『レンズ越しの羽生結弦』(5)第3章など

『レンズ越しの羽生結弦』(5)第3章など

今日は『レンズ越しの羽生結弦』のレビューの続きです。この第3章「抗い」では、いよいよ小海途良幹カメラマンの「フィギュアスケート取材デビュー」となります。小海途さんが実際に現地取材したものとして、本章では、2017年開催の以下が取り上げられています。

(1)四大陸選手権(2月・韓国)

(2)世界選手権(3月・ヘルシンキ)

(3)国別対抗戦(4月・代々木)

(4)メディアデー(8月・クリケットクラブ)

(5)オータムクラシック(9月・モントリオール)

(6)GPロシア杯(10月・モスクワ)

ちなみに、羽生さんがアサインされていながら練習中に大怪我をしたNHK杯の際、小海途さんはサッカー日本代表の取材で海外に滞在していました。

まず、2月の四大陸選手権前に、羽生さんの過去の写真に目を通した上で小海途さんが感じたのは「どの写真も似通っていて、同じような写真の集合体」だったそうです。そして、フィギュアスケート撮影の定石(定跡)としては、「演技時間の短いショートは、氷を背景にしてスケーターの全身が入るように、スタンド上部から」「時間の長いフリーは”遊び心”を施すべく、リンクサイドの下から、遠近をつけて『引き』や『寄り』の写真を狙う」、これが「及第点のフィギュアスケート写真」で「脈々と受け継がれた伝統」とされています。しかし、1年後の平昌五輪で、日本のスポーツ紙に人気のあるリンクサイドが振り分けられる可能性は低い。そこで、ショート、フリーともに「スタンド上段からの撮影ポイント」を探すようにしたそうです。

ちなみに、この四大陸のショットの中で、小海途さんがピックアップしていたのが「こちら」の写真。羽生さんは2位に終わったんですが、彼によれば「優勝したスケーターをリスペクトする『人間・羽生』の素晴らしさ」が表れた1枚。あえて表彰台の正面という「セオリー」に従わず、斜め後ろから撮影したそうです。こちらの写真は大阪版では採用されたものの、東京版では「ジャンプの写真を送ってほしい」とリクエストされ、違った反応が返ってきました。

そして、「自分の好きな写真が撮れた」と小海途さんが語ったのが、9月のオータムクラシックのバラ1のショット。ラッキーなことに、過去のスポニチの1面が「こちら」のブログで紹介されていたので、リンクを貼らせていただきます。そのショットとは、「2017年9月24日付」の1面。「バラ1の『静』の世界観を写し出したい」と考えていたなかで、「偶然とらえた一瞬」と小海途さんは回想しています。当時、このような横顔の写真が紙面で採用されにくいことを承知しつつ、「使って欲しいという無言の意思表示」を込めてこの写真を最初に社内に送り、その上でジャンプの写真も予備的に送信。当番の長久保部長の「これいいね」というつぶやきを、デスクが半信半疑ながら採用して、1面採用に至ったとか。長久保さんのアシストが無ければ、ジャンプの写真かフィニッシュ時の表情あたりが採用されていたでしょうね。

もう一枚、「奇跡が起きた」と小海途さんが語るのが、10月のGPロシア杯の公式練習時の「こちら」のショット。これは皆さんご記憶にあるかと思います。「バナーのちょうど真ん中に羽生選手が来たときにシャッターを押すことで、翼を携えた羽生選手をとらえることができる」と狙ってはいたものの、「翼の真ん中に入ったとき、両手を天高く掲げた」のは偶然・奇跡で、「リクエストしたとしてもおそらく撮れない」と振り返っていますね。

ちょうどこの頃から、スポニチのHPで小海途さんの写真がアップされるようになりました。翌朝の紙面で採用される写真はデスクの判断に委ねられますが、HPは速報ニュースとともに写真が添えられるので、カメラマンが「良い」と思って送った写真がHPでは採用される可能性が高くなったわけですね。

小海途さんは、ファンによって自身の写真が「受け入れられている」ことを実感するとともに、「羽生選手を撮るという責任感もさらに強くなった」と語っています。

では、また明日!

Jun


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