2018年10月20日発売。定価「1,500円+税」。
発売自体が危惧されていたので、表紙解禁後も、実物を手にするまで「本当に出るの?」と半信半疑でした。まずは、発売が実現したことに感謝という言葉以外にありません。そして、「なるほど・・・こういう作り方があるのか・・・」と感心しました。
まず、周辺の話から。羽生君で当初予定していたスペースを、とある問題が発生したことで、何で埋めるかと考えたとき、おそらくフィギュアスケート業界の人間ならば、「宇野・高橋両選手で埋める」という発想になるんだと思います。ところが、このINROCKという出版社は、映画や音楽などの業界に精通した編集者がいるようで、「推しが一番!」というファン心理と、それと表裏一体を成すような「この人の顔だけは見たくない!」という心理もよく分かっている。世の中、「全員応援系」なる偽善者はごくごく少数なのです。この辺りをしっかりリサーチした上で、フィギュア業界と余計なしがらみも無いので、ファン心理をできるかぎり具現化できる。それが本誌の誌面に表現されています。
結果として、宇野・高橋両選手は徹底的に排除して、町田・浅田の両レジェンドを登板。最近人気が急降下中のメドちゃんの扱いについては、さすがに時間的に間に合わなかったようで収録されていますが、おそらく次は無いでしょう。実は、本誌最後の2ページでJOが紹介されていますが、この限られたスペースの中で、今回のスケアメの順位を(写真のサイズで)予言していたかのように、宮原さんの「ブエノスアイレスの冬」と坂本さんの「ピアノ・レッスン」のショットをさりげなくフィーチャーしています。素晴らしい先見の明です。
さて、羽生君の部分で「感心した点」といえば、みなさんご承知のように、オータムのOtonalの写真を紹介した後に、ジョニーの現役時代のショット(しかもOtonalの写真も収録!)を入れるという英断ですよね。同様に、Originの後にも、プルさんのニジンスキーのショットが入っていますが、今年のFaOIだけでなく、2003年の写真が入っているのも嬉しい。二人の当時の衣装は、YouTubeの低画質動画で確認自体はできるものの、やっぱりこの大判サイズで細部をチェックできると、「伝わってくるもの」が全然違いますよ。羽生君がなぜ二人の、この二つのプログラムを「継承」することを選んだのか、そのリスペクトする気持ちを我々も共有できるわけです。編集者の素晴らしい心遣いですよね。
ところで、『YUZURU II』のレビューでも触れましたが、本誌でもジスランコーチの存在感が、ブライアンやトレーシーよりも上回っている所が面白い。そろそろ日本の記者やジャーナリストは彼にまとまった内容の取材をすべきだと思います。
オータム特集という部分では、今年のオータムだけでなく、15、16、17年の3年分のプレーバックが入っているのも嬉しい。オータムの歴代の台乗りメンバーが、CSとはいえなかなか濃いメンツだということを、改めて気づきました。ということは、今年台乗りした、ジュンファン君とサドフスキー君も頑張らなきゃ!ということですね。
では、また明日!
Jun
コメント
改めて表紙を見ると、本当に綺麗ですね。目次ページも然り。まだ後に続く出版を念頭に置いて、断念しようと思っていたのですが、食指が動きます。
編集の仕方にも工夫があるようで、そうした本こそ応援したいな、と。
ブリアンコーチ、私見に過ぎないんですが、平昌に向けて羽生選手に一番関わっていたのではないかと想像しています。演技中のリンクサイドでの熱量が半端ないですね。個人的にブライアンのそれがハビ>羽生選手 に映るので、余計に際立って見えました。
露出が増えたのも、そうした背景があるのかな、と。
単独インタ、是非実現して欲しいです!4Aを成功させた暁には、色々聞けるでしょうか。
ととちゃん さま
なにぶん大判なので、多少画質が粗い写真もありますが、全体としての仕上がりはとても美しいです。あまり沢山刷らない雑誌なので、比較的早めの入手をオススメします。
ジスランコーチは、このオフシーズン、知子ちゃんだけでなく、新葉ちゃんもクリケットでジャンプの指導をしていました。この短期間に日本女子のトップ選手が2人も送り込まれているわけで、指導力に定評があるんだと思います。
ブライアンの弟子との接し方が、かつては、ハビ>ゆづ(今では、メド>ゆづ?)に見えてしまっていたのは、それだけ羽生君が「手のかからない優秀な生徒である」ことの証だと、私は思っています。
外野から見れば関係は「薄く」見えてしまいますが、羽生君は、ブライアンに要求されることを軽々と消化してしまっているからこそ、今シーズンを含むここ数年の羽生君のプログラムや、あるいはCiONTUのような活動に、「羽生君の主張」が表れているとも言えます。
羽生君がトロントから環境を変えずに、それでも毎年進化して、新しいことにチャレンジしていること。これこそ、羽生君とブライアン(およびトレーシー)との関係がかつてないほど良好であると、私は解釈しています。
私も、本当に出版されるのか、半信半疑でした。もし発売日前日とかに中止になったら、急遽近所の書店にお願いするつもりでした、フィギュアスケートニュースのように。
田舎なんで、通達が届いてなくて、フィギュアスケートニュースも売っていました。
中身をみて、羽生比率は下がってるけど、編集者は考えたなと感心しました。ジョニーとプルを入れてくるとは。
で、オータムクラシック出場の海外選手と、浅田さんと町田くん。編集者、わかってるじゃないのという感じです。
羽生選手の写真集が、2冊とも、宇野くんがチラッとも写ってなかったです。ハビとか同級生トリオはあったのに。どこにもチラッとも入っていませんでした。出版社はわかっているんでしょうね、ファン心理が。
本当の全員応援系って、少数だと思うんです。建前全員応援でも、贔屓選手はいますよね。
ずいぶん前、私はテレビでフィギュアを見るだけのライトファンでした。このころは、全員応援だったかも。海外男子選手がキラキラしてたから、男子フィギュアファンだったけど、うす~く応援してたライトファンだったので、全員応援だったかも。テレビでしてたら見るけど、五輪と全日本とNHK杯しか試合の種類を知らない(ワールドは知らない)、シーズンがいつかも知らない、ライトファンでした。
羽生選手を応援するようになって、試合の種類を知りました。そして、本も買うようになりました。本を買うくらいの濃さのファンなら、押しの選手っているのではないかと思います。
特殊な販売の仕方のキスクラを除いて、最後に残った羽生本です。次号も出版したら、買うつもりです。
まりさま
私が「偽善者」と言ってるのは、そういうライトな方を指しているんじゃないですよ。プロトコルも読めて、海外のジュニア選手にも精通していながら、ジャッジの問題を完全スルーして、「おかしい!」と声を上げる人に対して「素人はだまってろ」という態度を取る連中ですね。立場上、お仕事で「全員応援系」じゃなきゃいけない出版関係者でもないのに、なんなのこの人たち?と理解できません。
キスクラは、棲み分け小出し出版について色々言われますけど、「羽生本」に関して言えば、羽生君の写真がすべて田中カメラマン撮影のもので、しかも仙台にちゃんと取材に行ったりもしてますし、これはマストアイテムといっていいですよね。ジュエルズの発売日が現段階で不明なので、まずはこちらが楽しみです。
こんばんは
この本、今日届いて堪能しました。
junさんの仰るようによく考えられた構成ですね。
ジョニーやプルシェンコのOTONALやニジンスキーも見たいなと思っていたところでした。
ジスランコーチ羽生くんの事を1番知る人、オーサーコーチが信頼して羽生くんを任せている人と私も思います。
ぜひいつか話を聞きたいですね。
トレーシーコーチも羽生くんの性格をよくわかってるし、2分割のコーチ陣とのショットは信頼関係に満ちた感じで良い写真です。
羽生くんページが減ってもファンを不快にしない良い感じですね。
裏表紙がスケートと関係ない写真が意外でしたが。
とにかく無事に出版されて良かったです。
マリィさま
おっしゃるように、コーチ陣と羽生君を捉えたショットも、うまく選んでますよね。ジスランコーチの重要度を、編集者もよく知っているようで、その点も含めて、「わかってるなぁ・・・」と、この雑誌はやっぱり信用できます。
裏表紙の「イル・ディーヴォ」については、第一号以来の登場です。ちなみに、第一号では「『花は咲く』でお馴染み!」と書かれています。