さて、仕切り直しです。羽生さんのインタビュー記事を読んでみましたが、近年と比べてメディアとの付き合い方がやっぱり違います。
例えば、現状、最も羽生さんの発言を細かく文字化してくれる「ペンメディア」は「マガジン」ですが、大会中のプレカンや囲み取材での「オフィシャルな場」での発言のみ。「マガジン」が羽生さんに対して、独占でロングインタビューを実現させたことはありません。トロントメディアデ―では、他メディアと同じ「数分」の持ち時間だったはずです。
「独占」ということだと「ジュエルズ」がありますが、まったく出版の予定がありません。ご存じのように、羽生さんはSNSを一切やっていませんから、そう考えると、羽生さんの「生の声」を「独占」でこれだけのボリュームで伝えられた時代って、すごいなと思います。
今回のインタで、私の記憶から抜けていて「面白い」と思ったのは、以下の2点です。
(1)スケーティングという「難敵」
はああ……(大きくため息)。そうなんです。今、すごく難しいのが、トレーシーが教えてくれたスケーティングやステップを、プログラムに入れること。これがどうしても、滑り切れないんですよ。
ジャンプの場合、調子のいい時には跳ぶ前、頭の中に「ポンッ!」ってクリアな成功イメージが浮かびます。注意すべきことも、そのイメージの中に全部詰まっているから、浮かんだイメージに合わせて動けば、きれいに跳ぶことができる。
でもスケーティングは……まだそのイメージが出てこない。身体が覚えていたり、イメージがポンッと出てきたりしないから、頭でどう滑ったらいいかを考えてしまう。考えてるうちに、もうプログラムが終わっちゃう……いつもそんな感じです。
このスケーティングに対する自問自答というか内面の吐露だけでも、トータルでこの4倍ぐらいのボリュームで語られています。インタビュー自体は、2012年FaOIの福井公演(9月1日・2日)の後に行われたとのこと。
いまや「シームレス」とか「エフォートレス」という言葉が示すように、オールマイティなスケーターの羽生さんですけど、クリケット移籍直後はトレーシーの「メニュー」に苦労していたんですね。こういう苦労は、最近のインタではなかなか読めません。「蒼い炎」や「メソッド」でもここまで正直に吐露していなかったような気がします。いまの、ジュニア選手が読んだら共感する部分があるんじゃないでしょうか?
(2)身体のケアと置鍼
そうですね、身体のケア、僕にしては、だいぶ頑張るようになりましたよ!指圧の青嶋先生(トロント在住指圧師・青嶋正氏)に習ったストレッチも続けてるし、先生に施術してもらった時の感覚を覚えていて、置鍼くらいなら自分でできるようになりました。身体って、正直なんですね。ちゃんとケアをしないと、先生にはすぐにバレちゃう。僕は基本三日坊主で、これまでもストレッチやクールダウンはさぼり気味だった。でもちゃんとやっていかないと先生にバレて、ものすごく怒られる!もう、その恐怖感と戦いつつ、頑張ってケアしましたよ。それで半強制的にやってたことが、今はなんとなく習慣になっちゃったんです。
・・・とくにトロントに来て最初の頃、先生の指導はすごく厳しかったんです。「こんな身体でよくメダルとったな」って!でもあの時期にあそこまでしっかり身体について教えてもらったのは、自分にとってすごく大きかった。
「サボり」とか「三日坊主」とか・・・、いまではここまでフランクに語ってくれないから、本当に新鮮です。17歳の若さが弾けてる!・・・というか、いまのジュニア男子選手よりも無邪気なぐらい。
そして大事なことを言い忘れました。写真はすべて能登直カメラマンの手によるもの。羽生さんのインタのテキストの中で、「レンズを向けたカメラマンは、去年は見せなかったような男っぽい表情をする、と言う」なんて、まだ「名も無きカメラマン」扱いというのは、時代を感じます。てか、羽生さん以外の、高橋さん、町田さん、小塚さん、織田君、ダイス等々、ほぼ大半の写真が能登さんです。これ、今考えてみたら、すごくないですか?
というわけで、Cutting Edge、もうちょっとやります。他の号も含めて、興味深いものはドンドン紹介していきます。中古品の価格もリサーチしてみますね。
では、また明日!
Jun
コメント
Cutting edge 2013のレビューをありがとうございます!!
まだ少年の羽生さんの時代にタイムスリップしたような、不思議な感覚がありますね。
そして、その後の怒涛のドラマチックな展開を知っている今、屈託のないまだ素朴な感じ
の残る羽生さんに感慨深いものがあります。
常に高い目標を設定して、ひとつひとつ成し遂げてきたのですね。
この頃からクワドアクセルというワードが飛び出しているのも驚きですし。
平昌で集大成かな、とも思っていたのが、まだ現役で活躍する姿を見せてくれていること
に感謝ですし、17歳の頃からの成長の過程をいっしょに泣き笑いながら共有させて
くれたことにも、数えきれない感動をくれた羽生さんに感謝です。
世の中が暗い雰囲気の中、気持ちも沈みがちですが、前途洋々の羽生さんを回顧できて、
駆け上がっていく過程を懐かしく思い返すことができました。
Junさん、リクエストにお応えいただきありがとうございました!!
二日間にわたっての長編レビュー、ありがとうございました!!
名無しの猫さま
過分なお褒めのお言葉をいただき、恐縮です。
この当時のCutting Edgeは宝の山ですよ。ここ最近の老舗フィギュア雑誌の羽生さんの記事は、内容はかなり薄いですからね。
また何か面白いものを発見したらご紹介したいと思います。この度は本当にありがとうございました。
羽生選手でも、かつては三日坊主だったり、サボったりしていたんですね。8年の間に色々な肩書きを背負い、責任が生まれて今のようにストイックになってきたのでしょうね。
スケーティングにも苦労していたんですね。昨日のNHK杯の振り返りでも、この頃の黒パリはやっぱり荒削りだったな、と。ただ、魅力に溢れていました。この時代があって今があるのですね。インタの紹介、ありがとうございました。
ととちゃん さま
背負っているものが大きすぎて、なかなかこの頃のように取材に答えられない存在になってしまいました。
でも、それは、この年齢にあってもコンディションを維持し、毎年トップレベルのスケートを披露する上で「必要な環境」なのかなと思います。
NHK杯の特集番組はレビューを準備していますので、お楽しみに!