『奇跡なんて、起きない。』(8)17年ワールド

『奇跡なんて、起きない。』(8)17年ワールド

最近、この二人とキスクラに座ることが減っているので、ちょっと新鮮です。

例のごとく、YouTubeは全滅していますので、「こちら」から視聴できるものを選んでください。

SPは、98.39で5位。プロトコルにもあるように、減点1点は演技開始が遅かったことによるもの。

まず、4Loは、羽生さん本人も「たぶん今まで跳んだ試合の中でも一番きれいに跳べたループだったと思います」(157頁)と、SP後の囲み会見で答えています。4CCもループはSP・フリーともに決まっていましたし、この後のヘルシンキのフリーも含めると、ループの調子が良かったことが勝因だったのかなと思います。

まだGOEは全7段階での採点だったので、+2.43ですが、現行の11段階ならば、トリノのOriginの+4.05に近い加点になっているのかなと。ただし、4Loの基礎点が、12.00→10.05と1.5点も下げられているので、4Lo自体のスコアは変わりません。そう考えると、ジャンプの基礎点を下げて、GOEを11段階に増やしたのって、

ただ単に、ジャッジのやりたい放題できる幅を増やしただけだろ!

ってだけの話でしたね。少し脱線しましょう。いま、「フィギュアスケートLife Vol.15」の小塚さんのコーナーを読んでいるんですが、18-19シーズンが始まる前に、岡部由起子さんとJスポの番組で対談したエピソードを紹介していました。

この間、J SPORTSで岡部由起子さんと対談した時に聞いたんですけど、「ジャンプが高度化したことで技術点の方がぐっと伸びて、演技構成点とのバランスが悪くなってきた。そのバランスを保つために、技術点を下げよう。そのためには、ジャンプの数を減らして基礎点を下げよう」ということだそうです。

ルールって規制するためにあるのではなくて、こういうスケーターになっていってほしいというISUとしての道しるべみたいなものなのかなと思います。「ちゃんと基礎や基本のできたノーブルなスケーターになってほしい。基礎的なことをしっかり習ってから、手を上げてジャンプしたり、変形スピンをやったりと個性的なものにしていきましょう。それをGOEで評価します。個性は、基礎の上に成り立つものです」というISUの考え方があるのではないかという感覚を受けますね。

元スケーターたちそれぞれに「自分の時代がこうだったら」という気持ちがあって、そうした思いを大事にして作っている。高難度ジャンプに偏っていくのをどうにかしたい、けれど、ジャンプはフィギュアスケートの大きな魅力だから、全部除外してしまうのは面白くない、といった思いもあるのではないでしょうか。

百歩譲ってこれが、18-19シーズンが始まる前の見通しだとしても、現実は、ここで「想定」していることの全く逆の現象が起こっている。いくら机上で「TESとPCSのバランスを取ろう」という思いがあったとしても、現実は、4回転ジャンプに加点をバンバンつけて、それにPCSが引っ張られている。それを「バランスが取れている」と言うならば、もはや話になりませんが。

さらに、「基本や基礎のできるスケーター」って何でしょうか?立ち止まってタコ踊りするコレオに満点評価をつけていたことがありました。プレロテおかまいなし、エッジも氷上にべったりで跳ぶ4Lzに、4点も5点も加点をつけている。

こういう説明を平然とできる人だから、岡部さんって出世したんだな・・・と。まんまと、小塚さんも言いくるめられてますからね。もうずいぶんとLifeは買っていないのですが、編集者に良心というものがあるなら、この記事をもう一度読み返して反省しろ!と言いたいです。

むかついてきたので、この話はここまでにしましょう。羽生さんは、4Loは良かったものの、鬼門の4S-3Tでは、サルコウの着氷が乱れて膝をつきます。急遽つけた2Tは認められず、「コンボ抜け」と判定されました。3Aは成功し、スピン・ステップもレベル4。これが98点台で何とか踏みとどまった要因かもしれません。

山口さんのレポートは、「フィギュアスケートマガジン 2016-2017 シーズンファイナル」からの一部抜粋なので、目新しい記述はありません。ただ、雑誌の方では「流し読み状態」だったヘルシンキでの公式練習のジャンプの成功率が、クワドのみならず、3Aも悪かったという部分は、個人的には大きな発見でした。いまだと、公式練習をスマホで撮影して、すぐにTwitterにアップしてくれる人がいますし、映像だけでなく、何を何本跳んだかを、現地組のファンの皆さんがすぐにツイートしてくれるようになりました。

いまや、羽生さんがどの試合でどのジャンプを成功(失敗)したかだけでなく、練習時のジャンプの正否も、知識としてタダで共有できるようになったのです。

そう考えると、マガジンの「完全収録」も少しアレンジを加える必要があるかもしれません。雑誌の発売前から「すでに知っている情報量」がかなり増えましたからね。わずか2シーズン前の話なのに、テクノロジーの進化と、ファンの目も肥えてきたことが分かります。

そして、練習時の「ジャンプの成功率」ということで言えば、今シーズンの方がはるかに高いと思います。3Aのミスって、Originの曲かけで多少抜けるか(あるいはあえて跳ばないか)ぐらいで、4Tや4Sも、曲かけ以外の単体の練習でミスしようものなら、「どこか怪我でもしてるんじゃないか?」と心配になるレベルです。そういう意味で、羽生さんは確実に上手くなっていると感じます。

もし、いま本書を読まれている方がいらっしゃったら、この時期の「成功率」を頭に置きつつ、ぜひ4CCでの公式練習にも注目してほしいなと思います。全日本後の休養もバッチリな状態で、きっと練習から調子いいはずですよ!

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. ととちゃん より:

    本当に改悪としか言えないルール変更でしたね。ジャンプの基礎点を下げるなら全て一律に下げるべきなのに そうしなかったのは、 そこに何らかの思惑があるからだと邪推されても仕方がないと思います。
    それでも、GOEを11段階にしたのは3段階では測りきれない素晴らしい要素を評価するためだと信じ、羽生選手のプロトコルに+5、+4がずらりと並ぶ様を想像していたのが遠い昔のようです。

    そして、現在ちゃんと基礎や基本の出来たノーブルなスケーターでなくても、どんどん点数が出ていることを岡部氏はどう説明するのでしょうか。

    そんな中で、しかも特に今シーズン、ルールの悪用が顕著な中戦っている羽生選手が、4
    CCに万全の状態で臨めるよう願っています。
    公式練習、大注目ですね。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      本当にひどいルールです。そして、岡部さんのコメントを聞いていると、典型的な官僚的人間ですよね。あるいは、自分のことを貴族か何かの特権階級だと思っているのでしょうか?

      そもそもジャッジをやってる方々って、現役時代に選手として微妙で、コーチとしての実績も微妙、振付師でもないから、ジャッジの席にしがみついているのでしょ?と文句の一つも言いたくなりますよ。テクニカルの判定はすべてAIでいいです。人間のジャッジは(当面は)PCSだけで十分ですね。