「Quadruple Axel 2024 羽生結弦 SPECIAL」(6)

「Quadruple Axel 2024 羽生結弦 SPECIAL」(6)

いよいよ「Quadruple」のレビューもラストです。今日は宇都宮直子さんのコラムから。都築章一郎先生のコメントが紹介されています。

現役選手はエレメント的にレベルの高いものをやっていますが、演じるという意味では、羽生のほうが上でしょうね。あの演技は、羽生がプロになって身につけたものです。新たな武器になっています。その上、2時間をひとりで滑りますから、ものすごい体力です。驚くしかありません。世界を見渡しても、あれをやれるスケーターはいないですよ。錚々たる実績のスケーターでも、引退するとレベルが落ちてしまう。羽生はそれが許せないんです。いつも最高のものを披露したがっている。だから徹底的に努力する。彼に隙はありません。今回「ああ、こんなこともできるようになったんだな」と思って観ていたら、涙が出ました。

今年86歳になられた都築先生。このコメントを読んで思ったのが、感性が柔軟でお若いです。誰とは言いませんが、プロ転向後の羽生さんのプログラムに対して「あれはスケートじゃない」と許容できない意見を目にしたことがあります。でも、そういう方々はぜひ試合に足を運んだり、ショーに行ってあげればいいんですよ。私は羽生結弦さんの表現を見たいし、彼がその表現の可能性を広げる瞬間をこの目で目撃し、歴史の証人になりたいと思っています。

(羽生が「自分に自信がない」と発言することについて)いや、「自信がない」の裏は「自分はもっといろんなことができるはず」という思い、自分への抵抗じゃないかな。ものすごい負けず嫌いですから、そういう発言が出たんだと思います。過去、現在と、彼はしっかり自分を育ててきました。そして、これから未来に挑戦しようとしている。どんなふうにつくっていくのか。楽しみでなりません。

羽生はいま、いろんな分野の人と関わっています。それは要するに、多くのみなさんが羽生という人間に対して驚き、感銘を受け、期待を持ってくださっているからだと思うんです。一流の人たちに「次はこうしてみたい」と思わせる力を羽生は持っています。だから、さまざまな挑戦の場が提供されているんだと思いますね。羽生に魅力を感じる人たちが自然と集まってきているのが、現在の彼の姿ではないでしょうか。

なるほど・・・と納得しました。これは、新しいものに挑戦しているからこその「不安」ですよね。そして、都築先生のこの発言から私がさらに思ったのが、「こんな自分のスケートを観に来てくださって」という言葉も、謙遜とか自己否定ではなく、「新しい挑戦を受け入れてもらえるかどうかという不安」の表れなのかもしれません。でも、かりにプロ転向後も、競技者時代のプログラムを簡略化して滑るだけでチケットが完売していただろうか?映画館でのライブビューイングやCS放送が引き続き実現していただろうか?「2時間のワンマンショー」という前人未踏の取り組みがあり、それでいて新しいコンセプトのショーだからこそ、ファンもついてきているんだと思います。彼の「自信の無さ」をポジティブに受け止めて応援したいですね。

ここまで「Quadruple」のインタを見てきて感じたのは、「同じことをやっているだけではダメだ」という意識がプロ転向後の羽生さんの中で強くなっていて、それは「勝つため」に「バラ1」や「SEIMEI」を再演していた頃とは根本的に発想を切り替えている気がします。同じ「フィギュアスケーター」のままで、競技者時代のファンもサポートを続けている中でも、自分に求められているものが違うことを認識している。それがまさにMIKIKO先生とのコラボであり、内村航平さん・大地真央さんという全く別の分野のプロフェッショナルとの共演にも表れているのでしょう。

他分野の方々が自然と集まっているというよりは、羽生さんが自分の限界を超えて、他の領域に「入っていく努力」をしているからこそ、新しい人脈ができつつあるように感じます。もしかしたら、羽生さんは表現者としてだけでなく、経営センスにも優れた才能を持っているのでは?と、今後の活動がますます楽しみです。

では、また明日!

Jun


にほんブログ村

スポンサーリンク
レクタングル(大)
レクタングル(大)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)