ABEMA将棋チャンネルでの放送は「こちら」。両者の対戦成績は、藤井聡太棋聖から見て「3勝1敗」です。
藤井棋聖は、叡王を失冠してから初の公式戦なんですが、こちらの棋聖戦は「3-0ストレート防衛」の楽観ムードに満ちています。というのも、ここまでの2局はいずれも藤井棋聖の完勝。挑戦者の山崎隆之八段の変化球的な作戦に対しても、「もっとまじめに指してくれませんか?」と言わんばかりにそれを厳しく咎めて、山崎さんの独創的な作戦が不発に終わっています。
同時並行で行われていた叡王戦での伊藤匠挑戦者との将棋と何が違ったのか?伊藤さんの場合は直球勝負で、藤井さんが最も深く研究しているであろう「角換わり腰掛け銀」という戦型から逃げずに、その土俵で戦っていました。形勢の面でほぼ互角の難解な局面で終盤に入り、最終盤で藤井さんの指し手にミスが発生。つまり、伊藤さんが「終盤の指し手の精度で上回った」と言えるかもしれません。
藤井さんと言えば、「異次元の詰将棋解答力」に裏打ちされた終盤力が将棋界では恐れられていて、「形勢不明の難解な将棋で終盤まで競り合っていたら勝ち目がない」「だから、藤井さんの知らない将棋を採用して、悩ませよう」と、変化球的な作戦を「対藤井戦」にぶつけることも有力視されていました。ところが、その変化球に正しく対応されたら、リードできる保証はない。となると、自分もリスクを取って「難解な将棋」と向き合った方が、対藤井戦でもイケるんじゃないか?伊藤さんのタイトル奪取によって、トレンドが変わってくるかもしれません。
とはいえ、山崎さんはAIの研究成果をフル活用した「角換わり腰掛け銀」を指す棋士ではありません。ならば、「とっておきの変化球」が必要になってくるのですが、そのストックがあるのかどうか・・・。
本局の対局会場は、名古屋大須の万松寺です。大須の商店街をご存じの方には万松寺はお馴染みでしょうが、ここ数年の万松寺と将棋界の関係はすごいんですよ。名人戦、竜王戦、叡王戦、そして今回の棋聖戦と4つのタイトル戦の開催実績があり、スコアによっては開催するかどうか不明な後半の対局も喜んで引き受ける。そして、実際に対局が行われなくても、「藤井棋聖防衛祝賀会」に切り替えて、速やかに開催。タイトル戦記念グッズの製作も手際がよく、お寺の前に臨時物販エリアを設営。坊さんが物販スタッフとして対応しているんですね。このフットワークの軽さには、ただのお寺とは思えない商才を感じずにはいられません。
こちらは1年前の棋聖戦の万松寺対局の紹介番組ですが、「副住職が会場・グッズ・勝負めし全監修」という気合いの入り様でした。今年もさらにスケールアップしていることでしょう。ABEMAの中継内でも紹介があると思いますので、ぜひチェックしてみてください。
では、また明日!
Jun