『羽生結弦 2019-2020』(報知新聞社)

『羽生結弦 2019-2020』(報知新聞社)

2020年6月17日発売。定価「2,750円」。

さて、仕切り直しでレビューします。矢口亨カメラマンの腕はまったく心配していなかったので、写真のセレクションとデザインが全てと思っていました。以下、まとめてみます。

・「美術書を目指した」という事前情報の通り、この特別サイズなので、余白がけっこうあります。予想通りではあるんですが、やっぱり多いです。ただ、羽生さんの顔が見開きの折り目にならないような配慮がかなり見られます。そういう視点で見ると、必要ではあったのかなと思います。

・選ばれた写真の傾向としては、基本的には「アスリート羽生結弦」「アーティスト羽生結弦」です。ニコニコ、ふにゃっとした笑顔のものは極力選ばないようにしていて、「アイドル写真集にしたくない」という意思のようなものが感じられます。時系列的にオータムの写真から始まりますが、屈強のボディガードを従えて、戦闘モードの表情のショットがいきなりドン!と来るので、「この方向性で行くんだ!」とめくり始めて感じました。

・良い記録の出たスケカナは、自信に満ち溢れた充実の表情で、特にOriginが良いし、パリ散もいい。ただ、ハッと息を飲む美しさなのは、N杯の「春よ、来い」ですよね。氷が舞っている丸々見開き2頁のショットは、左側の余白ならぬ余黒(?)を効果的に使っています。この写真が個人的には本書のハイライトと思っています。

トリノファイナルの練習時の4Aの連続ショットも貴重ですね。矢口さん、よく撮っていましたね。これ、報知の誌面でも掲載されていたでしょうか?

最後の一枚は、4CCのホプレガ。顔の前に右手をかざして影がかかっているんですが、「まるで未来の自分自身を見据えているかのよう・・・」と編集者は解釈したのでしょうね。じゃなきゃ、わざわざこの写真を選ぶわけがありません。高木さんも「羽生の道を行けばいい」と締めてくださっていますので、羽生結弦のスケートはまだまだ進化する、それを応援したい、という思いが伝わってきます。

サイズが大きい割に、ソフトカバーなので、折り目や汚れがつかないように気をつけなきゃいけません。ハードカバーの方が気軽に何度もめくりやすいのですが、でも、高くなってしまいますからね。このサイズ、このボリュームで3000円を切るお値段で抑えてくれましたから、感謝しなきゃいけません。

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. ととちゃん より:

    届きました!

    このボリューム、クォリティで3000円を切る定価に設定したのは、大英断だったと思います。邪推ですが、相当数売れなければ赤字、ではないでしょうか。今回矢口さんも、SNSで(なんとWeiboでも)懸命に発信されていますが、順調に売れている様で良かったです。

    白い余白によって、アート感が濃くなり、美術書のような印象を受けましたが、私が一番心を動かされたのはGPFフリーの6練から表彰式の流れです。originの動きを連続して配置し、最後にまっすぐ前を見つめる羽生選手の姿で終えていますが、この編集に、高木さんと矢口さんの思いのようなものを感じました。

    最後の1枚は、そういう風に捉えられますね。
    2人が来季の羽生選手に期待し、応援する気持ちを共有できる終わり方ですよね。
    本当に買って良かったと思える一冊でした。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      おっしゃるように、小さい写真もただ単に並べているのではなく、「動き」を意識していたり、「配置の意味」を感じさせるデザインになっていますよね。

      そういう「謎解き」も含めた「解説」もぜひ欲しいのですが、おそらくそれは、延期になっていた「カルチャーセミナー」で行われるのかもしれません。明日から色々と解除になりますし、カメラマンさんのそのような活動も再開されることを期待しています。

  2. ひととき より:

    こんばんは
    昨日getしました!今までに出版された写真集とは一線を画した、拘りの一冊ですね!
    私が印象に残ったのは、演技中の写真ではなく、実は会場入りするシーンなんです。特にN杯、柔らかな晩秋の光の中を歩くシリーズです。暈している後景は印象派の絵のようで、前方に羽生君の姿がくっきりと浮かび上がり、何とも言えない詩情を感じたのでした。

    • Jun より:

      ひとときさま

      「晩秋の光」のページは、目に入った瞬間に、「わあ、N杯だ!」とすぐに分かりますよね。それは「夜、スーツ姿で」というショットが目に入って、「全日本だ!」とひとめで分かるページといい、意図的な配置かなと思います。

      なにせ、ボリュームも凄いので、めくるたびに、色々と発見のある一冊です。