GPイタリア大会(女子フリー)感想

GPイタリア大会(女子フリー)感想

リザルトは「こちら」。フィギュアスケート速報さんは「こちら」で。

シェルバコワ」。フリーは165.05で1位(PCS: 72.79)。合計241.65で優勝。「4F 3F+3T 2A 2A /3Lz+3Lo 3F+1Eu+3S 3Lz」。ライストでは見ていないので、動画も1位から順番に見ています。SPに比べて、ずいぶんとお客さんが入っていて、キャー!という声援が聞こえていますが、「あ、そうか・・・声出していいのか」「ん?周りの声出しが許可されているから、SPは人が集まらなかったとか?」「いやいや、フリーは入っているし・・・」と、スケートと関係ない環境面がまず気になりました。

このフリーはノーミスなんですけど、「あれ?そういやクワドって結局1本だけ?」と、スコアシートをもう一度確認してしまいましたよ。つまり、冒頭の4Fの後の、3F+3Tも4回転のコンボに思えるほど、もはや跳び方の違いが分からないんですよね。離氷前に身体をこれでもかと「絞り」まくって、ジャンプ自体に高さも幅もなく、着氷はドスンと落ちて流れがない。これぞ、エテリ式の「雑巾絞り4回転」で、ワリエワもトゥルソワもよく似ています。コストルナヤが4回転を跳ばないのは、彼女はそういうジャンプじゃないので、その辺りに理由があるのかもしれません。

1週前のスケカナでのワリエワのフリーは、180.89でした。ワリエワは3クワドに3Aが1本で、PCSも74.74ですから、これだけ「見た目」は素晴らしいシェルバコワのノーミスフリーでも、ワリエワが2~3本ミスしてくれないと、ちょっと勝負にならないです。まぁ、他人のことを心配してもスケートが上手くなるわけでもないので、シェルバコワとしては、自分の演技に集中するしか無いですね。

フロミフ」。フリーは154.31で2位。合計226.35で2位。「4T+2T 4T 3Lo< 2A /3Lz+3T 3F+1Eu+3S 3Lz」。「ブエノスアイレス午前零時」を聞くのって、宇野さん以来なのかな?と懐かしく思っていたら、いきなり「ロクサーヌ」に切り替わって、もうコンセプトがめちゃくちゃですね。曲が気になって、演者が空気になっていますよ(汗)。

彼女のようなシニアで実績皆無の若手選手が、ただでさえ難しい4回転を、余計に難しくする両手タノで跳ぶのはなぜだろうと不思議に思ったのですが、「雑巾絞り+両手タノで跳ぶと、実は、回転自体はしやすいから?」と、もしかしたら別の競技から着想を得ているってことは無いでしょうか?例えば、(水泳の)飛び込みとか。あとは、トウをちゃんと突かない跳び方含めて、このチームの中で「習得」のコツがあるのでしょう。高性能カメラを増やさず、AI導入もおそらく拒否する(であろう)ISUの方針に「対応」していると言えるかもしれません。

そういえば、歴史に関する著書の多い倉山満さんが「ロシア・ソ連は、国際法を熟知した上で破る国」とどこかで書いていたのを見た記憶がありますが、ロシアはスポーツにおいてもドーピングの件がありますし、日本人の感覚とは違うかもしれません。特に女子のフィギュアスケーターが五輪で金メダルを獲ったら一生安泰ですからね。そりゃコーチも選手も家族も必死ですよ。

ルナヘン」。フリーは145.53で3位。合計219.05で3位。「3Lz+3T 2A 3F 2A /3Lz+2T 3F+2T+2Lo 3S」。開催地が違っていれば、三原さんと順位は入れ替わっていた可能性もありますが、それでも、最終滑走でノーミスは立派ですね。クワド・3Aを持たない女子選手としては、トップレベルの仲間入りを果たしたと言っていいのではないかと。例えば、かりにこの試合に坂本さんが出場していて、ノーミスを2本揃えても、かなり際どい勝負になるかもしれません。彼女の次戦はロステレ杯ですが、日本からは松生さん。ロシアからは、ワリエワ・リーザ・フロミフがエントリー。ロシア開催だと判定は厳しいと思いますが、どれぐらい食い込めるか注目です。

三原さん」。フリーは144.49で4位。合計214.95で4位。「3Lz+3T 2A 3F 3S /2A+3T 3Lz+2T+2Lo 3Lo」。ライストで見ていたスケオタの皆さんは、みんな泣き腫らしていたんじゃないですか?前週の「スケカナ」のフリーも完璧でしたが、2週続けて、しかも日本から遠く離れた場所でこんなに素晴らしいスケートを披露できるのだから、いま日本の女子で一番強い選手と言っていいでしょう。スケカナのフリーは、「TES: 76.83 PCS: 65.29 FS: 142.12」だったので、PCSで2点伸ばした計算になります。

彼女のスケートを見ていると、心洗われるというか、魂が浄化される感覚を覚えます。つねに感謝の気持ちを忘れずに、無欲と無我の境地で、いまその時に全力を傾ける。スケートを見て、前向きな気持ちになれるのは、私にとっては、三原さんと羽生さんだなぁと改めて感じます。

宮原さん」。フリーは138.72で5位。合計209.57で5位。「3Lz+3Tq 2A 3Lo 3S /3F+2T+2Lo< 3Lz 2A+3T 」。こちらもYouTube動画を埋め込んでおきます。冒頭のルッツコンボのセカンドトウに「q」がついていますが、いまの彼女の場合は、これでいいんだと思います。これまでの彼女はそこを修正しようとしてバランスを崩しがちだった印象があって、「ミス・パーフェクト」とマスコミが名付けた異名も彼女にとってプレッシャーだったのかもしれません。そういうものから解放されたのか、伸び伸びと表現していて、このフリーは特に力強さを感じます。そして、SPの「小雀に捧げる歌」を見た後と同じことを言いますが、曲にぜんぜん負けてないんですよね。やはり、日本女子の中では、表現力ではピカ一ですね。彼女の場合、どのプログラムもハズレが無いというか、どんなタイプの曲でも感動を与えられる稀有な表現者だと思います。

正直な所、北京五輪でのメダル争いという点ではかなり厳しいので、フィギュアスケートの報道の熱量が明らかに下がっていますが、今大会の三原さんと宮原さんは本当によく頑張ったので、ぜひ映像を見てほしいと思います。

では、また明日!

Jun


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