JGPカナダ海外選手ウォッチ(グメンニク・樋渡・タラカノワ・シェルバコワ)

JGPカナダ海外選手ウォッチ(グメンニク・樋渡・タラカノワ・シェルバコワ)

先週末の「ウォッチ」シリーズでは日本人選手のみに限定していたので、海外の上位陣もチェックしておきましょう。今日はJGPカナダを。リザルトは「こちら」。フィギュアスケート速報さんは「こちら」で。

男子シングルで優勝したグメンニク。16歳。「FigureSkatingRussia Wiki」によると、JGPには15-16シーズンから出場していたようで、ジュニアのキャリアは長いですね。ショートは金曜の午前中にやっていたので、この選手のSPはまったくチェックしていませんでした。69.69の4位に留まっていたとはいえ、実際の演技を見ると、冒頭の3Aで豪快に転倒した部分を除けば、とても4位の選手のスケートじゃないですね。

トリプルはタケノコ付きで、つなぎも濃い。最後のスピンこそスピードが落ちていましたが、全体的に成熟した演技で、PCSも鍵山君より出ているのは当然といえます。この転倒が無ければ、樋渡君(76.81)や鍵山君(75.60)と同等レベルのスコアが出ていたんじゃないでしょうか。

逆転優勝を勝ち取った「ロミジュリ」です。なにが凄いって、冒頭に、3A-3Loを組み込んで、見事に成功しました。GOE+1.49もついて、このエレメンツだけで14.39点を荒稼ぎです。この大会では、青木さん、住吉さん、そしてシェルバコワと、「セカンドルーパー」をよく見ましたが、3Aにセカンドループをつける選手って、ちょっと思い当たりませんね。見事です。

まぁ、アクセルの着氷自体はちょっと危なっかしいですけど、3回転の着氷はすごくキレイですね。後半の3F-2Lo-2Loも、まるで女子選手のように器用に決めました。曲が曲で、しかもジャンプも次々と決めていくので、羽生君を重ね合わせて見てしまいました。名曲にまったく負けていない、素晴らしい演技でした。

ちなみに、このロミジュリはモロちゃん振付のようですが、これこそ真っ当なロミジュリというものですよ!しつこく何度もいいますが、コストちゃんにあんなツギハギだらけの酷いロミジュリをやらせているエテリとグレイヘンガウスを、私は許していませんよ(笑)。

アメリカの樋渡知樹君。18歳。名前の通り、ご両親ともに日本人で、彼自身はアメリカ生まれ、アメリカ育ちです。JGPは4シーズン目となり、これはプルキネンにも言えるんですが、スケーティングや身のこなしからも、ジュニアのレベルではありません。ただ、いまのアメリカの男子シニア勢を見ると、有名どころに限っても、リッポンがまだ頑張っていて、ジェイソンもいて、そしてネイサンとヴィンセントというクワドジャンパーもいます。シニアの中でも各世代に優秀なスケーターがいるので、シニアに上がったら上がったで試合に出るのはなかなか大変かもしれません。

「Cry Me a River」は、三浦・市橋組のショートで繰り返し聴いているので、二人の映像が脳内に浮かびますが、この樋渡君のプログラムも、いいですねぇ。私の感覚的な表現で言わせてもらうと、いい意味で「男臭い」んです。小柄で、当たり前だけど顔も完全に日本人なんですけど(卓球の水谷選手に似ている!)、確かな技術があって、180度以上開くバレエジャンプも圧巻ですし、本当にクールで成熟しています。「色気」とか「セクシー」とか頭の悪い形容詞じゃなくて、純粋な技術で男らしさを表現している良プロだと思います。

SPの「男臭さ」を魅力に感じていたので、この衣装は意表を突かれました。ズボンの股が合っていないし、衣装に関しては「これじゃない感」が・・・。

ショートに比べると、ジャンプの着氷に苦労していた印象です。優勝を意識して固くなったのでしょうか?でも、大きく崩れることなく、要所要所で踏ん張ってうまくまとめきったなと思います。

ちなみに、今日ご紹介したこの2人は、まだもう一戦残しています。第6戦スロベニア大会にエントリーしてくると思われます。この大会には、今年の世界ジュニア2位のロシアのダニエリャン、クリケットのコンラッド君、そして日本から島田高志郎君が登場。この試合で台乗りするのは、超過酷だと思いますが、島田君もきっちりノーミスすれば十分にチャンスはあると思います。

ロシアのタラカノワ。ジュニア2シーズン目の14歳。昨年の名古屋のJGPファイナルでは、エテリ組の一員として、トゥルソワ、コストルナヤに次いで3位。あの紀平梨花ちゃんも及ばなかった選手です。ところが、シーズン後にエテリのチームを抜けて、テッドさんが冒頭にアナウンスしているように、現在彼女はプルさんのアカデミーの所属選手です。

昨シーズンの彼女と比べて、「顔の輪郭」が顕著なんですが、かなり痩せたように見えます。上にリンクで貼ったwikiでは、昨年8月に152cmで、今年8月に154cmとありますが、もっと大きくなったように見えるなぁ・・・。それだけ顔が小さくてスタイルが良いということかもしれません。

この選手は、一言でいってワイルドというか、北米のスケーターのような「パワー系のジャンパー」という印象です。多少軸が傾いても強引にジャンプを決めてしまう「危うさ」があるんですが、何だかんだでまとめきってしまう面白いスケーターです。でも、「パワー型」ということだと、まさにプルさんと合っているような気もします。

フリーは、なにかと話題の「月光」です。そして、中盤からいきなり、エレキギターが「ギュイーン!」と来る、なかなか強烈なアレンジです。しかも、これはジャンル的には、完全にヘヴィ・メタルのギターインストです。

最終盤のステップのパート以降は、シンフォニック・パワー・メタルというか、自分が学生の頃はこんなのばっかり聴いていたなぁ・・・と懐かしく思います。「Moonlight」「Metal」でYouTubeで検索すると、けっこうメタルアレンジ物がヒットしますね。クラシックの定番曲は、フィギュアスケートのプログラムでは出尽くしているので、面白いバージョンを振付師さんも日夜探しているのでしょう。

タラちゃんの演技については、着氷でやや危ない部分があったとはいえ、大きなミスもなく2位で合計190.69点は立派です。残り3戦のサブには入っているので、もしかするともう1戦見られるかもしれません。

SPは3Lz-3Loで転倒がありました。ループはUR判定です。演技後とキスクラでは表情を曇らせていましたけど、それでも、演技中はこの超高難度プロを柔らかな笑みを浮かべながら演じきるわけで、健気な選手です。その点で、「エテリ組のクワドジャンパー」として何かと比較されるトゥルソワよりもシェルバコワの方を、私は評価しています。

第1戦のフリーではクワドを回避していたのですが、今回は冒頭で4Lzにチャレンジ。転倒とURを取られはしましたが、高さは十分なので、試合でいつ成功してもおかしくないレベルに来ていると感じました。

いろんな所で言われている「体型変化が来たらどうする?」論ですが、未来のことは分からないですけど、現時点でもジャンプをそこまでラクに跳んでいるように見えないのは気になります。特にコンビネーションジャンプになると、ファーストを跳んだ後に上半身がかなり沈み込んでしまって、セカンドを跳ぶまでの「よっこらしょ感」が顕著なんです。すると、勢いが無くなっているので、ジャンプを降りた後と、その後のスケーティングとの間が寸断されていて、いわゆる「着氷後のスケーティングへの移行がスムーズ」にはとても見えない。そこも含めて、メドちゃんとよく似ているんですよね。ただ、メドちゃんが絶対王者だったことから、おそらくそこがスコアに反映されることは無いのでしょう。あくまでも、私の好みのレベルの話です。

オータム関連で、記事で取り上げるべき新情報が無ければ、明日・明後日で、ロンバルディア杯とUSクラシックの海外選手も見ておきたいと思います。

では、また明日!

Jun

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コメント

  1. ととちゃん より:

    タラカノワの月光、斬新ですね!樋口コーチも、このくらい意表を突いた曲を持ってくればいいのに、と、ちょっと思いました。ピアノのみだと単調に流れやすいところが、ギターで勝手に盛り上げてくれるので、ノッて滑れるでしょうね。

    シェルバコワ、衣装は断然トゥルソワよりいいです(笑)し、ちゃんと曲を聴きとり、情感を込めて滑っている印象を持ちました。
    4Lzも、成功させるかも知れませんね。
    それが将来どう影響していくのか、興味があります。
    エテリコーチは、トゥルソワに四回転を跳べとは言ってないと話していたようですが、本当なら、勝手に跳ばせていることになりますね。コーチとしてはどうなんでしょうか?
    クラブ内でのコミュニケーションが充分に取れていないように思いました。

    • Jun より:

      ととちゃん さま

      かりに、トゥルソワとシェルバコワがいま同じ試合に出場したとして、クワドの種類とミスの少なさという点でトゥルソワが上回るので、シェルバコワは勝てないと思いますね。

      DOIのシェルバコワを見た時に、「トゥルソワと同レベルのジャンプの持ち主なら、シェルバコワの方が点は出るのでは?」と感じたのですが、2試合見た限りで、トゥルソワほどジャンプは安定していないですね。特に、3Lz-3Loが不安定なので、これが入らないようだと、もしかするとコストルナヤよりもスコアは出ないかもしれません。

      ただ、ここに挙げた3人に限らず、シーズン中に調子の浮き沈みはあるはずで、あくまでも机上の話です。とにかくみんなが怪我なく、よい演技を見せてもらえればなと思います。