ABEMA将棋チャンネルでの放送は「こちら」。両者の対戦成績は、藤井名人から見て「23勝11敗」です。
第一局は終盤まで豊島九段がリードしていたものの、122手目の△4四香という痛恨のミスにより逆転負け。しかも、豊島さんはその時点で持ち時間を17分残していて、△4四香自体は考慮時間を使わずに(1分以内で)スッと指したのは気になる所でした。まぁ、当人たちは前局からはとっくに気持ちを切り替えているはずで、本局が熱戦になることを期待しています。
ところで、この第二局は藤井名人の後手番なんですが、最近藤井さんが後手番で採用する作戦に「変化球」的な形が続いていて、そこは注目ポイントなんです。なぜ変化球なのか?先手番では、事前にAIを使ってとことんまで深く「予習」できる角換わり腰掛け銀という戦法が有力で、実際藤井さんも先手番では角換わりを指しています。他の棋士もそれに倣って、先手番での角換わりの採用率は依然として高いのです。
じゃあ、後手番ではその角換わりを受けるか、避けるかということになるんですが、これまでは角換わりを受けてもそこそこ戦える対応策が研究されてきたのですが、ここ半年ぐらいでしょうか、いよいよ角換わりの後手番が厳しくなりつつあるようです。後手番が角換わりを拒否する有力策として、村田顕弘六段が開発した「村田システム」という指し方があるんですが、開発者のアッキー先生が昨年の王座戦で藤井さんにこの作戦をぶつけて、「藤井敗勢」という所まで追い込みました。以来この作戦が注目されるようになり、藤井さんも、豊島さんもこの作戦を実際に公式戦で指しているのです。
ただ、藤井名人がこの村田システムを採用する可能性は、当然豊島さんも考えているはずで、しっかり準備をしていることは予想されます。で、並行して行われている叡王戦の第二局、先手番の伊藤匠七段が角換わりを目指そうとした所、藤井叡王は後手番で「△3三金型早繰り銀(サザンハヤクリ)」というマイナー作戦で応じて、伊藤七段の角換わりの事前研究を外した形になりました。この将棋自体は伊藤七段が勝ちましたが、藤井さんが後手番の作戦でいろいろと試行錯誤していることが分かります。
というわけで、本局後手番の藤井名人が採用するのは、村田システムか?サザンハヤクリか?角換わりを受けるのか?あるいは別の作戦か?と、これはもう、対局開始の朝9時から目が離せません。
AIの推奨する手順を事前に大量に暗記する必要がある、先手角換わり腰掛け銀。しかし、後手がその角換わりを拒否する作戦が有力となると、先手で角換わりを指す棋士も減るかもしれません。だって、苦労して勉強したことがまったくの無駄になるわけですから。AIが強くなりすぎて、そのAIに頼り過ぎていることの弊害が出ているのかもしれません。
では、また明日!
Jun