「Ice Jewels Vol.12」(4)

「Ice Jewels Vol.12」(4)

さて、予告通り、鈴木明子さんのインタから、この部分(79~80頁)を詳しくご紹介しましょう。様々な思いや、葛藤を感じさせます。

――鈴木さんは29歳で引退。4回転時代の現代とは単純な比較はできませんが、今の女子は15、16歳でピークがきて、さらに若い選手が台頭してくる。もっと円熟味のある演技ができるところで第一線から引いてしまう。鈴木さんの世代から見て、どう思いますか?

もったいない。・・・若手の台頭で、「本当は続けたいけれど、結果が出ないんだったらやめる」みたいなのは……。・・・もう少し息の長い選手が出てくると、フィギュアスケートがスポーツでありながら芸術でもあるというところで、より成熟したスポーツになると思います。

――でも最近の傾向ではどうしても、15、16歳で……。

確かに跳べるときに跳んでおくみたいなものはありますよね。人ってピークの自分を知ってしまった時に「それができなくなる=退化」のように「下がっている」イメージを持ってしまう。私もそう思っていました。今までは順調だったものができなかったり、ケガをしたり。でも、そういう経験をして戻ってくるときの心の成長は、むしろ以前よりもはるかに進化しているはずです。でも、人ってどうしても「駄目になった」という評価をしがちですね。本当はその人の中で進化している部分がたくさんある。そういう見方をするのは難しいかもしれませんが、選手本人が望む形でスケートを続けられる道があるといいなと思います。

これは明らかに、日本の女子シングルが世界でトップ争いをできるようになったことの弊害ですよね。それだけの結果を求められるのだから、求められる技術もより高度になり先鋭化していく。「世界のトップ」とは言っても、今それは「エテリ組」と紀平さんを意味しますが、4回転かトリプルアクセルがないと話にならない・・・。そして、女子シングルの歴史において、例えば、20歳を過ぎてからこのような大技を安定して跳べるようになったのはリーザ以外にいないわけで、より若い子たちに「高い技術」を求めるのは仕方のないことかもしれません。若くはない選手に大技を習得させられた指導実績が世界的に見ても皆無ですからね。

いろいろとルール変更の話も出ていますが、「北京五輪でエテリ組が表彰台独占」ということにでもなれば、そのような話が進むスピードは早まりそうです。

――女子は年齢とともに体の変化で苦労する選手も多いですね。鈴木さんも一度病気をされて克服し、見事に復活しました。女子にとって体の成長は時に苦しいことでもありますね。

今は体が成長するまでが勝負のように思われていますが、本来、人って成長することを喜ばれながら生きてきているはずと思うんです。喜ぶべきところを、抑えて、抑えてということにすごく違和感を感じます。

――自然に反している感じですね。

そう、すごく反している。だから苦しむんだろうと思います。体の成長によっていろいろ変化もあるでしょうが、「そこまで」というよりは、「そこから」続けられるようなスケートになってほしい。それを周りが「数年後は分からないよね」って思う時点ですごく悲しい。この競技が人を使い捨てるような仕組みであってはいけないと思います。ファンの人たちにとっても、長い間応援してもらえるスポーツであるほうがよいと思います。

明子さんはこのインタの中で具体的な提言をしているわけではないので「理想論」ではあるんですけど、「人を使い捨てるような仕組みであってはいけない」という言葉は、かなり強い表現だと思いました。この部分だけでも、何を言わんとしているか、彼女の気持ちはよく分かりました。

ロシアの場合、才能のある子がどんどん出てくるので、それこそ指導者が「使い捨てる」意図があるかどうかとは別に、外野から見ていれば、「そういう流れ」には見えるでしょうね。

ただ、私が注目しているのは、紀平さん以外の日本のシニア勢が、どの方向に自分のスケートを進化させていくか、という部分です。

例えば、樋口さんは3Aがかなりいい感じでしたので、安定してくればリーザのように復活できるかもしれない。宮原さんは、回転不足の問題と付き合いつつも、研ぎ澄まされた表現力でどれだけ世界と戦えるか。そして、坂本さん。ジャンプの技術を上げていくのか、表現面の幅を広げるのか。個人的には、いよいよシニアに昇格する川畑さんの成長も楽しみです。日本は、ジュニアより下の世代が「手薄」であるからこそ、シニア勢の頑張りが、今後、後輩たちの進むべき道を示してくれるような気がします。

誰もが羽生結弦にはなれないように、女子においても、誰もが浅田真央ちゃんや、紀平梨花ちゃんのようにはなれません。この3人のような飛び抜けた才能と技術の持ち主だけでなく、ギラリと光る選手もしっかり見守って応援していきたいものですね。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. ととちゃん より:

    昨晩、鈴木さんのインタを読みました。
    オリンピアンとして、自身29歳まで現役を続けた立場からの言葉は、重いですね。

    もちろん 使い捨てになってはいけないですし、年を経るほど増す円熟味は評価されるべきだとも思います。でも、スポーツである以上、ジャンプを始め、エレメンツの出来で評価が決まることが前提です。20代後半のスケーターがトップ選手として活躍する場面を見たいとは思いますし、それが競技の発展にも繋がるだろうと思うのですが、現実問題難しいですよね。

    仰るように、樋口さん、宮原さん、坂本さん達が来季どう戦い、どうトップに食い込んで行くかが、今後の女子スケート界の在り方に
    影響を及ぼしていく気がします。
    そのためにも 年内、試合が開催できればいいのですが…。これもまた、難しいですね。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      29歳って、本当に凄いですよね。

      羽生さんが北京五輪を迎えるのは27歳ですが、さすがにそこでプロ転向かな・・・という気はします。でも、羽生さんの後に、日本代表レベルの選手でもっと長く競技を続けられるスケーターが出てくるかどうか・・・。まったく想像できません。

      ところで、将棋のプロ棋士(4段)になるには「26歳までに3段リーグを突破しないといけない」という年齢制限のルールがあって、「誕生日を嬉しいと思ったことがない」という言葉を、プロになった棋士たちでさえ言うほどなんですが、これって、女子シングルの選手はもっと厳しいのでは?という気がしてきました。しかも、こんな状況ですし、試合がいつあるか分からないし、練習もできない。そんな中、自分は歳をとっていく・・・。辛いとは思いますが、そこをなんとか踏ん張って、頑張ってもらいたいです。

  2. ととちゃん より:

    連投すみません。
    随分前に「将棋の子」という本を読んだことがあり、奨励会の過酷な勝負と、残れなかった人のその後に胸が痛くなったことを思い出しました。
    スケーター達も、現役の間にメダルを獲れるかどうかが、その後の人生に大きく影響する点で同じですよね。どの選手も振り返って納得のいく競技生活を送ってほしいですね。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      ただ、将棋は「プロ編入試験」があるので、26歳の年齢制限で奨励会を一度退会しても、アマチュア棋界で好成績を残せば、チャンスは残されています。

      フィギュアは本当にキツイ・・・。そもそも試合数が少ないし、オーバーワークでケガをしたら元も子もない。本当に大変な競技だと思います。