野村萬斎さんインタビュー(中日スポーツ 2020.12.15)

野村萬斎さんインタビュー(中日スポーツ 2020.12.15)

野村萬斎さんのインタビュー」、中日スポーツの単独取材とのことですが、とても重厚で読み応えのある内容でした。

―五輪は延期となった。開閉会式に関わる立場としても、衝撃だったのでは

「・・・第1波が終わり、今は第3波と言われている。そういう中でコロナとの共生感が少しずつ出てきて、また何とか目指そうということなんだと思う。いろんな議論があるのは承知しているが

―開会式も簡素化の対象となっている。演出も少なからず変わるのでは

 「それは大変ですね。僕一人でやっているわけではないが、各セクション、各スタッフがいろんなことで関わってきて、それがご破算になる部分もある。そういう痛みも伴いながらも、やっぱり歓迎される式典じゃなければいけないし、コロナの中で、あえてやる式典を意義あるものしたい。それが式典に関わる人間の思いじゃないか」

―具体的にどう変わるのか

「内容はお楽しみに。ただ皆さん言っているように簡素化する、シンプルにする。個人的には、いろいろな意味でコマーシャリズムがのった五輪を、元に戻すチャンスにしたらいいかなと僕は思っている。理念を再び取り戻す。五輪、パラリンピックをやる意味は何なんだと。この機会にそうなると素晴らしいのではないか。五輪自体はアスリートがしのぎを削る勝負の世界。優劣はつけるけど、人間として平等という理念が基本的にある。ただのお祭り騒ぎではない

この部分だけを読んでも、いま日本の多くの人たちが「オリンピックどころじゃない」という心境にあることを、萬斎さんは理解してくださっているように感じます。東京五輪を運営する側の人間の発言って、オリンピックのゴリ推し感が凄くて、正直うんざりすることもあります。その意味では、萬斎さんの発言って、とても希少で新鮮に感じました。「ただのお祭り騒ぎじゃない」という言葉に集約されていますよ。

いままで準備してきたものがポシャるかもしれない中、スタッフの人たちは頑張っていると思います。五輪開催の是非については、私の口からは何とも言えないですが、萬斎さんが「簡素化し、理念を取り戻す」というメッセージを込めた式典は、とても興味がありますね。

―五輪と言えば、フィギュアスケート男子の羽生結弦と親交がありますね  

「(主演した)陰陽師という映画が好きだったんでしょうか。エンディングの僕の舞は回転技があったりもして、音楽性と舞のニュアンスを非常に気に入ってくれた。『SEIMEI』という作品にするとなったとき、スポーツとしてはこうあるべき、狂言としてはこうあるべき、陰陽師とはこういうことです、僕らはこういうつもりでやっていますと申し上げた。空間と時間をどう操るか。そういう意識で

―スポーツに狂言の世界観。難しい注文だが

 「ウマが合ったのか、彼はよく聞き入れてくれた。あれだけ広い空間を一人で埋めないといけない。天地人という垂直軸と水平軸もあり、宇宙に向かう気持ち、氷という地面もあり、観客という人への意識もある。ジャンプするということは天への意識だ。そんな話をした。フィギュアスケートには職人的な技術力も必要だが、芸術性もある。単に回っていればいい、跳んでいればいいではない。アドバイスしたらすぐ変わった。元々その意識を持っていたから、僕の言ったことが響いた。そういう意味では羽生選手と僕は共通する。意識が近かった

―「SEIMEI」は羽生を代表するプログラムになった

 「よほど体に合っていたのか。彼が選んでいる曲はためがあるものが多い。ためとか、こぶしとか、日本の伝統的なリズム感としてある気がする。天才だなと思いますよ。普通の人は言ってもできやしない。それができてしまう。僕が授けたような言い方になっちゃうが、彼の中で疑問の霧が晴れたということじゃないのか」

羽生さんもこのインタビューをぜったいに読んでいるはずで、きっと喜んでいるんじゃないでしょうか。単に回ったり跳ぶことすらデタラメでも高得点がついてしまう現状は嘆かわしい限りですが、「SEIMEI」というプログラムの細部には萬斎さんのアドバイスが生きていて、だからこそ、今年の4CCでも再演したのかなと思います。萬斎さんのアドバイスを具現化するために、何度演じても、演じ足りない。完璧主義者の彼だからこそ、「SEIMEI」を究める道に、まだ終わりが見えないと思っているのかもしれないですね。

このインタで嬉しかったのは、「彼が選んでいる曲はためがあるものが多い」という部分。バラ1はもちろん、もしかしたらOriginやOtonalも見てくれた上で、そう評価してくださっているのかもしれません。そう考えると、「SEIMEI」というプログラムを通じて羽生さんは自身の殻を破り、その後のプログラムの質の高さにも影響を与えているのでしょう。

それにしても、はるかに年下の、他ジャンルの表現者に対して「天才」なんて、なかなか言えるものではなりません。羽生さんを天才と評したのは、今回の野村萬斎さん以外では、ToshIさんぐらいでしょうか?ToshIさんも、羽生さんについて実際に「天才」と語ったことがあるかどうかは、ちょっと自信はないですが・・・。

では、また明日!

Jun


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