「Newsweek 日本版 2024.10.1」感想

「Newsweek 日本版 2024.10.1」感想

2024年9月25日発売。定価「510円」。

今回の単独インタビューは、読了後すごく新鮮に感じて、いいインタビューだなというのが率直な印象です。「聞き手」のクレジットには、Newsweek誌編集部のお二人の名前が記載されていましたが、事前に「羽生さんのこれまでの道のりをよく調べている」とともに、でも、スケートの専門的な話にはならないようにコントロールされていて、「あくまでも羽生さんに語ってもらう」という一歩引いたスタンス、なるほどこれもまた見事なプロの仕事!と感心しましたね。

今回、本文中のやり取りの詳しい引用はしません。高額な雑誌ではないし、電子版も出ているので、ぜひ実物を手にしていただきたいなと。あくまでも「読後の感想」として、つらつらまとめます。

まず、「被災地のスケーター」として見られることに対する葛藤というのは、かつてのソチ五輪で金メダルを獲った直後のインタビューで感じられる所があって、これはもうあえて言いますが、某組織の羽生さんに対する冷遇が間違いなく彼の発言に暗い影を落としていただろうと思うんですよ。同大会において日本代表で唯一の金メダリストに対してありえないことですよ。まぁ、その団体の現状については例の「赤字」が示す通り。神様は見ているんですよ。

そして、そのような見られ方に対して、「葛藤」から「感謝」へという心境の変化があって、五輪の連覇を果たし、そしてプロスケーターとなる。このインタビューの中で、「notte stellata」についても質問されていましたが、いま思うと、「プロローグ」の中で震災の映像が使用されていたことの意味を改めて思案せずにはいられません。「被災地のスケーター」としてのかつての自分を、ある程度冷静さをもって見つめ直せる精神状態になりつつあったと同時に、そのような見られ方を拒否するでもなく、そこから逃避するでもなく、「羽生結弦という存在は重い」けれど、それを抱いて生きていく。その決心がついたから、「notte stellata」というアイスショーが生まれたように感じます。「3月に試合に出る必要が無くなったから」ではなく、いちばんの芯の部分は、決意・覚悟の問題だったんじゃないかと。

これはあくまでも一般論としての話ですが、「人生のあの時期は黒歴史」とか、「あの当時に関わった人との交流はゼロ」とか、人生のある局面の「トラウマ」についてそのように語る人がいますけど、それって今もものすごくその時期を引きずっていて、実際はそこから立ち直れていないというか、むしろ他者から同情・共感を得ようとしているように私には映るのです。あくまでも、私には、です。一方、「人生いろいろありますよね」とか、「勉強になることもありましたね」とか、「気にしていない」感じを装うのも、それを引きずっていないわけじゃない。「話題にされても、面白い返しはしませんよ」という自己防衛的反応の事前申告のように、私には感じられます。

これは、どちらが良い・悪いとかそういうことを言ってるんじゃなくて、むしろ人として当たり前の反応。そして、羽生さんの震災との向き合い方というのは、これらのどちらでもなく「第三の道」で、「訊かれれば何でも答える」し、その記憶をつねに胸に抱き、同じような境遇の人たちに、近づきすぎず、離れすぎず、自分にできることをやっていく。この「距離感」が、今回のインタビューの後半部分にある、「プロスケーターとしての自分の日常はみなさんの日常生活と変わらない部分もある」というスタンスにも通底しているように感じられますね。

こういっちゃアレですけど、羽生さんのような日常生活を送ってみたいか?と聞かれたら、ぜったいに嫌ですよ。なるべく目立たず地味に生きていたいし、お気楽に好き勝手な人生を送ってきた私にはとてもじゃないけど無理です。年に億とか数十億(?)という収入があったとしても、それで豪遊できるわけじゃないですからね。

でも、羽生さんの行動・言動から「学び」を得られるから、こうして応援しているのです。なぜ彼を応援しているか?と言うと、彼の「つねに成長しようとする姿勢」なのかなと思います。ここまで語ってきた「震災との向き合い方」の部分もそうですし、「結果に対する拘り」の部分もそうですし、もちろん、「スケートに新たな要素を導入する姿勢」という部分もそうですね。

何より、今回のインタビューのように、従来から付き合いのあるメディアだけでなく、「この雑誌の取材を受けたの?」という部分も、彼の成長ですよね。安住の地に留まらない。でも、そこから逃避するのではなく、根を張りながら進化していく。「人間、こうありたいものだな・・・」といつも学ばされますよ。

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. ごろ寝 より:

    >安住の地に留まらない。でも、そこから逃避するのではなく、根を張りながら進化していく。

    言葉にしてくださってありがとうございます。そうなんです、私も彼の言動に触れるたびに感じます。臆病者の自分には遠い目標ではありますが、少しずつ前へ行ける気がするのです。

    • Jun より:

      ごろ寢さま

      自分にしては少々出来すぎなまとめで、ここ毎晩木内一裕さんの小説を読み、みやくんのアツいツイキャスを聴いたことで、言葉が降って湧いてきたのかもしれません。