中野友加里さんインタ(web Sportiva 3/23・24)

中野友加里さんインタ(web Sportiva 3/23・24)

いよいよ、FaOIの方にも影響が出てきましたね。5月に収束しているかどうかは微妙な情勢なので、この判断は致し方ないですな。

それにしても、開催を強行したK-1や、少し前の東京事変はあれだけ報じられて、延期&中止のSOIはネットニュース一本のみというのは、日本の主要メディアがいかに偏っているかが分かるというもの。ほどほどに距離を起きたいものです。

中野友加里が語る女子4回転時代の技術。「次元が違うジャンプ」とは(3/23

羽生結弦らトップスケーターの「ジャンプの技術」を中野友加里が語る(3/24

そういえば、Sportivaの雑誌の方はいつ出たんだっけ?と、本棚を調べたらスケカナ後の昨年11月でしたか。中野さんといえば、著書の『トップスケーターのすごさがわかるフィギュアスケート』がなかなかの好著でした。

今回、女子編と男子編の2本の記事がアップされていますが、女子に対する見方の方がシビアかな・・・という印象です。

女子選手の4回転を見ていると、高さのあるジャンプではなく、回転速度をうまく使ったジャンプだと感じます。身体が細いことをうまく利用して、糸のように回るイメージで、少女らしい小柄な体型を生かしたジャンプです。

そんななかで、アンナ・シェルバコワ選手とアレクサンドラ・トゥルソワ選手は、小さいながらも力で跳んでいるように見えます。それを試合本番でできるのは、やはり相当な鍛錬を積んでいるからに違いありません。

彼女たちは、体格的にもいまが一番いい状態なのでしょう。

そのジャンプは、跳び上がるのと同時に回り始める、もっと言えば、回りながら跳び上がるようなところがあります。いい悪いは別として、それを身につければ4回転を回り切れる可能性は高くなります。逆に判定でそれを「回転不足」と厳しく取られるようになると、何らかの対応をしなければならなくなるでしょう。

語り口はソフトですが、私たちが日頃から言ってることとけっこう近い。離氷前からあれだけ身体を捻ってたら、そりゃ「合わせて1本!」的に4回転になりますし、「あんたらそれが出来ているのもいまのうちだよ?」というメッセージも込められているようで、なかなか手厳しいです。

それに対して、アリョーナ・コストルナヤ選手のトリプルアクセルは、次元が違います。4回転が入らないショートプログラムでの群を抜いた高得点にそれが表われていますが、高さ、幅、回転速度が、すべて理にかなっている。それをいとも簡単に跳ぶことができるというのは、天性の才能だと思います。

彼女に関して言えば、そのスピードにも衝撃を受けました。プログラム全体でスピードに乗りっぱなしで、こんな女子選手は昨今、見たことがありません。才能をうまく生かしたスケーティングの質です。ジャンプをしても失速することがないので、流れを壊さずに、トリプルアクセルをプログラムの一部として跳ぶことができています。ライバルが4回転を跳んでも勝てるだけのものを持っているのです。

コストちゃんは、あのマッシさんも推してますし、ランビさんもワールドの注目選手として挙げていました。しかし中野さんが、スケーティングスピードに注目しているというのは、けっこうマニアックに見ている・・・と感じました。3Aを実戦投入する前から、スケーティングはかっ飛んでいたので。よくわかってるじゃないの!

次に、男子の方はこちら。

鍵山優真選手も佐藤駿選手も、ジュニアながら、高さのあるジャンプを跳んでいます。おそらく先輩スケーターである羽生結弦選手らのビデオを何回も見返したりして勉強しているのでしょう。やはりいいお手本が身近にあるというのは大きいと思います。

お手本にはなるけど、羽生選手のジャンプは真似しようと思ってもなかなか真似することができないものです。滑らかにスルスルスルっと跳びにいってしまい、プログラムの流れも音楽も壊さない。ジャッジが点数をつけるのを忘れてしまうのではないかと思うぐらいのプログラム構成です。

・・・四大陸選手権のショートプログラム『バラード第1番』は、すべての流れを壊さずに演技全体をまとめるという意味で、すばらしかったと思います。バイオリンよりもピアノのほうが音を拾うのが難しいものなのですが、ピアノの音色を崩さずに、ひとつひとつの要素をこなしていく。そのひとつひとつに見入ってしまう、パッケージ感があるプログラムでした。スケーティングが美しく、ジャンプもすばらしいのですが、それぞれが別個にあるのではないところで高い評価を得ているのだと思います。

鍵山君はどうか知りませんが、駿君は羽生さんのすべてを参考にしています。それはもう日下コーチと一緒に羽生さんを研究対象にしていると言ってよいのではないかと。ただ、昨日のインタでも触れたように、今はすべてを真似する段階ではなく、できることからやっていこう、と考えているようです。

しかし、「ジャッジが点数をつけるのを忘れてしまうのではないか」とありますが、残念ながら、「演技を見て点数をつけるという当たり前の責務を放棄している」のがいまのジャッジですよ。

ただ、「バイオリンよりもピアノのほうが音を拾うのが難しい」という指摘は、初めて聞きました。実に興味深い!鍵盤の一音一音をしっかり掴んでメリハリをつける必要がある、ということでしょうか。それでも、羽生さんに関していえば、Originのバイオリンに合わせたステップも凄いと思いますけどね。もう少しこの点を掘り下げていただきたいものです。

諸君、脱帽したまえ。天才だ。藤井聡太七段(17)奇跡的大逆転勝利で史上初3年連続勝率8割超え達成

話変わって、火曜日は将棋界ではなかなか凄い一局がありました。おそらく対局者の藤井七段以外、プロだろうが素人だろうが、誰もが「藤井負け」を確信していた所、藤井君が勝負手を連発して、名人挑戦の経験もあるトップ棋士の稲葉八段を間違えさせて逆転勝利。30手以上の詰みを1分将棋で読み切っていました。あの長手数を読み切れるのは地球上で彼一人だけです。

ちなみに、「諸君、脱帽したまえ。天才だ」というのは元ネタがあるようで、シューマンがショパンの才能を新聞紙上で絶賛した評論として有名だそうです。

だったら、ショパンといえば、個人的には、羽生さんの演じるバラ1、平昌五輪バージョンでも、4CCバージョンでも、この言葉はまさにふさわしいと思っています。

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. ととちゃん より:

    中野友加里さん、選手経験があるだけに目の付け所が鋭いですね。女子の解説は荒川さんと決まっているようですが、一度この人の解説で試合を見てみたら面白いかも。
    ちょっと調べてみると、オリンピアンではないので、そこがネックかも知れませんね。ただ、ジャッジ資格を持っているので、是非国際ジャッジを目指して、クリーンなジャッジをして欲しいです。

    藤井七段、すごい名勝負だったんですね。やっぱり不世出の棋士ですね。
    「諸君、脱帽したまえ、天才だ」名フレーズですね!これ、羽生選手にも使って欲しいです。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      テレビの解説者って、例えば、なぜ八木沼さんがあれだけ長い間フィギュアの仕事をできているのか考えてみると・・・ということなんですよね。中野さんには、なるべく制約の無い所で、自由で鋭い論評をしてくださることを期待しています。

      藤井七段すごかったですよ。いま勝ち進んでいる棋戦の中でも「王位戦」と「棋聖戦」は、ともにあと3つ勝つとタイトル戦に登場できます。幸い、将棋の対局自体はコロナの影響を受けていないので、これが私の楽しみの中心になっています。

  2. ミーム より:

    SOIについては開催されていたらK-1や東京事変以上に騒がれたのではないでしょうか?
    他にも中止や延期になったライヴ等はありますが、そんなに報道されていた記憶がないです
    前日中止ならもっと騒がれたと思いますよ

    中野さんは現役時代にトリプルアクセルをとんでいたので、コストルナヤのトリプルアクセルへの言葉は気になりますね
    ジャンプについてのそれぞれの言葉が面白いです
    鍵山くんも羽生くんのジャンプを参考にしていると思いますよ
    色々なスケーターの良いところを吸収しようとしていると思います
    佐藤くんの羽生くんへのリスペクトが溢れていて好きです

    • Jun より:

      ミームさま

      私も、中野さんと言えば3Aですから、その思い入れ込みでのこの評価の高さなのかなという気もしました。

      女子も男子も、解説者は本当に人材不足で、先輩方にはもう少し頑張ってほしいと思っています。