラムに入れられるとは、羽生君自身も考えてはいないはず。ならば、やはり北京シーズンの21-22あるいは、その前の20-21シーズンまで続けることを見越しての発言だったと、私も思います。

だからといって、オリンピック本番のプログラムで、すべての有力選手が「攻めの構成」を組むとは考えにくいですが、まさに吉田記者が本誌(24頁)で書いていますけど、平昌五輪において4Loが羽生君の持つ「ジョーカー」だったように、4Lz、4F、そして4Aをジョーカーとして持っておかないと五輪三連覇は「厳しい」と羽生君は感じているかもしれません。

他の部分はまったく目を通していないんで、明日以降もしっかり見ていきたいと思います。やっぱりマガジンは読み応えたっぷりです。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. おの より:

    そうですか!
    Junさまの記事を読んで買いたくなりました
    え?まだ買ってないの?と、言われそうですが、実は色々あって家に居ません

    明日帰るので、本屋にいってみようと思いますが、もう無いかも知れませんね
    その時はポチろうと思います
    なるべく本屋で買いたいので、予約してなかった…
    明日も楽しみに待ってます

    • Jun より:

      おのさま

      マガジンはそんなにたくさん印刷しないはずなので、お早めの入手をオススメします。

      内容はバックナンバーと同様の質と量を誇っていますので、中身を確認せずにネットでポチっても問題ないと思いますよ。

  2. ごろ寝 より:

    もう雑誌は止めよう、と厳選しているのですが・・・
    小海途&長久保氏photoはマストで買い、kiss&cryは写真に負け ・・・

    JUNさんレポでマガジンも買うしかないです。写真よりはテキストは是非残したいので、マガジンはやっぱりマストですね。

    余談ながら、何やらスケ連公式が不快極まりないらしいですね。「どの口が言う」とご立腹なのはごもっとも。正論はどんどん発信なさってください。
    橋本氏に重要なのはと「カバン」と「確実な票」だけ。フィギュアも、ましてフィギュアファンの「戯言」など歯牙にもかけていないと思います。
    家人は某マイナー競技の関連団体のスポンサー企業。利害で成り立つとはいえ、時に素も見える。スケートは金の流れだけ把握していると思っているのが良いかと。

    • Jun より:

      ごろ寝さま

      平昌オリンピックを終えて、しょーもない雑誌がかなり淘汰されて、生き残ったのはいい雑誌ばかりだなと感じます。

      かつての私は、何でもかんでも購入してブログで紹介していたんですけど、いまは、ジュニアの試合のレビューをするようになって、そういうものを買ってる場合じゃないという感じになりました。それは、表紙だけで釣ろうとする老舗雑誌も同じです。

      これからも、良いものだけを厳選してご紹介できたらと思います。