「もし明日、羽生結弦選手がいなくなったら?」(2018.12.8 ABEMA TIMES)

「もし明日、羽生結弦選手がいなくなったら?」(2018.12.8 ABEMA TIMES)

「個人的には選手に依存する大会運営、協会運営には危機感を持っています。フィギュアスケートの羽生結弦選手のようなスーパースターが毎回出てくるのであれば話は別ですけどね。それでも仮に羽生選手が『明日、引退します』ということになったら、協会の収入は一体どれだけ減ってしまうのか。そう考えると、やはり協会のやるべきことは選手の人気に頼らず安定的、持続的な経営基盤を整えていくことにあると思うわけです」

皆さま、「この記事」を覚えていらっしゃいますか?日本男子フェンシングのレジェンド、太田雄貴さんが日本フェンシング協会会長に就任したのが2017年8月でした。この発言自体は2018年11月頃のものです。平昌五輪でオリンピック連覇を達成した羽生さんの活躍・知名度を受けての発言で、当時私は「見出しだけ」で判断してあまり良い気がしなかったのです。いわゆる「一人のスター選手に頼っていてはいけない。タレントをどんどん作らねば」と豪語したスケ連現体制幹部の思想に通じるものを感じたからです。

でも、その後の太田さんの経歴は、「wiki」にもあるように、国際フェンシング連盟副会長を経て、IOC委員に就任し、JOCの理事も兼任。彼の様々な活動は「強化費の増額」に影響を与えていて、今大会の躍進の原動力と言われる「4人の外国人コーチ」の招聘も実現しています。

そうなんです。太田さんが考えていたことは、「タレントを作ることで安定収入を得る」ということじゃなくて、強化費を集めるために彼はあらゆる活動に奔走し、そのお金を選手強化のために集中投入する。オリンピックで勝ってメダルを獲ることで、重点支援競技「Sランク」を維持できる。それをさらなる強化のために使う。その好循環を目指したわけですね。

太田さんはXを通じて、我々の「知りたい情報」をリアルタイムで発信してくださっていて、非常に勉強になります。「この内容で取材するならこの人たちに問い合わせてくれ」と自分のSNS上で簡潔にまとめてくれるOBなんて聞いたことないです。

オリンピックのような国際競技大会で勝つには、「総合力」が大切だと思っています。選手にどうしても焦点も予算も集まりますが、ルールを作る国際連盟側にいかに日本人がいるかが重要です。

これは何も自国を有利にする為ではなく、 不当な変更や、ルール変更への対応の速さ、一次情報を得る為に必要な事です。僕らはルールを守るという教育を受けてきてるので、ルールを作るという事には慣れていない部分も多いですが、僕らが守っているルールも誰かが作ったものです。

審判の話も出てきていますが、 (審判の判定に対する所は置いておいて一般論) 審判を指名する審判委員会、それを指名する理事会など、そういったところに日本人がいるといないでは大きな違いです。強い国の連盟はこういったところに非常に力を入れています。

選手の努力ではどうする事もできない事を、運営側がしっかりと支えていく事が、本当に強くなる為には必要な事だと思います。選手と運営の両輪が強くなるとさらにスポーツは発展していくと思います!

「意外と知られていない話」というポストから一部引用しましたが、こちらも非常に勉強になります。太田さんはフェンシングだけでなく、様々な競技(eスポーツ、ハンドボール、バスケットボールなど)のアドバイザーや顧問に就任した経験もお持ちで、ルール作りやルール変更に関する知見が深くて広いんですよね。それこそ、フィギュアスケートの現状についてどう見ているんだろう?と興味が沸きます。

ただ、べつに、スケ連もフェンシングから学べ!と言いたくて太田さんの活動を取り上げたわけじゃありません。残念ながら現在のあの界隈にはまったく期待していませんから・・・。でも、大躍進した競技の裏にはこのような背景があって、そのために汗をかいたレジェンドが羽生さんのことを考えていた、というのは興味深いケースかなと感じました。

では、また明日!

Jun


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コメント

  1. アールグレイ より:

    太田さん、スターを作る方に力を注ぐのではなく、強化費を集めることに奔走する、素晴らしいです。
    フェンシングのコーチのお一人が、東京オリンピックの金メダリストとのこと。
    パリオリンピックでのフェンシングの躍進がすごかったですね!優秀なコーチを招へいすると、こんなにも結果がでるのかと思いました。

    • Jun より:

      アールグレイさま

      おっしゃる通りです!東京五輪の男子フルーレ団体で日本は4位で、金メダルはフランスだったんですが、そのフランス代表の優勝メンバーのエルワン氏が東京大会で引退したので、すぐに日本代表コーチとして一本釣りしたんですよね。

      そうやって即行動に移せる資金力と、日本チームに来てもらえるだけの信頼構築に貢献したのは太田さんと言えるでしょう。

      https://www.jiji.com/jc/article?k=2024080500886&g=spo

      これがいかに凄いことか。例えば、サッカー日本代表に海外の優秀な監督を呼ぶのはめちゃくちゃ大変じゃないですか。W杯直後はスポーツ紙が「次期代表監督」について飛ばし記事を書きまくるものの、ビッグネームにはオファーすらできない。

      そもそもいまのサッカー日本代表幹部にそのような人脈を持つ人間がいないので、男子も女子も代表監督は日本人です。もちろんいまはそれでいいとは思いますが。

  2. アールグレイ より:

    ご紹介いただいた記事の中の、コーチングのノウハウを読んで、このコーチの能力すごいと思いました。

    サッカーの森保監督ですが、今のところ結果は出てますね。
    森保監督に関しては、賛否両論ですが、日本人監督がチームにあってるのか、個々の選手の能力が高いおかげなのか、よくわかりませんが。。

    スケート連盟は、羽生くんが乗り出せば、体質変わりそうですが、絶対ないでしょうし、私も望みません。。
    OBの選手では、そのような器の方は、いませんね。。

    • Jun より:

      アールグレイさま

      サッカー日本代表は、代表選手の選出&起用にスポンサーが関与しているという、フィギュアスケートとは違った「事情」があるので、なかなか大変ですよね。

      羽生さんがもし競技フィギュアのために骨を折るとしても、やはりプロスケーターとしての仕事がひと段落してからでしょう。我々ファンもそれを望んでいますし、本人もまだまだメラメラやる気ですからね!