踏みたくない方もいるでしょうから、元記事のリンクは貼らないですが、「女性自身」による、4月20日(火)11:07にヤフーで配信された、例の記事についてです。
まず、羽生さんの卒論が掲載されている「人間科学研究」というのは、早稲田大学人間科学部が発行している「紀要」というもので、人間科学研究科の大学院生や教員の論文が掲載されている学術誌です。紀要は、通常は学部の事務所に行けば大量に積んであって、学内の人間ならタダで何冊も持って帰れます。ただ、人科は所沢キャンパスなので、小手指まで行く必要がありますが・・・。もちろん電子化もされるはずですが、数ヵ月かかるんじゃないでしょうか。というわけで、「独占入手」とかドヤるほどでもないです。
記事の中では、「稚拙」という言葉をやけにクローズアップしていますけど、「ルールブック」を見たことのある人は、「稚拙な」とか「拙い」という言葉を目にしたこともあるかと思います。例えば、シングル競技の、ジャンプのGOEマイナス面のガイドラインの項目にそれがあって、「稚拙な踏切(poor take-off)」「拙い着氷(weak landing)」という訳語があてられています(詳しくは「こちら」をご参照ください)。
もちろん、「稚拙な」という言葉は、別に羽生さんが「怒りの感情」を表したものでも何でもなく、ルールブックに使われている用語をそのまま使っただけの話です。そもそも、poorという表現はジャンプに限らず、スピンやステップなどの他のエレメンツのGOE判定の部分でも使われているし、もっと言えば、シングル競技以外の項目でも至る所で目にします。
というわけで、「羽生結弦は怒っているはずだ」という結論ありきのしょーもない記事ではあるんですけど、ただ、「稚拙なジャンプ」について佐野稔先生に取材しているし、ワールド&国別の採点を経ていま、この記事によって、羽生さんの研究がより多くの人たちに周知されたという点では、個人的に評価しています。
だって、スケ連の事実上の機関誌のWFSはこの件にはダンマリですし、ジュエルズのVol.13の吉岡氏のルール解説も全日本のスピンのノーバリューについてグダグダ言い訳してましたからね。
そこで、なるほど・・・と気づいたことがあります。あくまでも私見です。羽生結弦さんは、例えば、トリノファイナルでのミスジャッジを恨んで、この世の中からジャッジを一人残らず根絶やしにしてやる、という発想を持つような人じゃない。そうではなく、「スケーターが、他人に頼らずに、自分の力で正しい技術でジャンプを跳ぶための手助けをしたい」。そういう思いから、自身の研究を卒論でまとめたんじゃないかと。
先月のジュエルズの「レビュー」の私の感想を、もう一度ご紹介します。そう簡単にISUがいまの「旨味」を手放すわけがないし、AI導入どころか、カメラを増やすことさえ、引き続き徹底的に抵抗するでしょう。きっと日本語の読める現役ジャッジは今回の記事を鼻でもほじりながら読んでるんじゃないですか?
もちろん、羽生さんはそれを百も承知で、まずは練習の現場で活用してもらって、選手一人ひとりが正しい技術を習得することに役立ててほしい・・・そこを出発点として考えていると思われます。
もしかすると、本当は、4Aを習得して、4Aのデータを取ってから卒論にまとめたかったのかもしれません。ただ、それをやっていたら卒業できなくなってしまいますし、まぁ、研究に一定の妥協はつきものです。4Aを成功させたとき、この論文が加筆・修正の上、書籍化されて世に問われることを願っています。
では、また明日!
Jun
コメント
こんにちは 更新ありがとうございます。
「稚拙」という言葉の解析ありがとうございます。
たしかにそこだけ取り出すと、なにやら不穏です。
週刊誌はどうせ煽るのが目的でしょう。しかし方向性は変わってきてますね。
明日横浜SOI行きます。19時からです。以前のチケットはとっくに解約していたのですが
三原舞依さんのファンである息子が羽生さんINの前に2枚取ってくれました。
移動制限下ですが、新横浜は通勤圏内で近いし・・・と言い訳・・・すいません。
みつばちさま
おお!明日行かれますか。私の知人(かなりライトなファン)で明日行く人がいますが、普通に取れたようです。羽生さんが出演するショーなのに、例年のFaOIに比べればはるかに入手しやすいのは、とても良いことです。
私は1年間寝かしていたチケットを握りしめて金曜日の方に行ってまいります。