全米選手権(男子フリー)感想

全米選手権(男子フリー)感想

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樋渡君。フリーは169.23の4位。合計253.28の4位。なんてったって、全米のシニアカテゴリーのSPで4位スタートでしたから、さすがにジャンプを全て降りるまでは、かなり慎重に滑っていた印象です。3連コンボを終えてから、演技がはっきりと大きくなったのは、安堵感によるものかな?と思います。

いまの彼を見る限り、クワドをビシバシ跳びまくるイメージは無いのですが、3Aまでのジャンプを確実に跳びつつ、スタートからダイナミックな動きを自信を持って披露できれば、新ルールのもとで高い評価を得られるスケーターに成長できるんじゃないかと。

以前も書きましたが、体型的にはいまの日本人よりもよっぽど日本人的で、でも、エンターテイナー然とした動きを見ると、アメリカで教育を受けたスケーターだなぁと感じます。つまり、とても希少なキャラクターだと思いますので、頑張ってもらいたいですね。

https://www.youtube.com/watch?v=GI0rzBZ7UDY

ジェイソン。フリーは172.56の3位。合計273.08の3位。冒頭の4Sだけでなく、3Sも抜けていたので、サルコウに苦労していましたね。

ただ、この人のスケートは、私大好きなんですよ!そこら辺のプロスケーターより、よっぽどプロっぽいスケートを披露してくれています。スピンもスケーティングも世界屈指の実力の持ち主なんだから、「鑑賞者」という立場から言わせてもらえば、ジャンプでミスするところは本当は見たくないのです。でも、彼は、「いましかできない!」と思って、クリケットに移籍してまでチャレンジしている。その頑張りを応援したいと思います。

ヴィンセント。フリーは183.76の2位。合計284.01の2位。DG扱いとなった4T(4本目)はともかくとして、「回転が足りているか、いないか」という点で、UR判定の4F(2本目)および4S(3本目)と、認定された冒頭の4Lz-3Tの違いがまったく分かりません。この日のジャッジは元からまったく信用ならないので、議論することに意味はないですが、クワドについては、シーズン序盤のスケアメから改善していると思えないのがなんとも・・・。

3Aが2本ともに認定されたのは収穫でしょうか。肝心の4回転がこうも不安定だと、バクチ的な構成はやめたら?と思います。彼のクワドよりも高さ・幅・回転ともにはるかに余裕のあるロシアの男子は、コリヤダを筆頭に構成を落として完成度重視の演技に舵を切っているのに、なぜここまで無理を通すのかよく分かりません。

ネイサン。フリーは228.80の1位。合計342.22で優勝。ジャッジが、酒盛りでもしながら宴会気分で採点したようなスコアについては置いといて、すべてのジャンプをミスなく降りて、その点では、コンディションは良さそうです。

しかし、進化したと言えるのか?というと・・・。曲はつまらないし、ツナギは減ってるしで、日本の某選手と同じ道を辿っていると言えなくもない。ただ、某選手の場合、肝心のノーミス自体ができなくなっているので、マシではありますが。

結局、ディック・バトンさんの言う、「スコアさえ取れればいい」という意味では、最も合理的なスケートがコレなんだと思います。曲も、プログラムも、構成も、衣装も。「ネイサン、キミは表現者として、それでいいのか?」と思うのですが、彼の「本業」はスケーターというより学生なんでしょうね。周りの人にお任せ状態でも仕方ないですか。

ヴィンセントと違ってネイサンにはそれができるというのも、彼の技術であり才能なんですが、曲芸を見たいなら、体操でも、スノボでも他に何でもありますからね。

ISUとしては、フィギュアスケートにおける高難度ジャンプ偏重の傾向に歯止めをかけるために、ルールを変更したはずです。しかし、これに対するアメリカからの回答は、「そんなもん○○くらえ!」ってことですよね。

さぁ、ワールドはどうなるでしょう。間違いなくメラメラ燃えているであろうあの人の、パーフェクトなOtonalとOriginを楽しみに待つとしましょう!

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. ととちゃん より:

    動画、ありがとうございます!

    今回、ジェイソンを見た後でネイサンを見てみました。ネイサンFSのみ見たときは それなりのインパクトがあったのですが、今日は繋ぎの薄さばかりが気になってしまった次第です。何というか、観客は次のジャンプまで
    待って跳んだらまた待って、の繰り返しの印象です。見せ場と言えるのは、ジャンプ全て跳んだ後のステップのみでしょうか。

    ネイサンはいつもナショナルがピークのイメージがあるので、世選はどうでしょうね。ただ、彼の演技スタイルがどうであれ、羽生選手にとって最強のライバルであることは間違いないでしょう。

    ジェイソンはサルコウがすっぽ抜けましたが、やっぱり魅せてくれたと思います。曲調変わってからが盛り上がりますね。去年の雪辱を果たせて良かったです。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      最近ツイの方でフォロワーさんとちょっとやり取りしたんですが、おなじクワドジャンパーでも、ボーヤンとネイサンの方向性はまったく違うなと。

      ボーヤンは、自分のPCSを上げるために、ローリー・ニコルにプロを作ってもらって、コミカルな演技も織り交ぜながら、表現力の幅を広げるために努力を続けている。
      一方、ネイサンは、プログラムとしては(衣装も含めて)どんどん無機質化・簡略化されてきて、「ジャンプだけ」のスケートになっている。にも関わらず、全米では48点だとか98点というPCSが出ている。

      あの採点はきわめて政治的な産物ですから、我々は我々のセンスで、良いスケーターを評価していきたいものですね。

  2. マリィ より:

    こんにちは
    樋渡くんはいろんな繋ぎが盛りだくさんだなぁって感じたんだけどどうでしょう?
    そんなに大きくない選手ですよね?
    だけど力強くて迫力のある良い演技に見えました。
    頑張ってほしいですね。
    ジェイソンののびやかなスケートも好きです。
    ジェイソン頑張れ〜
    ネイサンの衣装昨日のペンギン発言は吹きましたが(笑)フリーも腹ちらし過ぎだろう、練習着?って思いました。
    ディックバトンの雑巾を絞るようなジャンプ発言にも吹きましたが、彼は彼の道を突き進むんですね。
    心を打つ演技には程遠いですが。
    ネイサン好調でありつつ羽生くん世選優勝が見たいですね!

    • Jun より:

      マリィさま

      樋渡君は、身体がとにかく柔らかいので、その柔軟さを生かした印象的な動きが随所に入っていて、見ていて楽しいです。

      彼の課題はやはりジャンプで、そこが安定してくると、技術と表現力を合わせ持ったスケーターとして一皮剥けてくるのかなと思います。まずは、四大陸選手権、頑張ってほしいですね。

  3. Fakefur より:

    樋渡君は穏やかそうな顔立ちですが、水泳選手ばりに胸周りが逆三角形で、筋肉を追い込んでよく鍛えていることがよくわかります。力強い躍動感はこの人の唯一無二の個性なので、あとは緩急というか、男の陰影の部分も表現できるようになれば、多面的な大人のスケーターになれると期待しています。これが上手いプルキネンは全米ではピークを合わせられなかったみたいで残念です。

    ネイサンは着氷姿勢の美しくなさといい、つなぎの両腕の動きがいつも一緒なところといい、右腕をブンブン振り回しているあの選手を思い出していましたので、得点を出すための戦略が一緒というJunさんの見立てに納得しました。

    数年前、羽生さんに猛烈な突き上げを喰らったPチャンが「スケートだけが人生じゃない」と学業に重点を置くみたいなこと言っていましたが、結局スケート中心に戻ってましたよね。ネイサンはどうするんでしょうね。

    上のコメで仰られているボーヤンの進化には私も同意します。棒演技を脱却し、お得意のコミカルからシリアスにも挑戦して、今季のジョージ・ハリスンで観客にアピールするのを観た時は、こんなクール系も出来るんだと感心しました。こういう陰の努力を見ると、本来のジャンプが戻るように応援してしまいます。数年前までは共に真4回転時代の旗手だったのに見事に路線が分かれましたね。

    • Jun より:

      Fakefurさま

      たしかに、プルキネンは情感を込めた見事な表現を持ち味にしていますが、樋渡君はその辺りはまだまだ・・・という感じはしますね。ただ、他のスケーターには無い魅力をたくさん持った選手なので、とにかくまずは安定した成績を出しつづけてもらいたいです。

      Pさんのその発言は初耳でした。よく、日本の若手選手で「なんとかの一つ覚え」のように彼のスケーティングばかりを評価する人がいますけど、そもそもジャンプの質も高いし、スケーターとして総合力の高い選手でした。Pさんとハビが抜けたことで、男子シニアで「総合力のある選手」は羽生君一人になってしまいました。ボーヤンにはぜひ頑張ってもらいたいですね。

      • Fakefur より:

        Pチャンの発言についてですが、以前は地上波でしかスケートを観ないライトな視聴者でしたので、ソースを全く覚えていないんですが、ご存知のように、往時のPチャンのビックマウスは絶好調で炎上万歳でしたから、そのうちの一つかと。「彼(羽生さん)」みたいに、国民全体から期待とプレッシャーをかけられたらたまったもんじゃないし、僕の人生はスケートだけじゃないというようなことを言ってました。

        結局、コロンビア・カレッジやトロント大の入学資格を延長して以降、卒業した話は聞かないので、競技現役中は難しかったのでしょう。そのあたり、学生が本業のネイサンとは根本的な立ち位置が違うように思います。

        • Jun より:

          Fakefurさま

          Pちゃんの発言の補足をありがとうございます!カナダ国内のプレッシャーは、ブライアンが現役時代の時も凄かったと著書で書かれていましたが、にも関わらず、あのカナダ選手権のガラガラな客席を見ると、「熱しやすくて冷めやすい国民性?」と、そんな印象を受けました。

          いまは指導者としての活動をスタートしたとのことで、ぜひあの完成度の高いスケート(あえてスケーティングスキルとは言いません)を子どもたちに継承していってほしいですね。