山口さんをも変えた「戦う男・ゆづ」。「フィギュアスケートマガジン 2018-2019シーズンレビュー」(2)

山口さんをも変えた「戦う男・ゆづ」。「フィギュアスケートマガジン 2018-2019シーズンレビュー」(2)

もし山口真一記者が、18-19シーズンも、例年通りにトロントから羽生君を取材し、マガジンも何冊も出ていたら、「FaOI完全収録」なんて実現していたでしょうか?

不幸中の幸い?怪我の功名?適切な言葉が見つからないですが、結果的に素晴らしい内容のものを届けてくれて、しばらくこればかり読んでいたいですね。

昨日、「座談会」を読んだ後は、「1年ぶりの「羽生結弦取材」を終えて それが人生をかけたものなら、やめる必要なんてない。」(44~45頁)という、山口さんのエッセイを開きました。

まず、前半部分を読んでいて率直に感じたのは、「平昌五輪で、山口さんも燃え尽きたんだなぁ・・・」と。「羽生結弦は、戦うスケートを卒業したのだ」という認識だったと語っていますね。そして、自身のルーツであるアイスホッケーが「どんどん落ちぶれている」現状に「見て見ぬふりはできない」という思い。だから、「俺は新しい世界に行く。読者の期待に背くのだから、二度とこの業界の敷居はまたがない。そう思った」と、BB社を退社。フィギュアスケートはもちろん、テレビすらつけない日々が続いたといいます。

そっか・・・。羽生君が「戦うスケート」をやめるのであれば、これまで以上の熱量に満ちたマガジンを作るのも難しい。もちろん、我々ゆづファンはマガジンを待ちつづけていたわけですが、良いものを作れずに読者をガッカリさせるぐらいなら、記者をやめてしまった方がいい。そんな「葛藤」があったのかもしれませんね。我々が、マガジンに毎号フィーバーしまくったことが、山口さんを追い詰めてしまっていたとしたら・・・と、申し訳ない気持ちになりました。

ただ、当のアイスホッケーの関係者からの「俺と知り合ったのは、フィギュアスケートの取材をやってたからでしょ?」という一言だったり、出版関係者からの「フィギュアの記事を書いてほしい」というラブコールから、再びペンを持つことを決意。さいたまワールドから、モニュメント発表式、そしてFaOI幕張にまで山口さんが足を運んだことは、本誌で明らかになっています。

人間は、経験を重ねることで変わっていく。最終的な答えと思っていたものが、時間の経過とともに変容していく。いったん下した答えの通りであっても、異なるものであっても、それが人生をかけたものであれば、その時間を思いのまま生き切ればいい。

2018-2019シーズン、羽生結弦が自らのスケートを通じて伝えていたのは、そのことだった気がする。フェイドアウトすることなく、痛みと向き合い、自分の人生を生き抜く。モスクワで、埼玉で、生きることの意味そのものを、羽生は私たちに見せてくれていたのだと思う。

まぁ、何か新しいことにチャレンジするにしても、いつどんな経験が役に立ってくるか分からないですよね。山口さんの場合、フィギュアスケート、特に羽生君に対してあれだけの取材をしてきたからこそ、アイスホッケー関係者からも一目置かれていたのかもしれません。他の同業者とはちょっと違うぞ?と。

そう考えると、程度の差こそあれ、物事を細く長くでも継続することって、大事だなと思います。その経験に深みが出てくる。自分の言葉で語れるようになる。

私もブログを始めて(前身ブログを含めると)約3年が経過しましたが、羽生君やフィギュアスケートについて、少しは自分の言葉で語れるようになっているでしょうか?その辺りの評価は、読者の皆さまに委ねることにしたいと思います。

では、また明日!

Jun

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)

コメント

  1. ととちゃん より:

    マガジン、私もまだ全部は読めていないんですが、昨日アップして下さった座談会と今日の山口さんの記事は目を通せました。これだけでも相当中身が濃く、本当に買って良かったと思っています。

    座談会は、実際に取材に当たった信頼に足る記者の言葉によって、改めて当時を振り返ることが出来、羽生選手の凄さを再認識できました。

    また、山口さんのコラムには、自分自身紆余曲折を経た人だからこその視点があり、胸を打たれました。
    試合の経過を無機質に記述するだけの雑誌にはない血の通った文章で、junさん同様、ずっと読んでいたいと思う内容でした。
    junさんのブログは3年続いているんですね。
    junさんの意見や感じ方は私にとって1つの指標となっています。お忙しいと思いますが、ずっと続けて頂ければと願っています。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      大手の記者さんたちの座談会ではあるんですけど、マガジンだからこそ、不自然な忖度抜きで、貴重なエピソードを語ってくれてますよね。

      私は、吉田記者の分析に思わず舌を巻きました。「ルッツを戻して、フリップとアクセルも入れるなら、数年計画のはず!」という見立ては説得力があります。フィギュアスケートライターと呼ばれる人たちは、こういう分析力に乏しい方々ばかりなので、とても新鮮でした。

      ウチのブログも、かつては使命感のように毎日更新をしていたんですけど、あれはあれでかなりのプレッシャーだったので、今後は「休む時は休む」と言いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。