後半戦の神戸&富山はプログラムのデザインも内容も双子のような「対」になっています。まさに「二冊で一冊」という作りになっていますね。
羽生君の写真について。スケーター紹介では、貴重なクリメモのショット(おそらく幕張公演)。
さらに、「The history of Fantasy on Ice 10th Anniversary」という企画では、小さいながらも懐かしい写真が何枚も収録されています。ホワイトレジェンド&ツィゴイネルワイゼン(2010年)、町田さんとの2ショット・ロロ様との2ショット・悲愴(2011年)、Story(2013年)、高橋さんとの2ショット・ハビとの2ショット・バラ1(2014年)、Tシャツ・タンクトップ・SEIMEI(2015年)、バラ1・オープニング(2017年)、Wings of Words・後半戦オープニング&エンディング(2018年)という内訳です。ちなみに、富山も同じ企画が掲載されていますが、写真のかぶりはありません。
さて、神戸プログラムのインタビュー企画は、羽生君&ジェフの対談です。以下、印象的だった部分をピックアップします。
・Otonalについて
J: ユヅルのこれまでのキャリアを全部詰め込むことをテーマにして考えました。僕たちふたりは長年一緒にやっているので、「友人とふたりでプログラムを作った」という感じで…。
Y: 「プログラムを作ってもらう」というのではなく、実際は「一緒に作っている」感じですね。例えば最初のスタートのポーズとかも、ふたりで「どうやったらもっとノスタルジックになるのかな」とか「どうやったらもっとキャリアを思い出せるかな」と話し合ったり。それに「ユヅルの経験はどうなの?僕の経験はこういうものだよ」などと話してくれたりしたことを、いろいろ混ぜ合わせて作っていた感じがあるんですね。だから何か特別な感じというか……。
ジェフが現役バリバリの時の、ライバルの曲なわけで、羽生君自身、「若干、大丈夫かな?」という気持ちもあったとか。たしかに、シェイに依頼していればそういう問題は無かったかもしれないですが、じゃ、「Originをジェフに頼んでいたら?」と考えてみると、それはそれでマズそうな予感が・・・。
ふと思ったのは、ジョニーの「秋によせて」とプルさんの「ニジンスキーに捧ぐ」はともにフリープログラムだったわけで、この2曲を使うと決めた段階で、どっちをショートでどっちをフリーにするか、というのはどの段階で決めたのか?ということ。
おそらく、「ショート=ジェフ」「フリー=シェイ」という役割分担は例年通りすでに決まっていて、では、「ジェフなら、ニジンスキーよりも秋によせて、だな」と振付師で決めたのか、あるいは、「どうしてもニジンスキーはフリーでやりたい!」というところだったのか。細かいことですが、その辺り、興味があります。
・振付師と選手との関係とは?
Y: 例えば「パリの散歩道」などはジェフとの初めての作業だったので、自分も与えられるがままに頑張ってやろうと思っていました。だけど自分が出来ないもどかしさみたいなものをすごく感じながら、「何かちょっと心地悪いな」「こうやってもうまくできないな」という感覚をずっと試行錯誤して調整しながら、ステップを上がっていった感じでした。最終的にはそのプログラムのおかげで五輪で優勝することが出来ましたが、何かそれって、与えられたものではあるけど、そこに何か彼が成長を見てくださっているような……。自分がそういう風になれるということを信じて、その振り付けを入れてくれているな、と思う時がけっこうあるんです。今でもたまにジェフが振り付けをしてくれてすぐにやった時に、うまくできないポージングやタイミングとかがすごくあるんです。だけどそれを「きれいにできないから」とポイッと捨てるのではなくて、「それを入れているのは自分が出来るって信じてくれているからだな」と強く感じますね。
自分には「できないから」「向いてないから」「合わないから」という考え方だと、結局限界にぶち当たるわけですよね。ただ、羽生君の場合、単に「向上心がある」というだけでなく、そもそも並々ならぬ覚悟を持ってクリケットに移籍したはずで、そんな甘ったれた考え方になるわけがない、というのが大前提にあるような気がします。
ジェフの振り付けには、「自分を成長させてくれるような意味や価値が詰まっているはずだ!」「オリンピックで勝つには、彼らの言うことを全てマスターしないと話にならない!」という、ある種の「割り切り」というか「自己暗示」をかけていたのかもしれません。
パリ散の話になったので、やはり、チーム・ブライアン(第1巻)を紐解きたくなりました。152~153頁です。
初めてユヅルを見たのは、ハビエルとの1年目で出場したネーベルホルン杯でした。ユヅルは優勝しました。とても才能があるけれども、少しばかり自分をコントロールできていないように見えました。悪く言えば雑、よく言えばワイルドです。滑りが少しワイルドで、ステップやつなぎでミスをする程度のコントロールの甘さがありました。でも私は彼の精神をすぐに気に入りました。ユヅルはスケートに情熱を持っていて、滑ることやジャンプすることが大好きなのです。
オリンピックまで2年しかありません。つまりオリンピックイヤーに最高のプログラムを持ってくるためには、プログラムをテストするのは1シーズンしかありません。ユヅルの滑りや演技のすべてを効率よく融合させるには、いろいろと変化させるよりも、彼のクセを残そうと判断しました。ユヅルの持つワイルドさやラフさは簡単には消えるものではないですし、うまくワイルドさを残しつつ、コントロールできるのがいいだろうと考えたのです。
ショートプログラムはジェフリー・バトルに依頼し、ブルース「パリの散歩道」になりました。このプログラムなら、荒々しさや、ちょっとした姿勢の悪さ、ワイルドさが、むしろ味になります。ワイルドさは、コントロールされていないと「汚さ」に見えてしまいますが、コントロールされていれば「渋み」になります。滑りのスタイルを変化させるのではなく、このちょっとした違いを導いたのです。
いまはもう、ブライアンが、「クセ云々」は言うまでもなく、「こういう曲をやってみては?」なんて口出しすることさえ無いでしょうが、それもちょっと寂しい感じもします。まぁ、でも、それは他の後輩スケーターのたちのプログラムから、「ブライアンの意図」を分析すればいい話ですね。
それだけ、羽生結弦というスケーターは「生ける伝説」となってしまったのだなと、しみじみ感じます。
では、また明日!
Jun
コメント
今年のプログラムは、それぞれ違うようですね?
今までの結弦くんの歴代の写真もあるわけですね?素敵なプログラムになっているんですね?と思う反面やっぱり今年で最後の奉公だったのかなあと思ったり複雑です。
ジェフはやはり力のある振付け師なんですね?諦める選手はそこで終わりでしょうね?
私は、パリの散歩道は本当に羽生結弦の実力をみせたきっかけのプログラムだと思っているんです。
ジェフに出逢ったことが良かったといつも思ってます。今は、一緒に作っているってのがまあそうでしょうね?もう、教えることもないですもんね?ジャンプは見てもらう必要はありますが、他は自分でやっちゃうしそれがまた、上を目指している事だし凄い選手ですよね?ブライアンがそれを認めてくれているのも嬉しいです。
結弦くんがクリケットにいって早速成績上げたのは、仰るように向上心や才能だけでなく、本当は仙台に居たいのに金メダルとるという思いや移籍をするにあたって私たちでは想像もつかない思いや決心もあったことだと思います、でもそれだけでなくブライアンが
癖をそのままで他を磨いてくれたこと、つまり結弦くんを理解してくれたことが大きいかと感じてます。
クリケットいって本当に良かったです。
富山のプログラムも紹介してくださるのですよね?楽しみに待つてます。
senninさま
「最後の奉公」でしょうか?来年に関しては、羽生君のコンディション次第かと思いますね。自分が出るか出ないかでチケットの売り上げが雲泥の差になることは、彼自身よく分かっているはずですし、義理堅い男ですから、真壁さんの頼みを断ることはできないでしょう。
たしかに、ジャンプは、特にブリちゃんによる「第三者の目」が重要な要素になっていますが、プログラム作りは完全に振付師との共同作業になっていて、ブライアンやトレーシーはノータッチのようです。それで上手く行っているのだから、新プロも素晴らしいものが出来上がるはずだと確信しています。
明日は、よっぽどビッグニュースが無ければ、富山のプログラムの方をご紹介する予定です。