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現在、渡辺明名人が保持する棋王戦五番勝負は、来年2月開幕なのでしばらく先の話なんですが、「挑戦者決定トーナメント」はジワジワと進んできております。今回の対局の勝者は、トーナメントのベスト8に進出します。そして、藤井竜王が、現在保持している5つのタイトルを全て防衛したとして、今期さらに1つ増やすとしたら、この棋王しかありません。
対戦相手の久保九段は現在47歳で、「振り飛車」戦法の第一人者。私のようなアマチュアの振り飛車党はもちろん、プロ棋士の振り飛車党の先生方からもリスペクトを集める、人気棋士です。そして、連盟の棋士データベースのお写真は、ABEMAのサムネと同様の「こんな感じ」ですが、最近は「イケオジ化」が止まらず、その点でも私は大注目の先生なのです。
久保九段の将棋を形容する表現としては「さばきのアーティスト」というのがまずあります。「さばく」という言葉は、「魚を捌く」という表現でなじみ深いですが、将棋でいう「さばき」とは、「駒をバッサリ切り捨てて、相手陣に一気に迫るような攻撃」と私は解釈しています。久保九段の場合、その攻撃の組み立てが流れるように華麗なので、「さばきのアーティスト」と呼ばれます。
一方で、「粘りのアーティスト」という異名も持っていて、形勢が悪くなると、「粘りモード」に切り替えて、自玉に駒をベタベタ貼り付けたり、玉をウナギのようにヌルヌルと逃走させる、そんな所も「アーティスト」と評されます。むしろプロ棋士の間では「粘りのアーティスト」の面こそ恐れられているとか・・・。
さて、上記の対戦成績を見ていただきたいのですが、「3勝3敗」と五分です。ここ最近は、藤井竜王が2つ勝っていますが、正直「藤井竜王が盤石!」と予想できないのが難しい所。
前述のように、久保九段は「振り飛車戦法」を本局でも間違いなく指すはずですが、現在の将棋界のトップ棋士は藤井竜王含めて「居飛車戦法」の先生ばかりで、おそらく藤井竜王の日頃の研究も「居飛車対策」が中心で、「振り飛車対策」まで手厚く事前研究ができないのではないか?というのが私の見立てです。実際、8月10日の順位戦で、振り飛車党の名手・菅井竜也八段に「完敗」したことが、それを証明しています。あの将棋は、菅井先生が、事前研究・時間配分・終盤の寄せと、ほぼミスなく完璧に指しきった将棋でした。
そして、振り飛車戦法というのは、将棋AIが高く評価しない将棋で、AIを駆使して研究するタイプの居飛車党の棋士にとって、対振り飛車の対策を立てるのが難しいと言われています。じゃ、「振り飛車党の人って、AIが評価しない戦法なのに、なぜそれを指すわけ?」と問われると、「好きだから」と、おそらくプロ・アマ問わず大半の人が答えるはずで、そうなるともう「職人芸の世界」なんですよね。
そんな意味で、今回の藤井・久保戦は、「AI超えの令和の天才と、一流職人の匠の技の戦い」と言えるかもしれません。
メタルジョギング・チャレンジは87日目。GARY MOOREの『Back On The Streets』(1978年9月)です。本作はゲイリーの初のソロアルバムにして、本作ラストの8曲目に「Parisienne Walkways(パリの散歩道)」が収録されています。羽生さんの「パリの散歩道」は、プログラムの前半こそ「Parisienne Walkways」ですが、後半部分はJeff Healyの「Hoochie-Coochie-Man」という曲がつながれています。ただ、「Parisienne Walkways」の原曲を聴いてみると、正直そこまで起伏のある楽曲ではないので、ジェフがかなり大胆に編集していることが分かります。彼の編曲能力の高さを改めて感じますね。
ゲイリーという人は元々ブルーズ専門のギタリストではまったくなく、特に70年代は速弾きでその名を轟かせた凄腕ギタリストとして、「いろんなタイプ」のバンドに参加していた人です。本作では、その「いろんなタイプの音楽」がごった煮状態になっています。全8曲・37分のうち、ヴォーカル無しの曲が3曲あって、それがもうDream Theaterのルーツにあるようなプログレハード風だったり、あるいは5曲目の「Hurricane」はチック・コリアのReturn To Foreverのようなジャズ・フュージョンタイプの曲だったり、そこで縦横無尽にゲイリーが弾きまくっているので、実にカッコいいです。
ただ、本作から私の推しを1曲選ぶとすると、オープニングトラックの「Back on the Streets」ですね。ハイテンション&ハードドライビングなギターロックで、ゲイリーのヴォーカルも前のめり気味で、ロックの激しさ・楽しさが詰まっています。でも、他のヴォーカル曲は「Parisienne Walkways」のようにしっとり系ばかりなので、この曲だけが異色かもしれません。37分あっという間なので、興味のある方は、ぜひアルバムの頭から聴いてみると良いかなと思います。
では、また明日!
Jun