2019年11月27日発売。1,600円+税。
まずは第1章を読み終えました。まだ4CCまでしばらくあるので、ゆっくり1章ずつ見ていこうかなと思います。
(1)2014年11月の企画会議を経て、制作スタート。当時の編集企画部は山口さんを含めて3人。テニスをメインに取材してきた女性。元高校球児の男性新入社員。そしてアイスホッケーと野球を担当することの多かった山口さん。大型書店に出かけて、フィギュアスケート雑誌を片っ端から買い求め、スタッフ3人で読み漁ります。
「なんか、私たちが普段つくっている雑誌とは違うよね」
「このキャッチ(フレーズ)、スポーツ雑誌じゃなくて芸能雑誌だろ」
「でも、フィギュアスケートはきっとそういうジャンルなんですよ」
「私たち、こういう世界で勝負していくんだ・・・」
いやぁ、この編集会議のくだりだけでも「ご飯3杯いける!」じゃないですが、ニヤニヤしちゃいますよね
ただ、2014年の冬というと、まだ「通信」は創刊されていません。そもそも、「ゆづ中心主義」の写真系雑誌って、まだ全然出ていないのです。
当時、ある程度定期的にフィギュアスケート雑誌を発行していたのは、老舗や大手スポーツ雑誌(WFS、Cutting Edge、Number、Sportiva)、新聞社系(ニッカン、GPシリーズオフィシャルガイドブック)を除くと、ウチの本棚を見た限りでは、「応援ブック」と「キスクラ」しかありません。ということで、ここで「芸能雑誌」と呼ばれているのは、「99%応援ブックで確定」と見ていいでしょう。
(2)創刊号(15年3月3日発売)は14年長野の全日本を特集。第2号(15年5月15日発売)は15年上海ワールドと代々木国別を特集。国別の男子SPの取材で、羽生さんのスケートを見た時の興奮を、山口さんはこう語っています。
2組目の6分間練習で、僕は初めて、生で彼の滑りを見た。まず、なんといってもスピードが違う。氷をひと蹴りした時の「伸び」が他のスケーターとは違うのだ。演技が始まる前の時点で「これがオリンピック王者のスケーティングなんだ」と納得できたし、60メートル×30メートルのリンクのサイズをうまく使っていることに驚かされた。
SPを96.27で首位発進した羽生さんを、山口さんは初めて間近で取材。当時の第2号は、いまのような「完全収録」スタイルではなく、この「2015年4月16日 国別SP後囲み取材」の「完全収録」は、本書で初公開とのこと。
「4T/3A 3Lz-3T」という構成ですが、コンボのセカンドで転倒して、3TにURがついています。ジャンプ構成に限らず、最終進化形の平昌バラ1とは何もかもが違いますね。
「完全収録」の中で印象的だったのは、個人的には、高校生からの質問に対する受け答えの部分でした。
――氷の上で戦うことと、こうして言葉で伝えることとでは、自分の中で共通している部分はありますか。
羽生 とりあえず…なんだろうな、こういうインタビューの時でも、スケートをやる時も一緒で、今自分ができること、今自分が何を話せるか、話したいことも自分の中でいろいろあるので、今話すべきこと、話すべきじゃないことってしっかり判断しながら、そう考えてインタビューに答えています。
山口さんも「この本の執筆に際し、あらためて当時の音声を聞き直し、文字にしてみた」中で、上記の部分に注目していました。「包み隠さず、すべてをさらけ出しているように見えて、頭の中で、今置かれている状態を即座に整理し、自分と対話し、確認をしてから、オープンにすべき事実とクローズにしておくべき事実とを区分けして発言している」のだと。
この後、オフを経て、15-16シーズンが始まります。第3号「2015-2016 シーズンスタート号」を刊行。しかし、売り上げは伸びなかったそうです。
当時、山口さんは、「(フィギュアスケートの試合の)会場に来ている人は、特定の選手というよりスケーター全員が好きなのだ」という印象に基づいて、「何人かの選手を大きく取り扱いはするけれども、どの選手もくまなく載せていくべきじゃないか」という思いで、この第3号を制作しました。しかし、伸びない数字に、こう気づいたそうです。
「フィギュアスケートのファン」という人と、「フィギュアスケートの雑誌をほしいと思う人」は、必ずしもイコールではない。
この15年の代々木国別は、私は女子のフリーのみ現地観戦できて、リーザの3Aを生で見ることができました。それはともかく、羽生さんが出場する試合の、しかも日本開催のチケットを取るのは、それこそ「超高難度」であって、あそこで観戦できるのはたいへんな幸運に恵まれた限られた人たちだけなのです。そんなプラチナチケットですから、そりゃ、「超高級レストランで出されるフルコースなら残さず食べる」じゃないですけど、他の選手も応援しますよ。
他方で、誰もが書店やネット通販で購入できる雑誌というのは、私たちの「日常そのもの」ですから、自分の好きなものだけを、適正価格だから買い求めるわけです。家で作る料理のために、超高級食材や希少な調味料なんて使いません。
そこから山口さんは「発想の大転換」を行って、第2章「やるなら、徹底的にやる。」に繋がります。というわけで、今日はここまでにしておきます。
では、また明日!
Jun
コメント
『奇跡なんて、起きない』私も少しずつ読み進めています。
雑誌も買ってあるのが全部は読めていないのですが、Junさんのレビューを参考にしなが
ら買い足していっているものもあるので、溜まる一方ですが、本は大好きなので積読本が
増えるのも嬉しいのです。
講座の申し込みとか、クリアファイルとか、急がなきゃいけないものが優先になりますし
時間のあるときにゆっくり読んでいきたいです。
「芸能雑誌」が「応援ブック」というJunさんのお見立ては間違いないでしょう。
当時の応援ブックの記事をパラパラっと見返してみましたが、
「トキメキ胸キュンポイントをチェック男らしいゆづに恋しよう」とか、山口さんたちも
面食らったでしょうね。
でも、既成の概念にとらわれず、今のマガジンを作り上げてくれたことに感謝です。
名無しの猫さま
私もまさに、優先度の高いものを先に買ったり読んだりしていった結果、ようやく本書を読み始めるに至りました。
単に「読書」をするよりも、当時の試合映像も併せて視聴すると、いろいろと発見がありますね。4CCまで時間がありますので、じっくり読み進めたいと思います。
>プラチナチケットですから、そりゃ、「超高級レストランで出されるフルコースなら残さず食べる」じゃないですけど、他の選手も応援しますよ。
他方で、誰もが書店やネット通販で購入できる雑誌というのは、私たちの「日常そのもの」ですから、自分の好きなものだけを、適正価格だから買い求めるわけです。
例えが秀逸で思わず膝を叩きました(*´▽`*)
山口さんの気付きはさすがプロですが
正確に言えば客層が違う訳ではないのですよね。
私も初めて現地観戦した時(2015年)は、ちょっとビックリしました。
どの選手へも満遍なく・・・各国旗用意して振っている方多数とか・・・ホーーーっでした。
変な意味でなく全員応援の方もいますが、多くは高級レストランのフルコースを前にしたタイプですね!
最近は+それが羽生くんの意向だから、というのも大きいと思います。
今年のワールドでのネイサンへのスタオベとか(;´∀`)←私もその一人
レモンパイさま
私も、さいたまワールドは男子SPだけ現地観戦できたのですが、ネイサンの演技後は拍手しましたよ(スタオベはたぶんしてないと思います)。
羽生さんも、宇野選手もSPでミスがあって、ネイサンには半ば「ヤケ」になって手を叩いていた気もしますが、拍手しないよりはマシでしょう。
「奇跡なんて、起きない」、今注文しました。
junさんのこの記事を読んで、注文しないなんてあり得ません。実は、菊池さんの本とどちらを先に…と、迷っていたんですが、早く全文を読みたい という気持ちにさせられました。junさん、マガジンさんへの貢献者ですよ。
ちなみに今回初めて、junさんのところからリンク先のAmazonに飛んでみました。到着が楽しみです!
ところでマガジン第1号も読んでみたくなったんですが、果たして自分自身買っているのか
確信がないのです。もしかしたら、現在のような形になってから購入し出したのかも知れません。だとすると、第1号は貴重ですね。
ととちゃん さま
お買い上げいただきありがとうございます(笑)。
菊地さんの本も気になってはいるんですが、おそらく山口さんの本や他の雑誌を読み終えると4CCが開幕する頃でしょうし、読む時間が取れるとしたら、ワールド前かシーズン後になりそうです。
本書で明かされていますが、初期のマガジンは、いまのような編集スタイルではなく、「全員紹介系」のスタイルだったようですよ。15-16シーズンで言えば、山口さんが現地取材できたのは、長野N杯、札幌全日本のみで、バルセロナファイナルとボストンワールドは現地に行けていないようです。
おそらく、16-17シーズン以降はすべてお持ちでしょうから、15-16シーズン以前のものは、その辺りを鑑みて揃えた方がいいかなと思います。
まだ読めていないのですが凄く読みたくなってきました!
分かりやすくまとめて頂いて有り難いです!
名無しの王子さま
ぜひ買って読んでください。一人でも多くの方が購入することが、マガジンの存続につながります。
みんなで、山口さんを応援しましょう!