羽生さんインタビュー(e-Style book)

羽生さんインタビュー(e-Style book)

早稲田大学人間科学部eスクールの広報雑誌「e-Style book」で、羽生さんのインタビューが掲載されています。インタビュアーは指導教授の西村昭治教授。

予想以上にボリュームがあって、学業と競技との両立、印象に残っている科目等、eスクールで学んでいた頃の羽生さんの生活の一端が垣間見られます。特に専門性の高い内容というわけでもないので、とても読みやすいです。

スケオタとしては、やはり「卒論」に関するやり取りが気になる所です。これまで、羽生さんと西村教授が、羽生さんの卒論研究について語っていた内容に、さらに新たな視点がプラスされているように感じました。

西村「技術点に関して人工知能(AI)でも計算できるとすれば、人間のジャッジはいらなくなる日がくるのではないか、と思いますが」

羽生「フィギュアスケートはスポーツなのに芸術点という採点基準があります。ただ、芸術と言っても、ある程度正しい形が存在している。例えば、ジャンプのプラス項目とマイナス項目は、音楽との調和や、空中姿勢の美しさ、曲がりや歪みの程度を基準に決めています。この基準に従うと真っすぐですごくきれいなジャンプなら芸術的と言えるのではないかと考えられます。現在は、その基準が少し曖昧なところがあるのですが、AIなどの技術で何もバイアスが掛かっていない状態で採点できれば、目指すべき方向がしっかり見えてくるんじゃないかと思うんです。そうすればスポーツでありながら芸術面も客観的に評価できる世界になり得るのではないかと考えます。同じオリンピック競技の体操も積極的にレーザーを使用した自動採点に取り組んでいますが、体操と比べてフィギュアスケートは、リンクが大き過ぎてレーザーが使えないので、それ以外のアプローチが必要になります。今回の卒業研究である程度まで方向性を見いだすことができ、それを提唱できていると思うので、自分自身の今後の研究に期待したい思いはあります」

この羽生さんの応答には2つポイントがあって、一つは「人間のジャッジがいらなくなる可能性について、肯定も否定もしていない」ことです。現状では、「芸術点の基準が少し曖昧」で、それをAI導入によって、バイアスが掛かっていない状態で採点ができるかもしれない、と。もちろん、体操のようなレーザーを使った方法をそのままフィギュアスケートに取り入れることは難しいようですが。

もう一つは、平昌五輪後の会見で語っていた「『芸術性は正しい技術によって支えられている』という羽生さんのフィギュアスケート哲学が、卒論研究の問題意識にもなっている」ことですね。今回のインタビューでは、ジャンプの空中姿勢の話になっていますが、卒論の中では、ジャンプの踏み切り時のエッジの判定について、検証を行っていましたね。回転不足の判定はやや難しいというは話でしたが、やはり、フィギュアスケートの得点源である「ジャンプ」の自動採点について、羽生さんも特に関心があるようです。

フィギュアスケート村の「古い勢力」は、AIを導入したら「甘い汁」を吸えなくなるから、「できない理由」をとにかく主張する。この連中との戦いですよね。

しかし、羽生さんは決して一人じゃない。自動採点に関する技術もそうですが、今回の東京五輪を見ていて、ビデオ判定が本当に重要な役割を果たしています。スケートリンクよりもはるかに広いプレイフィールドの競技もたくさんありますからね。羽生さんも、そういう視点で五輪を見ているかもしれません。

では、また明日!

Jun


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